モーツァルトのピアノ名曲弾きの7人衆

 モーツァルトのピアノ名曲弾きの7人衆とは、モーツァルトのピアノ・ソナタ弾きのこと。ベートーヴェンのピアノ・ソナタは全部で35曲だったが、それよりは少ないがモーツアルトも全18曲を作曲している。

 モーツアルトのピアノ・ソナタは、ハイドンと同じく、長調の曲が圧倒的に多く、短調のピアノ・ソナタは超有名な曲第8番≪パリ・ソナタ≫イ短調と第14番ハ短調の2曲だけである。

 交響曲もそうだが、ピアノ・ソナタ史上、最も多く作曲したのがハイドンで全65曲。明るい性格で超多作なハイドンからベートーヴェンもモーツアルトも影響を受けた。そして先人の音楽家ハイドンのピアノ・ソナタを練習した。

内田光子
P協奏曲は空前絶後
ソナタの方はいまいち

グールドが3歳から弾いているモーツァルトのソナタ集は、
多分ベスト盤だ!全曲録音してくれてありがとう。

 モーツァルトのピアノ弾きとしては、まずグレン・グールドとファジル・サイの演奏は空前絶後。二人とも天才だ。内田光子はフィリップス・レーベルに空前絶後のモーツァルト・ピアノ協奏曲集がある。ピアノソナタ全集もあるが協奏曲集の方が断然良い。フィリップス・サウンドは、しっとりとした音の粒立ちが特徴だ。グラモフォンも好きだが、フィリップスより、乾いた音がする。ピカッとした音のデッカ・レーベルも大好きだ。 

内田光子
P協奏曲は空前絶後
ソナタの方はいまいち

 次にモーツァルトのピアノ弾きとしては、リリー・クラウス、ポゴレリッチ、ラファエル・ブレハッチ、シュタイアーの4人を推薦する。

 ファジル・サイはK331≪トルコ行進曲付き≫がオハコ。

ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集

 また音質が古くなったがランドフスカ、リヒテル、ルービンシュタインホロヴィッツも良い。

●1775年(19歳)ミュンヘン

 1頭最初の「6曲のピアノ・ソナタ(いわゆるザルツブルク・ソナタ)」は、1775年にミュンヘンでまとめて書かれた。意欲的な創作的実験。第1番を含めて、3か月余りの間に6曲のピアノ・ソナタを作曲している。父レオポルドとの演奏旅行が長かったので10代の最後にまとめて書いた作品群。(有名なヴァイオリン協奏曲全5曲も完成させている)。 

 第6番は4楽章形式の大きな作品。

 演奏はファジル・サイとグレン・グールドを比較しながら聴きたい。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第1番ハ長調 K279: (P)グレン・グールド


グレン・グールド:モーツァルト全集
グールド曰く「私はピアニストというよりピアノを弾く作曲家だ。モーツァルトのソナタ
良くないところを修正して録音したものが、この全集です。」しかしリヒテルは、これを否定的に受け取っている。グールドの演奏方法はベートーヴェンもモーツァルトのソナタも現代的、無国籍的演奏に聴こえてくる・・・。124曲の楽曲を書いたビートルズは古典という大木の小さな葉のようなもの。


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第2番ヘ長調K280:(P)ファジル・サイ


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第3番変ロ長調 K.281:(P)ファジル・サイ


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調 K.282:(P)ファジル・サイ


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第5番 変長調K.283:(P)ィ―ヴォ・ポゴレリッチ

イーヴォ・ポゴレリッチ【Aクラスの演奏】


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第6番≪デュルニッツ・ソナタ≫ニ長調K284 :(P)ファジル・サイ


●1777年(21歳)マインハイム

 1777年10月頃に第7番、第9番K311を書いている。同じ「作品4」として出版されている。第7番、第9番と続けて聴きたい。

 第7番はマインハイムの音楽家カンナビヒの娘ローザのために作曲された。第2楽章の中でローザの性格を表現した。このようにピアノ・ソナタは性格表現を最終目標にして作曲されるようになって行く。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第7番≪ローザ≫ ハ長調 K309 :(P)グレン・グールド


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第7番≪ローザ≫ハ長調K. 309::(P)ファジル・サイ

ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集



モーツァルト:ピアノ・ソナタ第9番 ニ長調   K311:(P)ブレハッチ【神の域】


ブレハッチはペライア同様、注目の人!!



●1778年(22歳)パリ

 1777年、モーツァルトは故郷ザルツブルクを出て母アンナとともに音楽の都パリに向かう。パリで仕事を得られず、しかも1778年7月に母アンナを亡くしてしまう。第8番≪パリ・ソナタ≫イ短調K310は、この出来事が反映されている。ヴァイオリン・ソナタ第21番ホ短調K304も、ちょうどこのころに作曲されている。

 この超有名な曲第8番イ短調≪パリ・ソナタ≫K310は、リパッティ、グールド、ファジル・サイの男性ピアノ奏者3人で比較して聴きたい。天才3人が天才モーツァルトの曲を演奏しているのだから文句のつけようがない。ただ拝聴したい。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番≪パリ・ソナタ≫K310イ短調:(P) リパッティ 1950年9月16日 【神の域】



ブザンソンのリパッティ
【ブザンソン音楽祭・有名な死の二か月前の演奏会】







モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番≪パリ・ソナタ≫K310イ短調:(P)グレン・グールド

グレン・グールド
知性的・飛翔・疾走・涙
         【演奏家というより「自身の音楽」に挑んでいる。そこに共感する。】


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番≪パリ・ソナタ≫K310 イ短調(P)ファジル・サイ

ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第9番K311:(P)ブレハッチ【神の域】





●1783年~1784年:

 モーツァルトはウィ―ンで最新のアントン・ワルター製のピアノ・フォルテを購入。(チェンバロから発展した古楽器)

 1760年にはピアノ・フォルテで作曲し始める

古楽器ピアノ

 フォルテ・ピアノは18世紀までのチェンバロが少し音質的進化したもの。



  ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K330は、1783年にウィ―ンかザルツブルクで作曲されたといわれる。第12番ヘ長調は、第10番ハ長調や、超有名な第11番イ長調K331≪トルコ行進曲付き≫とともに作曲された作品。

  第10番、第11番、第12番は、1784年にウィ―ンで「作品6」として出版されている。

 モーツァルトのピアノ・ソナタ群の頂点に立つ3曲は、まとめて聴きたい。


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K330:(P)グレン・グールド


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K330:(P)ファジル・サイ

ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集


●1778年~1779年

  モーツァルトのピアノ・ソナタの中で最も有名な曲。第11番イ長調K331≪トルコ行進曲付き≫は、1783年にウィ―ンあるいはザルツブルクで作曲されたらしい。一方で1778年頃パリで作曲されたと言う説もある。第8番が「影」なら第11番は「希望」を表す。この2曲だけでも、モーツァルトの人生を考えさせられる。


グレン・グールドモーツァルト全集










モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331 トルコ行進曲つき:(P)グレン・グールド【空前絶後・ノーベル賞級】


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331≪トルコ行進曲付き≫ :(P)内田光子【名演】


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331≪トルコ行進曲≫:(P)ファジル・サイ【名演】

ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集


ファジル・サイ
注目のピアニスト






モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331≪トルコ行進曲:ジャズ版≫:(P)ファジル・サイ



モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331≪トルコ行進曲付き≫:(P)エリー・ナイ


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331≪トルコ行進曲付き≫:(P)リヒテル


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331≪トルコ行進曲付き≫:(P)ホロヴィッツ


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331≪トルコ行進曲付き≫:(P)アンドレアス・シュタイアー【名演】【フォルテ・ピアノの演奏は、(フランダースチェンバロ)ジョス・ファン・インマゼ―ルの演奏も良かった。しかし響きはチェンバロ。

アンドレアス・シュタイアー
【チェンバロとモダンピアノの中間的な響きがする。】


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K322:(P)グレン・グールド


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K322:(P)ファジル・サイ


ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集

モーツアルト:ピアノ・ソナタ第12番ヘ長調K332:(P)アンドレアス・シュタイアー


●1783年(27歳)リンツ

幸福な時代のモーツァルト。笑顔が見えるようだ。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第13番変ロ長調 K333 :(P)グレン・グールド


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第13番 変ロ長調 K 333 :(P)リリー・クラウス


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第13番 変ロ長調 K 333 :(P)ファジル・サイ

ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集



●1785年(29歳)ウィーン

 1784年から85年にかけて第14番ハ短調K457、≪幻想曲ハ短調K. 475 ≫と2つの短調の曲を作曲している。その後、第15番ハ長調を作曲。

 第14番ハ短調K457の第2楽章にはベートーヴェンのピアノソナタ第8番≪悲愴≫の第2楽章アンダンテ・カンタービレの節が2回出てきたので驚いた。

 とにかく、ピアノソナタ全18曲中、短調作品は2つしかない。その2つ目の第14番ハ短調K457は、第8番イ短調≪パリ・ソナタ≫K310と双璧

 以下の2人で比較しながら聴きたい。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第14番 ハ短調 K457:(P)グレン・グールド



モーツァルト:ピアノ・ソナタ第14番 ハ短調 K457:(P)ファジル・サイ

ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集


●1786年(30歳)ウィーン

ウィ―ンでの作曲は経済的困窮へ向かっていく。これが原因で35歳の年、1791年12月に夭折している。映画「アマデウス」ではサリエリ(ウィ―ンで1番の人気作曲家)は、モーツァルトを知り自分が能力のない作曲家だ、と気が付き、その瞬間からモーツァルトに嫉妬し、最後にモーツァルトを毒殺する。謎の多いモーツァルトの最後だ。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調 K533:(P)グレン・グールド


●1787年(31歳)ウィーン

モーツァルトはこの年数少ないピアノ曲の一つ、名曲≪ロンドイ短調 K.511≫を作曲する。亡き父レオポルトに捧げる。

ラファエル・ブレハッチ
注目のピアニスト


モーツァルト:≪ロンド イ短調 K.511≫亡き父レオポルトに捧げる:(P)ブレハッチ


●1788年(32歳)ウィーン

 第16番ロ長調≪初心者のための小さなソナタ≫はピアノ学習者のための練習曲のようなものとして作曲された。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第16番 ≪初心者のための小さなソナタ≫ロ長調 K545:(P)グレン・グールド


●1788年(32歳)ィーン

 ピアノ・ソナタ第17番 ロ長調は、内田、グールド、ブレハッチ、リリークラウスの4人で比較して聴きたい。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番 ロ長調 K 570:(P)グレン・グールド


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番 ロ長調 K 570 : (P)ファジル・サイ

ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集



モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番 ロ長調 K 570 : (P)ブレハッチ【名演】


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番 ロ長調 K 570 :(P)リリー・クラウス


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番 ロ長調 K 570 :(P)内田光子


●1789年(33歳)ウィーン

 モーツァルトは1789年にドイツを旅行している。ウィ―ンに戻った後、作曲したのが、弦楽四重奏曲(プロシア王セット)と、ピアノ・ソナタ第18番≪狩り≫である。モーツァルトにとって最後のピアノ・ソナタ第18番≪狩り≫は、ピアニストにとって難曲らしい。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第18番≪狩り≫  K576:(P)グレン・グールド


モーツァルト:ピアノ・ソナタ第18(17)番≪狩り≫  K576 ニ長調:(P)ファジル・サイ


ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集


注:ケッヘル番号の付け方が旧モーツァルト全集と新モーツァルト全集の2つ存在するため、第18(17)番のような書き方が多い。モーツァルトのピアノ・ソナタ作品は全部で18曲。


内田光子
モーツァルト全集
グレン・グールド
モーツァルト全集
ファジル・サイ
注目のピアニスト


ダニエル・バレンボイム
好・嫌の別れるピアニスト
アルフレッド・ブレンデル
モーツァルト全集
リリー・クラウス

                

グレン・グールド
モーツァルト全集

ファジル・サイ
:モーツァルト・ピアノソナタ全集




ラファエル・ブレハッチ
注目のピアニスト




ブザンソン音楽祭のリパッティ