㉚ 日本の会社が発明した「ブルー水素」で地球を救う。危険すぎる中国グレー水素。 2023年12月25日JR4社がチャレンジする次世代エネルギー 実現までは遠くても、やらねばならぬ :日本発「曲がる太陽電池」ペロブスカイト!
㉚「ブルー水素」が答えになるか?危険すぎる中国グレー水素。日本の会社が発明した「ブルー水素」で地球を救う
(株)アルハイテックが発明した「ブルー水素」で地球を救うー

半導体戦争1
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天才半導体技術者ヤン・モンソン |
JR4社がチャレンジする次世代エネルギー 実現までは遠くても、やらねばならぬ
2023年12月25日
2023年12月18日、JR東海は鉄道車両向け燃料電池の模擬走行試験を報道公開した。燃料電池は水素を燃料とし、大気中の酸素と化学反応して発電する仕組みだ。簡単にいうと中学で習った「水の電気分解」の逆向きの反応で電気と水をつくる。ガソリンや軽油を燃やすと排気ガスが発生するけれども、燃料電池は水が出るだけ。二酸化炭素も有毒物質も出ないから、環境に優しく、脱炭素動力の切り札ともいわれている。
JR東海の「統合報告書2022」に「車両走行試験装置を用いた模擬走行試験を準備」とあり、「統合報告書2023」で、「23年11月から車両走行試験装置を用いた模擬走行試験を開始」と報告していた。11月16日には「燃料電池とあわせて水素エンジンも開発する」と発表していた。
報道公開された設備は、トヨタが21年から外販している燃料電池ユニットと、冷却用ラジエーター、水素タンク、減圧装置、発生した電力で動かす模擬台車と司令室だ。水素エンジンは中型トラック用のエンジンが展示されており、鉄道用の水素エンジンはこれから開発するとのことだった。水素エンジンの特徴はレトロフィット、既存のエンジンを応用し、燃料供給系と噴射系を変更すればつくれる。JR東海によると、すでに搭載されているエンジンを水素化するのではなく、あらたに水素エンジンを開発するとのこと。鉄道用としては世界初のチャレンジになる。
実験の初期段階のため車両はまだつくられていない。公開された試験は、模擬台車を使って電車の運転と同じように走らせる。いわばランニングマシンの電車版である。停止状態から「発車」して加速、時速75キロメートルに達して惰行、時速13キロメートルまで減速して再加速、再び時速75キロメートルまで達して惰行、減速、停止という内容だった。
燃料電池は、模擬台車のある実験棟から離れた場所にあった。シューシューという大きな音がしていたけれども、これは燃料電池を冷却するラジエーターと、水蒸気を放出する音だった。燃料電池そのものは大きな音を出さない。しかしラジエーターの大きさが気になる。鉄道車両の床下に置くには大きすぎる。これは実験のため大きめにしたとのこと。実験を重ねて最適なサイズが決まれば、もっと小さくなるはずだ。
JR東海が求める性能は、高山線や紀勢線などの長距離路線で、しかも20パーミル(1000メートル進むと20メートルの高低差)の急勾配区間があり、そこを高速運行すること。具体的で苛酷な条件である。分かりやすいイメージとして、ハイブリッド気動車HC85系のディーゼルエンジンを燃料電池または水素エンジンに置き換える。
22年夏にデビューしたばかりのHC85系が老朽化し、次の車両に置き換えるころには水素エネルギーを実現させたい。そうなると目標年度は20年から30年後。国を挙げてカーボンニュートラルをめざす50年にほぼ一致する。
台車の車輪の下にレールの役割をする円盤が回っている。この円盤の転がり方を変化させて、坂道などの上りにくさ、転がりやすさを再現する。ランニングマシーンの原理だ。台車の上は車体の重みを再現する骨組み。車輪の周囲のサーキュレーターは走行で受ける風を再現し、台車を冷却する。
台車だけ見ると電車の走行試験と変わらない。しかし司令室のモニターを見ると、発生した電力量、投入された水素の流量がリアルタイムで分かる。これから最高時速80キロメートル以上へ挑戦し、今後は30パーミル勾配に相当する負荷をかけていくという。
次の挑戦は水素を燃やす「水素エンジン」だ。こちらは24年度以降に模擬走行試験を開始したいという。いずれにしても、車両に搭載して営業運転にするには時間がかかる。燃料電池と水素エンジンの両方を試験すると聞いて、新型車両に燃料電池、旧型ディーゼルカーは水素エンジンに改造するのかと思ったけれど、実用化目標は20年も先だから、新型車両用の開発となる。そのときにどちらがよいか、両方ともやってみよう、という試験が行われている。
自動車分野ではトヨタがハイブリッド、プラグインハイブリッド、バッテリーEV、バイオエタノール燃料、燃料電池、水素エンジンのオールレンジで開発している。どれが主流になっても対応可能とするためだ。JR東海もハイブリッドを実用化し、バイオエタノールエンジン、バッテリー、燃料電池、水素エンジンを試験している。
水素に関してトヨタは21年のスーパー耐久レースに水素エンジン搭載車を投入し、富士スピードウェイ24時間をはじめ、シーズンすべてのレースで完走した。成績は下から数えた方が早い。これは給油ならぬ給水素に時間がかかり、給水素回数が多いため。ラップタイムはライバルと互角だった。23年に富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久24時間レースでは、世界で初めて液体水素エンジン車を投入し完走した。給水素の時間と回数を大幅に減らした。
トヨタとJR東海の両社に共通するところは、「移動」に誇りと責任を持っていること。もう1つは愛知県にあること。愛知県は新しい乗りものが大好きだ。「ガイドウェイバス」はBRTの先駆者といっていいし、時期浮上式(HSST)の新交通システム「リニモ」は実用化された。現在はLRTのようなバスSRTを実験中である。もっとも桃花台新交通(とうかだいしんこうつう)ピーチライナーは15年で廃止。見切りも早い。いやこれは蛇足だったか。
●JR東日本は試験車両「HYBARI」完成
燃料電池はすでにJR東日本が試験車両「FV-E991系電車」を完成させている。形態を見ると短距離の通勤用車両だ。短距離で平坦、頻繁に発進停止を繰り返す。1両当たりの乗客数も多い。こちらも過酷な条件である。
JR東日本の水素燃料の取り組みは早く、08年に「クモヤE995形」を制作して試験を実施した。この車両は、鉄道総合研究所と共同制作したハイブリッド気動車「キヤ991形」に燃料電池を搭載した車両だった。
JR東日本は15年に川崎市と「包括連携協定」を結んでいる。川崎市は水素の生産地だからだ。といっても、積極的に水素をつくってきたわけではなく、工業地域の副産物だ。石油化学プラント、製鉄所、苛性ソーダなどの生産工程で発生してしまう。水素エネルギーが脚光を浴びるなかで、捨てるにはもったいない。そこで川崎市は15年3月に「水素社会の実現に向けた川崎水素戦略」を策定していた。
そしてJR東日本は、18年にトヨタ自動車と水素活用で連携すると発表。19年には試験車両の制作と鶴見線・南武線支線の実証実験予定を発表した。この路線がある神奈川県、川崎市、横浜市とも連携する。
20年にJR東日本、日立製作所、トヨタが燃料電池と蓄電池を搭載した試験車両の開発を発表した。これが22年に完成した「FV-E991系電車」だ。愛称の「ひばり(HYBARI)」は「HYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehicle for Innovation」の略称で、意味は「変革を起こす水素燃料電池と主回路用蓄電池ハイブリッドの先進鉄道車両」だという。
しかし往年の鉄道ファンにとって「ひばり」は昭和の名列車。上野~仙台間を結んだ特急ひばりを連想する。JR東日本は、かつて東北地域に光を当てた列車名に何か思い入れがあって、新エネルギー車両の名称にこじつけたのかもしれない。
「FV-E991系電車」の方のひばりは、現在も鶴見線・南武線支線で試験を実施しているほか、23年秋に東京ビッグサイトで開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」でも展示された。鉄道車両の運搬はおカネも手間もかかるけれど、「東京モーターショー」から「総合モビリティショー」になった「JAPAN MOBILITY SHOW」にとって象徴的な役目を果たした。
●JR西日本とJR貨物は輸送で参画
23年11月21日、関西電力、JR西日本、JR貨物、NTT、NTTアノードエナジー、パナソニックが「姫路エリアを起点とした水素輸送・利活用等に関する協業」について基本合意した。JR東海の開発宣言の5日後で、あわせてみれば、日本の水素エネルギーの高まりを感じさせる。
姫路港は液化天然ガス(LNG)の輸入量で国内3位の実績がある。ちなみに1位は木更津港、2位は千葉港だ。その背景から、22年に関西電力と川崎重工が姫路市周辺の湾岸部に輸入拠点を検討している。水素の用途は火力発電向けで、オーストラリアから年間10万トン程度を想定し、関西電力の姫路第1発電所、姫路第2発電所に供給する。関西電力は30年から天然ガスと水素の混合に着手し、将来は天然ガスのみで発電してゼロカーボンを達成する。
兵庫県は19年に産官学を連携した「兵庫水素社会推進構想」を掲げていた。22年には知事を本部長とする「ひょうご水素・脱炭素社会推進本部」を設置し、姫路港の水素拠点化を後押しする。
「姫路エリアを起点とした水素輸送・利活用等に関する協業」において、JR西日本は線路敷地の水素パイプラインと燃料電池車両の実施可能性、JR貨物は鉄道による水素輸送、貨物駅作業の脱炭素化などを調査研究する。NTTとNTTアノードエナジーも通信管路に水素パイプラインを検討する。パナソニックは自社製の燃料電池を活用する枠組みを検討する。肝心の関西電力は液化水素の安定調達、水素受け入れ基地、発電以外の利活用先などを検討する。
これは日本の水素社会を大きく前進させるプロジェクトだ。水素自動車はトヨタが市販しているけれども、普及の障害は「供給拠点の少なさ」だ。販売台数が少ないから拠点が少ない。トヨタは水素補給拠点を公開しているけれど、数はあっても営業時間は短い。理由は単純で、水素タンクを常設しているところは少なく、ほとんどが水素タンクトレーラーの巡回対応となっているからだ。
こんな状態だから自家用水素車は普及しない。ただしバスやトラックなど、ルートと走行距離が確定している車両にとっては扱いやすい。1日の走行距離が把握できるから、車庫などの拠点で給水素計画を立てられる。そしてそれは鉄道車両も同じだ。鉄道が水素を採用すれば、車両基地に水素供給拠点を設置でき、その周辺に自家用水素車用の給水素スタンドを設置しやすくなる。いつでもすぐに水素を補給できる環境なら、水素自動車の普及も進むだろう。鉄道の動力として水素が消費されるようになれば、水素の価格も下がっていく。
●水素エネルギーの輸入は日本の国土を守る
車両を開発しているJR東日本やJR東海に比べると、JR西日本とJR貨物の取り組みは地味だ。しかし水素エネルギーにとって最も重要な部分は「調達と供給拠点」。なぜなら水素エネルギーは、すべてゼロカーボンではないからだ。川崎の水素は副産物だから仕方ないとして、国内で生産される水素の原料は石油や液化天然ガスだ。
水素供給大手のイワタニのサイトによると、ほかに石炭を蒸し焼きにしてつくる方法もある。しかしどれも二酸化炭素を出してしまう。このような水素は「グレー水素」という。副産物の二酸化炭素を大気に放出せずに地下深くに埋めると、ブルー水素と呼ばれる。一応クリーンな水素である。ちなみに埋められた二酸化炭素は数百年から千年かけて地下水や岩石と化学反応して炭酸塩岩として固定されるという。
完全にクリーンな水素は、水を電気分解して取り出す水素だ。二酸化炭素を全く出さないのでグリーン水素という。しかしここで引っかかる。生成に電気を使うとは。その電気はどうやってつくるんだ。火力発電所でつくったらそこで二酸化炭素が発生する。再生エネルギーなら完全にクリーンだ。風力や水力、太陽電池で電気をつくればいい。
ところが困ったことに、再生エネルギーに最も必要な資源は「土地」である。そして島国の日本は土地が少ない。森を切り倒して太陽電池を敷き詰めると、環境維持として本末転倒だ。正しく施工しないと山崩れの原因になる。風力発電は景観破壊になりがちだ。オンライン署名サイト「change.org」で検索すると、約60カ所で反対運動が起きている。ならば水力はどうか。これ以上ダムを造れるだろうか。
そんな八方ふさがりを打開する方法もやっぱり水素だ。水素は液化して貯蔵し、運搬できる。日本よりもっと土地があるところで再生エネルギー発電を行い、その電力で水素をつくり船で運べばよいのだ。冷却には電気を使うけれども、それも水素で発電すればよい。
関西電力と川崎重工が協働する理由がこれだ。川崎重工は水素の製造、液化、貯蔵、運搬船、発電のノウハウを持っている。19年に液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」を進水し、20年に神戸港で世界初の液化水素荷役ターミナルを納入した。日本とオーストラリア政府の支援を受けて、オーストラリアの褐炭田からブルー水素を抽出し、液化して日本に運ぶプロジェクトが進む。LNGや石油と同じように、クリーンな水素を輸入できる。
姫路港に大型水素運搬船が寄港できるようになれば水素の価格も下がるという。現在は1立方メートル当たり約100円、これは既存燃料の約12倍だ。しかし大量輸入によって、1立方メートル当たり約30円まで下げる目標だ。
●鉄道にとって水素とは
23年11月1日、国土交通省は「水素燃料電池鉄道車両等の導入・普及に関する連絡会」を設置し、第1回の会合を開いた。JR旅客会社6社、JR貨物、鉄道総合技術研究所、日本民営鉄道協会、第三セクター鉄道等協議会が参加した。招集の趣旨は「水素鉄道車両の実用化は海外が先行している。日本も各社単独ではなく情報を共有しながら連携しよう」ということらしい。
海外ではドイツが18年から燃料電池列車の試験運行を開始、22年から営業運行を始めた。その後、カナダ、スイス、英国、中国が実用化している。車両メーカーはドイツのシーメンス、フランスのアルストム、スイスのシュタドラー、ポーランドのペサ、中国中車大同電力機車が参入している。中東でも23年10月からサウジアラビア鉄道公社が、フランス・アルストム製の燃料電池旅客列車の試験運行を開始した。
JR東日本とJR東海はどちらも燃料電池車両を開発するけれども、JR東日本は通勤型、JR東海は長距離特急形である。求められる性能が違うから、開発の重複には当たらない。しかしJR東海も通勤区間があるし、JR東日本も非電化で勾配区間を持つローカル線がある。JR北海道やJR四国も水素燃料車両は欲しい。JR西日本は姫路エリアの協業のなかで燃料電池車両の検討を始める。ノウハウの共有は必要かもしれない。
地方の電鉄では水素燃料車両を導入すれば、架線と受電変電設備が不要になる。保守費用の大幅な削減につながるだろう。
カーボンニュートラルが提唱される前、二酸化炭素を減らそうという時期において、鉄道会社は「マイカーやバスより環境に優しい鉄道に乗っていただくことが二酸化炭素削減だ」と主張していた。それはもっともな話だけれど、地方ローカル線については、ひとつの車両に10人程度の乗客だと、自動車やバスより1人当たりの二酸化炭素排出量が増えてしまう。
JR本州3社は、鉄道車両の二酸化炭素排出量がとても小さい。JR東海の場合、非電化区間のディーゼルカーから発生する二酸化炭素排出量は7万トンで、会社全体の約5%だ。会社の排出量の大半にあたる118万トンは、電車と施設が消費する電力の使用によるものだ。JR西日本のエネルギー消費量のうち、運転用燃料は会社全体の約2.7%だ。つまり、電力のゼロカーボンは電力会社の発電方法に依存する。例外は自前の火力発電所を持つJR東日本だ。この会社もいずれ水素発電に移行すると表明している。発電所は川崎にあるから、水素利用としては好立地である。
しかし50年までカーボンニュートラル、ゼロカーボンを達成するとなると、ローカル線のディーゼルエンジンは廃止する必要がある。そのあとの選択肢は4つだ。既存のエンジンをカーボンニュートラルのバイオ燃料で動かすか、蓄電池車両か、燃料電池か、水素エンジンである。JR東海の水素エネルギーの取り組みは始まったばかりで、実用化までどれほど開発費がかかるか分からない。
50年までに、なんとしてでも非電化路線でゼロカーボンを達成しようとするなら、現状で最も確実な方法はいっそのこと「電化する」だけれども、それは「自分だけ助かろう」という考え方に見えてよろしくない。水素エネルギーの開発をがんばってほしい。前述のとおり、鉄道が水素を活用することで、水素の需要が増えてエネルギー単価が下がる。貨物列車で水素を運び、水素供給拠点が広がって、自動車その他、地域の水素活用が進むだろう。だから私は水素エネルギーを強く推したい。
(杉山淳一)
世界で最も石炭を燃やし続ける国、中国。グレー水素が地球を破壊する。
2030年温室効果ガス排出量26%削減への道 #22
2021年5月
~グリーン、ブルー、イエロー・・・水素に色があるの?~
はじめに
2050年のカーボンニュートラルに向けて、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして太陽光や風力などによる電力とともに期待されている水素は、無味無臭、無色透明な気体ですが、最近「グリーン水素」「ブルー水素」「イエロー水素」など色分けされて呼ばれるようになってきています。
子供の頃、学校で「水を電気分解すると水素と酸素になる」と習ったことを思い出しますが、たしかに水素を使った燃料電池自体は水素と酸素が反応して水とエネルギーが生成されるため、二酸化炭素を排出しませんが、水を電気分解するために使われる電気が石炭や石油を燃やす火力発電によって作られたとしたら、水素はクリーンエネルギーとは呼べません。また、実際、現在工業用途で使用されている水素の99%は化石燃料、特に天然ガスに含まれるメタンなどの炭化水素を高温の水蒸気と反応させて水素を発生させているもので、この際に二酸化炭素が生成されてしまいます。
太陽光や風力による電気をエネルギーとして使うことは地球温暖化防止のために有用ですが、航空機や大型船舶、あるいは、製鉄や化学工業などの大出力を必要とする場合のエネルギーとしては水素のような高エネルギー源が必要となります。
そこで、各国において「いかにクリーンで安価な水素を製造するのか」といった研究開発・実証において熾烈な競争が行われています。
今回は、本来無色透明な水素が製造方法によって色分けされている現状の種々の水素製造方法、今後の課題などについてお伝えしたいと思います。
一般的な水素の製造方法
教科書的に水素は水の電気分解により酸素とともに生成されます(図1)。この反応は可逆反応ですので、即ち水素と酸素が反応する事によりエネルギーと水が生成されます(図2)。
図1 一般的な水素製造方法(種々資料から筆者が作成)
図4 2050年カーボンニュートラルに向けたエネルギー転換イメージ(出典:種々資料から筆者作成)
水素をエネルギー利用する際の課題
<技術面>
(1)水素利用における安全を担保するための安価なインフラの開発・整備
水素は酸素と反応して爆発しやすい気体であり、ある意味取扱いを一歩誤ると大きな事故につながる可能性があるため、大量の水素を生産、貯蔵、輸送、利用する場合には安全なインフラ整備が重要であり、いかに安全で安価なものにするかが課題
(2)化石燃料を原料として水素を製造する場合に発生する二酸化炭素の処理方法の開発・整備
現在工業用として生産されている水素の99%は天然ガスと水蒸気を反応させる方法が持ちられているが、副生成物として二酸化炭素が生成する。この二酸化炭素を安価で確実な方法で回収・貯留・固定する、または再利用する方法が種々検討されているが、理想とするコストにまだ到達していない。
<コスト>
水素を実際にクリーンなエネルギーとして利用できるか否かは全てコストに負うところが大きい。
表1 経済産業省/資源エネルギー庁が試算したCO2フリー水素のコスト
(出典:経済産業省/資源エネルギー庁)
(出典:経済産業省/資源エネルギー庁)
2017年(実績) | 2030年(予測) | 目標値 | 参考(天然ガス) | |
量(万t/年) | 0.02 | 30 | 1,000 | 8.500 |
価格(円/Nm3) | ~100 | 30 | 20 | 16 |
価格は生産量に負うところが多く、どれだけ普及するかが重要なファクターになると言える。
IEA(国際エネルギー機関)の水素生産量の予測を図5に示す。
その他、水素製造コストに関するデータを図6~図8と表2に示す。
図8 水素エネルギーの大規模使用による世界平均の水素コスト予測
(出典:ブルームバーグNFT)
今のところ、CO2フリー水素のコストについては、上述のように各国・各機関などにより色々な試算がありますが、Fuel Cell Worksが2021年4月7日付けNewsにおいて世界的な調査機関であるブルームバーグNEFの記事を引用して「グリーン水素は2050年までに天然ガスよりも安くなる軌道に乗っている」と報じています。
以下、要旨を紹介します。
(1)グリーン水素は天然ガスよりも安くなる可能性がある
スケールアップが続くと仮定すると、モデル化した28の市場にうち15で、再生可能エネルギーからの「グリーン水素」は2050年までに天然ガスよりも安くなるはずです(エネルギー換算ベース)。これらの市場は2019年に世界のGDPの1/3を占めました。
(2)グリーン水素によって切り取られたブルー水素
モデル化した全ての市場でグリーン水素はブルー水素(化石燃料から炭素回収貯留(CCS)を伴う)やCCSを伴わないグレー水素よりも安くなる。
(3)85%のコスト削減が実現:再生可能電力からグリーン水素を製造するコストは現在から2050年までに最大85%削減され、ほとんどのモデル化された市場で2050年までに1US$/kg (US$7.4 MMBtu)未満のコストになります。
(4)コスト低減の背景となる安いソーラー:上記のコストは、以前の2030年の予測よりも13%低く、以前の2050年の予測よりも17%低くなっています。太陽光発電のコスト低下が主要な推進力になります。現在太陽光発電の電力は、自動製造の増加、原料のシリコンと銀の消費量の削減、太陽電池の発電効率向上、両面パネル使用による歩留まり向上などにより、わずか2年前に考えていたより2050年には40%安くなると考えられています。
以上述べてきたように、グリーン水素をエネルギーとして普及させるためには従来の化石燃料と同等以下までコスト低減を行う必要がありますが、「太陽光発電技術の革新的な発展によりその可能性が出てきた」と言えると、ここでは結論しておきたいと思います。
まとめ
(1)パリ協定の目標「2050年カーボンニュートラル」に向けて、現状の化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が急がれる。
(2)有力な代替エネルギーとして太陽光発電、風力発電などがあるが、自然現象に負うため、火力や原子力発電のように電力需給バランスを取ることが難しい。また航空機や製鉄など大出力エネルギーを電力で賄うのが難しい。
(3)もう一つの代替エネルギーとして水素がある。水素はそのままガスとして燃焼させる利用のほか、燃料電池として電力に変換して使用することも可能。
(4)水素はエネルギーとして消費しても水が生成されるだけでクリーンなエネルギーと言える。
(5)現在、工業用の水素は99%が化石燃料(特に天然ガス)を分解して製造されるが、同時に副生成物として二酸化炭素が生成するため、クリーンエネルギーとは言えない。
(6)水素の生成にはいくつかの製造方法があるが、教科書的には水を電気分解することで生成するので、再生可能エネルギーによる電力で水の電気分解を行えばクリーンなエネルギーとなる。生産量が不安定な再生可能エネルギーを水素に変換して貯蔵・輸送が可能。
(7)水素は燃焼により大きなエネルギーを発生するので航空機・大型船舶の燃料や製鉄・化学工業のエネルギーなどにも利用可能。
(8)水素の製造にはいくつか方法があり、その製法によって、グリーン水素、ブルー水素、イエロー水素などの呼び名がある。どの方法で製造する水素が主流になるかは、コストとクリーン度による。現在各国で、製造・貯蔵・利用面などでコスト低減の方向性が模索され、実証装置・プラントが建設され検討が進んでいる。
(9)太陽光発電の革新的な進化により、再生可能電力により生産されるグリーン水素のコストが大幅に削減できる見通しが出てきた。
日本と石炭火力発電 「ブルー水素」が答えになるか?
2021年12月6日
ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ、BBCニュース東京特派員
東京湾で進む石炭火力発電所の建設工事を眺める建設反対運動のメンバーたち
だが今日の斎木さんは怒っている。
「まったくふざけた話だ」と彼は完璧な英語で言う。「本当にばかげている!」。
斎木さんを怒らせているのは、東京湾の視界を遮る巨大な建設現場だ。130万キロワット級の火力発電所の建設が進んでいる。
「なぜ石炭で発電するのか?」と、斎木さんの友人の鈴木陸郎さんは話す。「年間に726万トンのCO2を排出する、そういう発電所だ。だから反対しています」。
鈴木さんの指摘はもっともだ。石炭の気候への影響が強く懸念されている今、日本は石炭消費を増やすのではなく、減らすべきではないのか?
そもそもなぜ石炭なのか? 理由は2011年の福島原発の大惨事にある。
2010年時点で、日本の発電量の約3割は原子力によって作り出されていた。原発はさらに増設する計画だった。
しかし2011年に大惨事が発生し、国内のすべての原発が止められた。それから10年がたち、大部分は停止したままだ。再稼働への反対は大きい。
原発に代わり、ガス火力発電所が発電量を増やしている。だが、イギリスが最近気づいたとおり、天然ガスは高価だ。
斎木貴郎さん(右)と鈴木陸郎さんは、新たな石炭火力発電所の建設に反対してきた
そこで日本政府は、新たに22基の石炭火力発電所を作ると決めた。オーストラリアから輸入する安価な石炭を利用する。経済面では妥当な判断だった。だが環境面ではそうでもない。いま日本は、石炭利用をやめるよう強く圧力をかけられている。
そうした状況で日本が出した答えは、古い石炭火力発電所を閉鎖して再生可能エネルギーへの転換を図るのではなく、水素やアンモニアを燃焼する火力発電へと転換することだった。
「石炭火力発電所に対する電力会社の投資が突然、その会社のバランスシート(貸借対照表)の中で、価値のない無意味なものになってしまう」と、スウェーデンのチャルマース大学のトーマス・コーベリエル教授は話す。
「そうなれば、電力会社と銀行と年金基金の財務が困難になる。日本にとっては難題だ」と、エネルギー政策に詳しい教授は言う。
火力発電所の燃料を水素やアンモニアに変えるのは簡単だ。どちらも炭素を排出しない。優れた解決法のように思える。
しかし日本政府には、もっと大きな野望がある。世界初の「水素エコノミー」の実現を目指しているのだ。
ここで自動車メーカーのトヨタが絡んでくる。
別のある晴れた日、私は東京の街中にある、ピカピカの新しい水素ステーションにいる。前面には、トヨタのおしゃれな新型車MIRAI(ミライ)が止まっている。大型高級車で、レクサスの大型車と同じくらいの大きさだ。
私は革製シートに腰を下ろし、「スタート」ボタンを押して、車を通りへと進める。走りはとても滑らかで、まったく音がしない。道路に排出するのは、わずかな水のみ。
MIRAIはトヨタ初のゼロエミッション(汚染物質を出さない)電気自動車だ。他の電気自動車と違い、大きなバッテリーを車体底部に搭載していない。代わりに、ボンネットの下に燃料電池を積み、後部座席の下に水素タンクを置いている。
水素は燃料電池へと送り込まれ、電気へと変換される。それが電気モーターを動かす。アメリカの月探査ミッションでアポロ宇宙船が使ったのと同じ技術だ。
なぜこの技術を選んだのか、不思議に思う人は多い。費用がかかるし、バッテリーより複雑だ。米電気自動車テスラの最高経営責任者イーロン・マスクさんは、水素自動車を「愚か」と評している。
だがトヨタの広報部門トップの中井久志さんは、そんなことはないと言う。トヨタは燃料電池について、単に車だけを見ているわけではないと話す。
「いろいろなお考えがあると思います」と、中井さんは私に言う。「大事なことはカーボンニュートラルの実現です。それに、水素というエネルギーは非常に有力なエネルギーです。水素というエネルギーを生かす技術として、フュエルセル(燃料電池)の技術をどう使っていくかを考えることが、非常に重要なのではないかと思っています」。
中井さんの言葉からは、家庭、会社、工場、そして自動車と、いろんな場所に水素燃料電池がある未来を、トヨタが構想していることがわかる。そして同社が、この新たな水素社会の先頭を行こうとしていることも伝わってくる。
ここで最後の、そして最大の疑問が生じる。日本のゼロ炭素社会を動かす水素は、どこから来るのか?
答えは「ブルー水素」だ。
再生可能エネルギーを使って水から水素を作ると、「グリーン水素」が手に入る。ただ、コストが非常にかかるのが問題だ。
水素のほとんどは現在、天然ガスや石炭からも作られている。コストは抑えられるが、大量の温室効果ガスを作り出す。だが、その温室効果ガスを回収し、地中に埋めれば、「ブルー水素」を作り出したことになる。
これがまさに、日本がやろうとしていることだ。
日本とオーストラリアは今年、同国ヴィクトリア州で共同プロジェクトを始めた。亜炭や褐炭と呼ばれる種類の石炭から、水素を作る取り組みだ。作られた水素はマイナス253度で液体化し、特別に製造された船に載せて日本に運ぶ。
その際に発生する温室効果ガスはどうなるのか? 現時点では、それらは大気に放出されている。だが日本とオーストラリアは将来的に、産出現場となっているラトローブ・ヴァレーで温室効果ガスの回収に乗り出し、沖合の海底に注入すると約束している。
気候変動の活動家たちは、この計画に青ざめている。温室効果ガスの回収・貯留技術は、まだ気候変動対策の効果が実証されていないし、これを開始すれば日本はこの先何十年も大量の褐炭を掘り続けることになると、活動家たちは強く反対している。
前出のコーベリエル教授は、この計画の最大の問題は経済性だと言う。
「技術的には可能だが、常に多大な費用がかかる」と彼は話す。「炭素の回収・貯留が伴う化石燃料の使用は、ただ化石燃料を使うよりも、必ず費用がかさむ。多くの国々で現在すでに、炭素を回収しない化石燃料よりも、再生可能電力の方が、値段が安くなっている」。
コーベリエル教授は、再生可能エネルギーが高価だった10年前に、日本政府はブルー水素を選択したのだろうとみている。そして10年後の今、もはや合理性がなくなった計画から、抜け出せなくなっているのだろうと分析する。
「日本の企業は競争力を増すため、安価な電力を必要としている。そして国際的に受け入れられるには、クリーンな電力が必要だ」と彼は言う。「つまり、日本の企業は再生可能電力を必要としている。それなのに、その開発を遅らせるのは、日本経済を傷つけることになる」。
こうした話をしている間にも、東京湾の端では建設工事が急ペースで続いている。巨大な石炭火力発電所は、2023年に稼働開始の予定だ。最短でも40年は動き続けると見込まれている。
「すごく日本が恥ずかしい」。私たちと一緒に丘から東京湾を眺めていた、建設反対運動のメンバー、松本ひかりさん(21)は言う。
「すごく悔しいです」と彼女は話す。「他の国では若者が声を出してデモをたくさんやって、大勢の人が反対を表明している。でも日本はまだ声が小さくて。これから生きるのは私たちなのに、どうして黙っているのか? 無関心であることが問題だと思う」。
合意をめぐっては、内容が不十分で、今世紀末までに世界の気温上昇を産業革命前から摂氏1.5度に抑えるというCOP26の主要目標を達成できるものではないとの批判の声もある。
科学者たちは気温上昇を1.5度に抑れば、気候変動による最悪の影響を回避できるだろうと期待している。
意見の違いはあっても
ジョンソン首相は14日、首相官邸での記者会見で、「我々はロビー活動もできるし、おだてることも促すこともできる。しかし、主権国家が望んでいないことを強制はできない」と述べた。
また、「意見の相違はあるが、世界が間違いなく、正しい方向に向かっている」とした。
ジョンソン氏は「人の態度において、転換点に到達した」とし、世界のリーダーたちが自国の「有権者に刺激され、駆り立てられている」と述べた。一方で、「我々がこの問題を何かしら解決したなどと勘違いしようものなら、それは致命的な過ちになりかねない」と述べた。
ジョンソン氏は今回の国際会議の成果を踏まえても、自分の反応は「やや失望の色を帯びている」とした。
とりわけ、気候変動がすでに「生きるか死ぬかの問題」になっている国々はもっと大胆な対策を希望していだけに、それが実現できなかったことに、首相は落胆を示した。
「我々の多くは(大胆な対策実現に)意欲的だったが、全員がそうだったわけではない」と、ジョンソン氏は認めた。
そして、イギリスが各国に行動を強制することはできず、「最終的には彼らが判断し、支持しなければならない」と付け加えた。
石炭に関する合意については、表現が骨抜きになっても「それほど大きな違いはなく」、方向性は「ほぼ同じ」だと思うとした。
西欧と北米のほとんどの国が、海外の化石燃料プロジェクトへの資金援助を来年のこの時期までに中止すると、すでに受け入れているとジョンソン氏は指摘。
「こうしたことを総合すると、グラスゴー気候協定が石炭火力発電の最期を告げたと言っても過言ではない」
「合意が危ぶまれた」
ジョンソン氏と共に記者会見に臨んだアロク・シャーマCOP26議長は、最終交渉の最中に合意成立が危ぶまれたタイミングがあったと明かした。
涙をこえらえながらサミットを締めくくったシャーマ氏は、「世界の重みを肩に感じた、本当に緊迫した1時間があったことをお伝えする。(中略)この合意は間違いなく危険にさらされていた。それでも(合意採択という)ゴールにたどりついた」と述べた。
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シャーマ氏は先に、気候変動の影響を受けやすい国々に対し、「中国とインドは自らの立場を説明しなければならない」と述べていた。両国は最後の全体会議で、石炭の使用を「段階的に廃止」という表現に反対し、合意文書の表現が弱められた。
COP26では、2100年までに地球の気温上昇を1.5に抑えることを目標の1つとしていたが、各国の気候対策を追跡している「クライメート・アクション・トラッカー」(CAT)の報告書は、世界の気温が今世紀末までに摂氏2.4度上昇する見通しだとしている。
「1.5度目標」の実現に向けて、さらに温室効果ガス排出量の大幅削減を約束するため、各国は来年また集まる方針。
パトリシア・エスピノーサ国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局長は、合意文書で化石燃料への言及があったことを「巨大な前進」としつつ、特に貧困国においては、石炭火力発電の削減が人々にもたらす「社会的影響」とのバランスをとる必要があると述べた。
エスピノーサ氏は「1.5度目標」は「まだ確実に生きている」とした。しかし、英野党・労働党のエド・ミリバンド影のビジネス相は、「1.5度目標」は「集中治療室に入っている状況だ」と述べている。
石炭火力発電を2025年までに全廃しようと目指すイギリスは、10日午前0時に石炭火力発電を停止してから丸2カ月となる。
10年前にはイギリスの電力の約4割は石炭火力によるものだった。石炭火力の使用停止には新型コロナウイルスの感染拡大を受けたことも関係しているが、それだけではない。
イギリスが今年3月にロックダウンを開始すると電力需要は急減した。英送電会社ナショナル・グリッドは、石炭火力発電所を同社ネットワークから外した。
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残っていた4つの石炭火力発電所を最初に閉鎖し、4月9日午前0時に最後の1カ所のシステムを停止した。それ以降、電力供給のために石炭は燃やしていない。
ナショナル・グリッドは北アイルランドに電力を供給していないため、石炭火力の使用停止はブリテン島に限った話だ。
しかし、過去10年間でイギリスのエネルギー供給システムがどれほど劇的に変化してきたのかがうかがえる。
かつてイギリスの電力供給網を支えていた石炭火力が同国で必要ではなくなったのは、過去10年間の再生可能エネルギーへの大規模投資のおかげだ。
洋上風力発電
次の2つの例が、イギリスのエネルギー・ネットワークがどれほど変化したのかを示している。
10年前、イギリスの電力のわずか3%が風力と太陽光発電だった。当時は高価な発電方法だというのが大方の見方だった。
現在では、イギリスの洋上風力発電産業は世界最大で、昨年にはヨークシャー沖に世界最大の単一の洋上風力発電所が完成している。
木質ペレット
その一方で、イギリス最大の電力会社ドラックスは再生可能エネルギーの活用に向けて、別の道を進んできた。
ドラックスもヨークシャーに発電所を構えている。そこではイギリスの電力の5%をまかなっている。
ドラックスは10年前はイギリスで最も大量の石炭を消費する存在だった。しかし最近では、圧縮された木質ペレットを使った発電に切り替えている。
英ヨークシャーにあるドラックスの発電所は、石炭から木質ペレットを使った発電に切り替えている
「我々ドラックスは、石炭にはもはや未来はないと判断した」と、同社のウィル・ガーディナー最高経営責任者(CEO)は説明する。
「これは大規模事業だった。その結果、年間2000万トン以上だった二酸化炭素(CO2)排出量をほぼゼロにまで削減することができた」
ガーディナー氏によると同発電所では現在、年間700万トンのペレットをアメリカの商業用森林から調達しており、同社は2021年3月までに完全に石炭を廃止するという。
石炭以外も減少
再生可能エネルギーによって影を潜めつつあるのは石炭だけではない。
今年は今のところ、再生可能エネルギーによる発電量はすべての化石燃料を合わせた発電量を上回っている。
その内訳はというと、イギリスの電力供給のうち37%は再生可能エネルギーが、化石燃料が35%を占めていた。
イギリスの気候科学情報サイト「カーボン・ブリーフ」のデータによると、原子力発電が約18%、輸入電力が残りの10%を占めていた。
「今年は今のところ再生可能エネルギーの発電量が化石燃料を上回っている。こんなことは、これまでなかった」と、カーボン・ブリーフのサイモン・エヴァンス博士は言う。
「ガス発電も減少している。2020年中に再生可能エネルギーが化石燃料全体を追い抜く可能性は大いにある」
世界の原子力とそのほかの低炭素電力の内訳(2018年のテラワット時)。 上から水力、原子力、風力、その他の再生可能エネルギー、太陽光 出典:国際エネルギー機関(IEA)
今年の背景を示すデータを見てみると、どれほどあっという間に状況が逆転したのかがわかる。
再生可能エネルギーによる発電量が化石燃料を初めて上回ったのは、2016年12月だった。
今年以前は、再生可能資源を使った複合発電が化石燃料の発電量を上回った日数は、計154日だった。
カーボン・ブリーフは、このうち91日は2019年のことだったとしている。
化石燃料全般、とりわけ石炭の役割の低下は今後も続きそうだ。
イギリス国内に残る石炭火力発電所3カ所は、5年以内に閉鎖される予定だ。実現すれば、2世紀近く前にここイギリスで産業革命に火をつけた燃料は、過去のものとなる。
(英語記事 Britain goes coal free as fossil fuels edged out)
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ペロブスカイト太陽電池とは、ノーベル化学賞・物理学賞両賞の有力候補といわれている桐蔭横浜大学の 宮坂 力 みやさか つとむ 特任教授が発明した、次世代型の太陽電池です。 従来のシリコン型太陽電池と比べると、次のような特徴があるため、様々な用途への展開が期待でき、再生可能エネルギー拡大の切り札ともいえる技術です。