❸「ロシアのプーチン(プ・ロシア)」これほど気持ちの悪い男はいただろうか?「稀代の嘘つき男」、すべてを見下す戦争犯罪人!
色男ぶっているだけ男!自己支配欲の強い男。ウクライナの大量虐殺もロシアでなくウクライナ軍の仕業だ!と述べた。
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プーチン(黒の枢機卿)は全世界に核の脅威をチラつかせながら、占領地域では虐殺による恐怖政治の常習犯であったことがウクライナで露見した「ロシア連邦」。プーチンのロシアは「ならず者国家」として国連人権委員会を圧倒的賛成多数で除名されました。こうした懲りないロシアの「盗癖」、21世紀の国際社会が、元から断つ必要のある「18世紀型帝国主義」だ。 |
エリツィン氏 |
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ワグネル暴力団事務所御用達ホテル「レッドスターホテル」 |
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プリゴジンは、サンクトペテルブルグに2022年11月4日「ワグネル暴力団事務所」を開所した。 |
事実1:ロシアはウクライナへの武力侵攻を事前に計画していた。尊厳革命の勝利は都合の良い口実でしかない
ロシアは2014年2月20日にウクライナに対して周到に計画された武力侵略を開始し、軍隊の軍事作戦によりウクライナ領の一部であるクリミア半島を奪取した。 この日付については、ロシア国防省も否認しておらず、同省のメダル「クリミアの帰還」にも記されている。事実、この翌日にヴィクトル・ヤヌコーヴィチはキエフから逃亡し、2014年2月22日、ウクライナ国会は「ウクライナ大統領の解任と大統領選挙の早期実施」を採択した。ロシアはこれを「ウクライナの違憲クーデター」として非難した。
事実2:ロシアの侵攻は独立国家としてのウクライナを破壊することが目的だった
クリミア自治共和国とセヴァストポリ市の違法占領は、ウクライナの独立と主権の侵害を目的としたロシアの最初のステップであった。ロシア政府は、ロシアが世界のリーダーになるには、ウクライナを支配することが欠かせないと強く信じてきた。一方、民主的かつ繁栄したウクライナは、今日のロシアにおける権威主義体制への脅威である。 そのため、ロシアは次の侵攻段階として、ウクライナの東部地域と南部地域を不安定化させ、疑似国家「ノヴォロシヤ」の形成を図った。ウラジミール・プーチン大統領(黒の枢機卿)は、2014年4月17日、第1チャンネルのテレビ番組「ロシア人との対話」に出演しこの計画を発表した。ウクライナはこの計画の完全な履行は阻止できたが、ロシアの正規軍とその代理部隊(プーチンの私的軍事会社ワグネル)は ウクライナのドネツクやルガンスク地方の一部を占領した。
事実3:武力侵攻はロシアがウクライナに仕掛けるハイブリッド戦争の一要素に過ぎない
武力侵攻はロシアがウクライナに仕掛けるハイブリッド戦争の一要素に過ぎず、次の要素も含んでいる。
1)嘘や捏造に基づくプロパガンダ 2)貿易および経済的圧力 3)エネルギー供給の停止 4)ウクライナ国民へのテロと脅迫 5)ありとあらゆるサイバー攻撃 6)反駁できない広範な証拠にもかかわらず、ウクライナへの戦争行為を強く否定する 7)自国の利益のために親ロシア軍とその衛星国を利用する 8)自国が犯した犯罪で相手国を非難する
事実4:ウクライナ人の勇気と国際社会の団結がロシアの侵攻を食い止めた
ウクライナの兵士、国家警備隊や他の防衛、警察隊員の勇敢な活躍により、ロシアによるウクライナ武力侵攻の活動を食い止めた。
国際社会の政治的、外交的努力は、ロシアの武力侵攻に対抗する重要な要素となる。 2014年3月27日、国連総会は、ウクライナの国際的に認知された国境の再確認と、クリミア自治共和国およびセヴァストポリ市の地位変更には法的根拠が無いことを確認した決議68/262「ウクライナの領土一体性」を採択した。また、国連総会の2016年12月19日付決議71/205「クリミア自治共和国およびセヴァストポリ市(ウクライナ)における人権状況」においても同じ立場が確認された。その上、この決議は、ロシアを明確に占領国と定義し、クリミアにおける人権侵害のすべての責任をロシア政府に負わせている。
ウクライナの領土一体性を支持する多数の文書が、欧州評議会、欧州評議会議会、OSCE議会およびその他の国際機関によって承認された。
政治的、経済的制裁は、侵略国家に対する最も効果的な手段である。制裁は大規模侵攻の可能性を大幅に減少させ、ロシアを三者コンタクトグループ(ウクライナとロシアが紛争当事者、OSCEが仲介者)やノルマンディーカルテット(ウクライナとロシアが紛争当事国、フランスとドイツが仲介者)などの交渉の席に着かせることができた。制裁の緩和や撤廃を決定すれば、ロシアの武力侵攻に新たな波の発生を促すだろう。
事実5:ロシアの武力侵攻が深刻な人道的影響をもたらした
ウクライナに対するロシアの武力侵攻により、約9940人が死亡し、23455人が負傷した(国連のデータに基づく)。この数字には、2014年7月17日のテロ攻撃の結果死亡した子供80人を含むMH17便の298人の乗客が含まれている。マレーシア航空MH17便は、ロシア連邦から占領下のドンバスに持ち込まれたBUKミサイルシステムをロシア兵士が使用し撃墜された。
約1,584,000人のクリミアおよびドンバスの住民は、自宅からの退避を余儀なくされ、現在国内避難民となっている。
現時点では、ロシアはウクライナのクリミア自治共和国(26, 081平方km)、セヴァストポリ市(864平方km)、ドネツクとルガンスクの一部地域(16799平方km)の合計43744平方km、つまりウクライナ領土の7.2%を違法に占領している。
占領された地域は恐怖と抑圧の領土となっており、占領当局は人権と基本的自由を体系的かつ大規模に侵害する抑圧的な手段により行動している。占領されたクリミアの憂慮すべき人権状況は、2016年12月19日付国連総会決議71/205「クリミア自治共和国およびセヴァストポリ(ウクライナ)の人権状況」の採択を通じて非難された。
ドンバスの経済は完全に崩壊した。ドンバスの主要工業施設の設備は解体され、ロシアの領土に輸送された。浸水した鉱山の状況は環境災害を脅かす。ロシア当局は、脅威の評価や状況改善を模索しようとする専門家達のアクセスを許可していない。
ウクライナ東部のウクライナ国境およびロシア国境にまたがる409.7kmの区間はウクライナ政府の支配が及ばない。
事実6:ロシアは定期的に協定違反を犯している
ミンスク合意(2014年9月5日議定書、2014年9月19日覚書、2015年2月12日包括的措置)は、ドンバスにおける紛争の政治的解決の基礎であるが、ロシア連邦はそれらの合意を定期的に違反している。 2014年9月に最初の文書が署名された後、ロシア正規軍はドンバスに直接侵攻し、ロシア軍がドンバスで犯した最も恥ずべき犯罪の1つであるイロヴァイスク市付近の激しい敵対行為を行った。ロシア軍指揮官の保証の下、いわゆる「緑の廊下」からイロヴァイスク市を脱出中、少なくとも366人のウクライナ兵が死亡し、429人が負傷した。
ロシア軍とロシアの支援を受けた違法武装組織は、ミンスク覚書で定義された境界線でウクライナ政府の管理地に指定されていた土地8カ所、計1696平方kmを奪取し、ミンスク覚書に違反した。
デバルツェヴェは、ロシアによるミンスク合意違反を最もよく示している例の1つです。 2月15日以降の全面停戦を制定したミンスク包括的措置調印直後の2015年2月16日~18日、ロシア人テロリストグループの合同軍がデバルツェヴェ市と周辺地域を攻撃して奪取した。
事実7:ロシアはウクライナに武力侵攻し、国際法、二国間、多国間合意の基本的規範と原則に違反した
ロシアは、ウクライナへの武力侵攻という形で、以下に示す国際法の基本的規範と原則に違反した
- 国連憲章(1945年)
- ヘルシンキ最終法(1975年)
- 国際連合憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言(1970年)
- 国連総会決議3314「侵略の定義」(1974年)
- 国家の国内問題への干渉の非許容性および国家の独立と主権の保護に関する宣言(1965年)
- 国家の国内問題への干渉および介入の非許容性に関する宣言(1981年)
- 国際関係における武力による威嚇又は武力の使用を自制する原則の効果の向上に関する宣言(1987年)
さらに、ロシアは以下に示す二国間協定や多国間協定に違反した。
- ウクライナの核不拡散条約加盟に関連する安全保障に関するブダペスト覚書(1994年)
- ウクライナとロシア連邦間の友好、協力、パートナーシップに関する合意(1997年)
- ウクライナとロシア連邦間のウクライナ-ロシア国境の合意(2003年)
- ウクライナとロシア連邦間のアゾフ海とケルチ海峡使用の協力に関する協定(2003年)
- ウクライナとロシア連邦間のウクライナのロシア黒海艦隊の地位と状態に関する合意(1999年)
ロシアの占領およびその後のクリミアとセヴァストポリの併合の試み、ドンバスにおけるロシアの違法行為は、国連総会決議「侵略の定義」(3314(XXIX))の附則3条а), b), c), d), e) ,g)に定めた侵略の定義に該当する。以下の行為は、国際平和に対する重大な犯罪であり、ロシア連邦は国家レベルの国際的責任を負い、ロシア指導部は国際的な刑事責任を負うものである。
事実8:ロシア兵と武器の恒常的な流入がドンバスの平和を阻む主な障害となっている
ロシアは、ドンバスに配備されたロシア通常部隊や違法な武装組織を増強するため、管理されていない国境地帯を通じて占領した地域へ武器、弾薬、燃料を供給し続けている。
OSCE特別監視ミッションは、ロシア軍のみが採用している武器や軍用機材がドンバスに存在する事実を繰り返し報告した。 ドンバスの特別監視団は、重火器システム「Buratino」、通信妨害システムP-330「Zhitel」、無人偵察機「Orlan-10」、携帯型ロケットランシャーシステム「Grad-P」などを発見した。
ウクライナとロシアの国境が管理されていない地帯を通じ、ロシアの正規軍と傭兵がロシアからドンバスに流入し続けている。ロシアの傭兵は、2014年9月24日付国連安保理決議2178(2014年)が定義する、「外国人テロ戦闘員」に該当する。彼らは1または2の軍団(ロシアの将校や将軍の指揮系統下)の形成に大きな割合を占めている。ドンバスでのロシア正規軍の数は3600から4200人の間である。
ロシアとその代理人たちは、ミンスク合意に違反する形で、OSCE 特別監視団の非管理国境地帯へのアクセスを妨げ続けている。OSCE 特別監視団の訪問は、ロシア代理人の立ち会いのもとで行われる散発的かつ短時間のものとなっている。
ロシアは、ドンバスに隣接し、ウクライナの管理が及ばない国境に続く2つのロシアの国境交差点「グコヴォ」と「ドネツク」に配置されているOSCE監視団の任務拡大を阻止する唯一のOSCE加盟国である。
ロシアは、2014年9月5日付ミンスク議定書第4項に定めた、国境地域における安全保障区域の設置およびOSCEによる恒久的な国境監視および国境審査実施を保証することについて義務を履行していない。
事実9:武力侵攻とハイブリッド戦争はロシアのいつものやり方である
ロシアの敵対的な政策はウクライナだけが対象ではない。ロシアはモルドバとジョージアの領土一体性を侵害し、その領有権の主張と、バルト諸国におけるロシア語圏の人口を「保護する」意思を発表した。ロシアは欧州懐疑主義とヨーロッパの急進的な動きを支持している。 2016年の米国大統領選挙ではロシア特殊工作員が選挙運動を妨害し、OSCE、ドイツ、フランスに対してサイバー攻撃を行ったと言われている。
シリアでのロシアの残忍な軍事行動は、ヨーロッパへの難民流出を拡大させた。また、ロシア特殊工作員とイスラム国、アルカイダ等のテロ組織の密接な関係を示す証拠が数多く存在する。
事実10:ロシアの侵攻を止めるには、ロシア政府への圧力を強める以外に方法はない
ウクライナへの侵攻に対し、ロシアへ政治的・経済的制裁が発動された。制裁の解除は、ウクライナに対するロシア軍の侵攻が止み、ウクライナの主権と領土が回復しない限りありえないだろう。他の状況においても、ロシアは今後も侵攻を続け、地域内の他の国へと拡大するだろう。ロシアの侵攻を止めるには、ロシア国内の冷蔵庫の中が空っぽになったときだろう。
【演説全文】ウクライナ侵攻直前 プーチン大統領(黒の枢機卿)は何を語った?
2022年3月4日 18時25分
2月24日に突然、ロシアがウクライナを侵攻。その日、侵攻直前に、ロシアの国営テレビはプーチン大統領(黒の枢機卿)の国民向けの演説を放送しました。
プーチン大統領(黒の枢機卿)は何を語ったのか?
演説全文は次のとおりです。
プーチン大統領演説 2022年2月24日
NATOの“東方拡大”への危機感
親愛なるロシア国民の皆さん、親愛なる友人の皆さん。
きょうは、ドンバス(=ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州)で起きている悲劇的な事態、そしてロシアの重要な安全保障問題に、改めて立ち返る必要があると思う。
まずことし2月21日の演説で話したことから始めたい。それは、私たちの特別な懸念や不安を呼び起こすもの、毎年着実に、西側諸国の無責任な政治家たちが我が国に対し、露骨に、無遠慮に作り出している、あの根源的な脅威のことだ。
つまり、NATOの東方拡大、その軍備がロシア国境へ接近していることについてである。
この30年間、私たちが粘り強く忍耐強く、ヨーロッパにおける対等かつ不可分の安全保障の原則について、NATO主要諸国と合意を形成しようと試みてきたことは、広く知られている。
私たちからの提案に対して、私たちが常に直面してきたのは、冷笑的な欺まんと嘘、もしくは圧力や恐喝の試みだった。
その間、NATOは、私たちのあらゆる抗議や懸念にもかかわらず、絶えず拡大している。
軍事機構は動いている。
繰り返すが、それはロシアの国境のすぐ近くまで迫っている。
西側諸国が打ち立てようとした“秩序”は混乱をもたらしてきた
なぜ、このようなことが起きているのか。
自分が優位であり、絶対的に正しく、なんでもしたい放題できるという、その厚かましい態度はどこから来ているのか。
私たちの国益や至極当然な要求に対する、無配慮かつ軽蔑的な態度はどこから来ているのか。
答えは明白。
すべては簡単で明瞭だ。
1980年代末、ソビエト連邦は弱体化し、その後、完全に崩壊した。
当時起きたことの一連の流れは、今でも私たちにとってよい教訓となっている。
それは、権力や意志のまひというものが、完全なる退廃と忘却への第一歩であるということをはっきりと示した。
当時、私たちはしばらく自信を喪失し、あっという間に世界のパワーバランスが崩れたのだ。
これにより、従来の条約や協定には、事実上、効力がないという事態になった。
説得や懇願ではどうにもならない。
覇権、権力者が気に入らないことは、古風で、時代遅れで、必要ないと言われる。
それと反対に、彼らが有益だと思うことはすべて、最後の審判の真実かのように持ち上げられ、どんな代償を払ってでも、粗暴に、あらゆる手を使って押しつけてくる。
賛同しない者は、ひざを折られる。
私が今話しているのは、ロシアに限ったことではないし、懸念を感じているのは私たちだけではない。
これは国際関係のシステム全体、時にアメリカの同盟諸国にまでも関わってくるものだ。
ソビエト連邦の崩壊後、事実上の世界の再分割が始まり、これまで培われてきた国際法の規範が、そのうち最も重要で基本的なものは、第二次世界大戦の結果採択され、その結果を定着させてきたものであるが、それが、みずからを冷戦の勝者であると宣言した者たちにとって邪魔になるようになってきた。
もちろん、実務において、国際関係において、また、それを規定するルールにおいては、世界情勢やパワーバランスそのものの変化も考慮しなければならなかった。
しかしそれは、プロフェッショナルに、よどみなく、忍耐強く、そしてすべての国の国益を考慮し、尊重し、みずからの責任を理解したうえで実行すべきだった。
しかしそうはいかなかった。
あったのは絶対的な優位性と現代版専制主義からくる陶酔状態であり、さらに、一般教養のレベルの低さや、自分にとってだけ有益な解決策を準備し、採択し、押しつけてきた者たちの高慢さが背景にあった。
事態は違う方向へと展開し始めた。
例を挙げるのに遠くさかのぼる必要はない。
まず、国連安保理の承認なしに、ベオグラードに対する流血の軍事作戦を行い、ヨーロッパの中心で戦闘機やミサイルを使った。
数週間にわたり、民間の都市や生活インフラを、絶え間なく爆撃した。
この事実を思い起こさなければならない。
というのも、西側には、あの出来事を思い出したがらない者たちがいるからだ。
私たちがこのことに言及すると、彼らは国際法の規範について指摘するのではなく、そのような必要性があると思われる状況だったのだと指摘したがる。
その後、イラク、リビア、シリアの番が回ってきた。
リビアに対して軍事力を不法に使い、リビア問題に関する国連安保理のあらゆる決定を曲解した結果、国家は完全に崩壊し、国際テロリズムの巨大な温床が生まれ、国は人道的大惨事にみまわれ、いまだに止まらない長年にわたる内戦の沼にはまっていった。
リビアだけでなく、この地域全体の数十万人、数百万人もの人々が陥った悲劇は、北アフリカや中東からヨーロッパへ難民の大規模流出を引き起こした。
シリアにもまた、同じような運命が用意されていた。
シリア政府の同意と国連安保理の承認が無いまま、この国で西側の連合が行った軍事活動は、侵略、介入にほかならない。
ただ、中でも特別なのは、もちろん、これもまた何の法的根拠もなく行われたイラク侵攻だ。
その口実とされたのは、イラクに大量破壊兵器が存在するという信頼性の高い情報をアメリカが持っているとされていることだった。
それを公の場で証明するために、アメリカの国務長官が、全世界を前にして、白い粉が入った試験管を振って見せ、これこそがイラクで開発されている化学兵器だと断言した。
後になって、それはすべて、デマであり、はったりであることが判明した。
イラクに化学兵器など存在しなかったのだ。
信じがたい驚くべきことだが、事実は事実だ。
国家の最上層で、国連の壇上からも、うそをついたのだ。
その結果、大きな犠牲、破壊がもたらされ、テロリズムが一気に広がった。
世界の多くの地域で、西側が自分の秩序を打ち立てようとやってきたところでは、ほとんどどこでも、結果として、流血の癒えない傷と、国際テロリズムと過激主義の温床が残されたという印象がある。
私が話したことはすべて、最もひどい例のいくつかであり、国際法を軽視した例はこのかぎりではない。
アメリカは“うその帝国”
NATOが1インチも東に拡大しないと我が国に約束したこともそうだ。
繰り返すが、だまされたのだ。
俗に言う「見捨てられた」ということだ。
確かに、政治とは汚れたものだとよく言われる。
そうかもしれないが、ここまでではない。
ここまで汚くはない。
これだけのいかさま行為は、国際関係の原則に反するだけでなく、何よりもまず、一般的に認められている道徳と倫理の規範に反するものだ。
正義と真実はどこにあるのだ?あるのはうそと偽善だけだ。
ちなみに、アメリカの政治家、政治学者、ジャーナリストたち自身、ここ数年で、アメリカ国内で真の「うその帝国」ができあがっていると伝え、語っている。
これに同意しないわけにはいかない。
まさにそのとおりだ。
しかし謙遜する必要はない。
アメリカは依然として偉大な国であり、システムを作り出す大国だ。
その衛星国はすべて、おとなしく従順に言うことを聞き、どんなことにでも同調するだけではない。
それどころか行動をまねし、提示されたルールを熱狂的に受け入れてもいる。
だから、アメリカが自分のイメージどおりに形成した、いわゆる西側陣営全体が、まさに「うその帝国」であると、確信を持って言えるのには、それなりの理由があるのだ。
我が国について言えば、ソビエト連邦崩壊後、新生ロシアが先例のないほど胸襟を開き、アメリカや他の西側諸国と誠実に向き合う用意があることを示したにもかかわらず、事実上一方的に軍縮を進めるという条件のもと、彼らは我々を最後の一滴まで搾り切り、とどめを刺し、完全に壊滅させようとした。
まさに90年代、2000年代初頭がそうで、いわゆる集団的西側諸国が最も積極的に、ロシア南部の分離主義者や傭兵集団を支援していた時だ。
当時、最終的にコーカサス地方の国際テロリズムを断ち切るまでの間に、私たちはどれだけの犠牲を払い、どれだけの損失を被ったことか。
どれだけの試練を乗り越えなければならなかったか。
私たちはそれを覚えているし、決して忘れはしない。
実際のところ、つい最近まで、私たちを自分の利益のために利用しようとする試み、私たちの伝統的な価値観を破壊しようとする試み、私たちロシア国民を内側からむしばむであろう偽りの価値観や、すでに彼らが自分たち側の国々に乱暴に植え付けている志向を私たちに押しつけようとする試みが続いていた。
それは、人間の本性そのものに反するゆえ、退廃と退化に直接つながるものだ。
こんなことはありえないし、これまで誰も上手くいった試しがない。
そして今も、成功しないだろう。
色々あったものの、2021年12月、私たちは、改めて、アメリカやその同盟諸国と、ヨーロッパの安全保障の原則とNATO不拡大について合意を成立させようと試みた。
すべては無駄だった。
アメリカの立場は変わらない。
彼らは、ロシアにとって極めて重要なこの問題について私たちと合意する必要があるとは考えていない。
自国の目標を追い求め、私たちの国益を無視している。
そしてもちろん、こうした状況下では、私たちは疑問を抱くことになる。
「今後どうするべきか。何が起きるだろうか」と。
私たちは、1940年から1941年初頭にかけて、ソビエト連邦がなんとか戦争を止めようとしていたこと、少なくとも戦争が始まるのを遅らせようとしていたことを歴史的によく知っている。
そのために、文字どおりギリギリまで潜在的な侵略者を挑発しないよう努め、避けられない攻撃を撃退するための準備に必要な、最も必須で明白な行動を実行に移さない、あるいは先延ばしにした。
最後の最後で講じた措置は、すでに壊滅的なまでに時宜を逸したものだった。
その結果、1941年6月22日、宣戦布告なしに我が国を攻撃したナチス・ドイツの侵攻に、十分対応する準備ができていなかった。
敵をくい止め、その後潰すことはできたが、その代償はとてつもなく大きかった。
大祖国戦争を前に、侵略者に取り入ろうとしたことは、国民に大きな犠牲を強いる過ちであった。
最初の数か月の戦闘で、私たちは、戦略的に重要な広大な領土と数百万人の人々を失った。
私たちは同じ失敗を2度は繰り返さないし、その権利もない。
世界覇権を求める者たちは、公然と、平然と、そしてここを強調したいのだが、何の根拠もなく、私たちロシアを敵国と呼ぶ。
確かに彼らは現在、金融、科学技術、軍事において大きな力を有している。
それを私たちは知っているし、経済分野において常に私たちに対して向けられている脅威を客観的に評価している。
そしてまた、こうした厚かましい恒久的な恐喝に対抗する自国の力についても。
繰り返すが、私たちはそうしたことを、幻想を抱くことなく、極めて現実的に見ている。
軍事分野に関しては、現代のロシアは、ソビエトが崩壊し、その国力の大半を失った後の今でも、世界で最大の核保有国の1つだ。
そしてさらに、最新鋭兵器においても一定の優位性を有している。
この点で、我が国への直接攻撃は、どんな潜在的な侵略者に対しても、壊滅と悲惨な結果をもたらすであろうことに、疑いの余地はない。
また、防衛技術などのテクノロジーは急速に変化している。
この分野における主導権は、今もこれからも、目まぐるしく変わっていくだろう。
しかし、私たちの国境に隣接する地域での軍事開発を許すならば、それは何十年も先まで、もしかしたら永遠に続くことになるかもしれないし、ロシアにとって増大し続ける、絶対に受け入れられない脅威を作り出すことになるだろう。
NATOによるウクライナ領土の軍事開発は受け入れがたい
すでに今、NATOが東に拡大するにつれ、我が国にとって状況は年を追うごとにどんどん悪化し、危険になってきている。
しかも、ここ数日、NATOの指導部は、みずからの軍備のロシア国境への接近を加速させ促進する必要があると明言している。
言いかえれば、彼らは強硬化している。
起きていることをただ傍観し続けることは、私たちにはもはやできない。
私たちからすれば、それは全く無責任な話だ。
NATOが軍備をさらに拡大し、ウクライナの領土を軍事的に開発し始めることは、私たちにとって受け入れがたいことだ。
もちろん、問題はNATOの組織自体にあるのではない。
それはアメリカの対外政策の道具にすぎない。
問題なのは、私たちと隣接する土地に、言っておくが、それは私たちの歴史的領土だ、そこに、私たちに敵対的な「反ロシア」が作られようとしていることだ。
それは、完全に外からのコントロール下に置かれ、NATO諸国の軍によって強化され、最新の武器が次々と供給されている。
アメリカとその同盟諸国にとって、これはいわゆるロシア封じ込め政策であり、明らかな地政学的配当だ。
一方、我が国にとっては、それは結局のところ、生死を分ける問題であり、民族としての歴史的な未来に関わる問題である。
誇張しているわけではなく、実際そうなのだ。
これは、私たちの国益に対してだけでなく、我が国家の存在、主権そのものに対する現実の脅威だ。
それこそ、何度も言ってきた、レッドラインなのだ。
彼らはそれを超えた。
そんな中、ドンバスの情勢がある。
2014年にウクライナでクーデターを起こした勢力が権力を乗っ取り、お飾りの選挙手続きによってそれを(訳注:権力を)維持し、紛争の平和的解決を完全に拒否したのを、私たちは目にした。
8年間、終わりの見えない長い8年もの間、私たちは、事態が平和的・政治的手段によって解決されるよう、あらゆる手を尽くしてきた。
すべては徒労に帰した。
先の演説でもすでに述べたように、現地で起きていることを同情の念なくして見ることはできない。
今やもう、そんなことは到底無理だ。
この悪夢を、ロシアしか頼る先がなく、私たちにしか希望を託すことのできない数百万人の住民に対するジェノサイド、これを直ちに止める必要があったのだ。
まさに人々のそうした願望、感情、痛みが、ドンバスの人民共和国を承認する決定を下す主要な動機となった。
さらに強調しておくべきことがある。
NATO主要諸国は、みずからの目的を達成するために、ウクライナの極右民族主義者やネオナチをあらゆる面で支援している。
彼らは(訳注:民族主義者ら)、クリミアとセバストポリの住民が、自由な選択としてロシアとの再統合を選んだことを決して許さないだろう。
当然、彼らはクリミアに潜り込むだろう。
それこそドンバスと同じように。
戦争を仕掛け、殺すために。
大祖国戦争の際、ヒトラーの片棒を担いだウクライナ民族主義一味の虐殺者たちが、無防備な人々を殺したのと同じように。
彼らは公然と、ロシアの他の数々の領土も狙っていると言っている。
全体的な状況の流れや、入ってくる情報の分析の結果が示しているのは、ロシアとこうした勢力との衝突が不可避だということだ。
それはもう時間の問題だ。
彼らは準備を整え、タイミングをうかがっている。
今やさらに、核兵器保有までも求めている。
そんなことは絶対に許さない。
前にも述べたとおり、ロシアは、ソビエト連邦の崩壊後、新たな地政学的現実を受け入れた。
私たちは、旧ソビエトの空間に新たに誕生したすべての国々を尊重しているし、また今後もそのようにふるまうだろう。
それらの(訳注:旧ソビエト諸国の)主権を尊重しているし、今後も尊重していく。
その例として挙げられるのが、悲劇的な事態、国家としての一体性への挑戦に直面したカザフスタンに対して、私たちが行った支援だ。
しかしロシアは、今のウクライナから常に脅威が発せられる中では、安全だと感じることはできないし、発展することも、存在することもできない。
2000年から2005年にかけ、私たちは、コーカサス地方のテロリストたちに反撃を加え、自国の一体性を守り抜き、ロシアを守ったことを思い出してほしい。
2014年には、クリミアとセバストポリの住民を支援した。
2015年、シリアからロシアにテロリストが入り込んでくるのを確実に防ぐため、軍を使った。
それ以外、私たちにはみずからを守るすべがなかった。
ウクライナ東部の親ロシア派の武装勢力からの支援要請
今もそれと同じことが起こっている。
きょう、これから使わざるをえない方法の他に、ロシアを、そしてロシアの人々を守る方法は、私たちには1つも残されていない。
この状況下では、断固とした素早い行動が求められている。
ドンバスの人民共和国はロシアに助けを求めてきた。
これを受け、国連憲章第7章51条と、ロシア安全保障会議の承認に基づき、また、本年2月22日に連邦議会が批准した、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国との友好および協力に関する条約を履行するため、特別な軍事作戦を実施する決定を下した。
その目的は、8年間、ウクライナ政府によって虐げられ、ジェノサイドにさらされてきた人々を保護することだ。
そしてそのために、私たちはウクライナの非軍事化と非ナチ化を目指していく。
また、ロシア国民を含む民間人に対し、数多くの血生臭い犯罪を犯してきた者たちを裁判にかけるつもりだ。
ただ、私たちの計画にウクライナ領土の占領は入っていない。
私たちは誰のことも力で押さえつけるつもりはない。
同時に、ソビエトの全体主義政権が署名した文書は、それは第二次世界大戦の結果を明記したものだが、もはや履行すべきではないという声を、最近、西側諸国から聞くことが多くなっている。
さて、それにどう答えるべきだろうか。
第二次世界大戦の結果は、ナチズムに対する勝利の祭壇に、我が国民が捧げた犠牲と同じように、神聖なものだ。
しかしそれは、戦後数十年の現実に基づいた、人権と自由という崇高な価値観と矛盾するものではない。
また、国連憲章第1条に明記されている民族自決の権利を取り消すものでもない。
ソビエト連邦が誕生した時も、第二次世界大戦後も、今のウクライナの領土に住んでいた人々に、どのような生活を送っていきたいかと聞いた人など1人もいなかったことを思い出してほしい。
私たちの政治の根底にあるのは、自由、つまり、誰もが自分と自分の子どもたちの未来を自分で決めることのできる選択の自由だ。
そして、今のウクライナの領土に住むすべての人々、希望するすべての人々が、この権利、つまり、選択の権利を行使できるようにすることが重要であると私たちは考えている。
これに関し、ウクライナの人々にも言いたい。
2014年、ロシアは、あなた方自身が「ナチス」と呼ぶ者たちから、クリミアとセバストポリの住民を守らなければならなかった。
クリミアとセバストポリの住民は、自分たちの歴史的な祖国であるロシアと一緒になることを、自分たちで選択した。
そして私たちはそれを支持した。
繰り返すが、そのほかに道はなかった。
目的はウクライナの“占領”ではなく、ロシアを守るため
現在起きていることは、ウクライナ国家やウクライナ人の利益を侵害したいという思いによるものではない。
それは、ウクライナを人質にとり、我が国と我が国民に対し利用しようとしている者たちから、ロシア自身を守るためなのだ。
繰り返すが、私たちの行動は、我々に対して作り上げられた脅威、今起きていることよりも大きな災難に対する、自己防衛である。
どんなにつらくとも、これだけは分かってほしい。
そして協力を呼びかけたい。
できるだけ早くこの悲劇のページをめくり、一緒に前へ進むために。
私たちの問題、私たちの関係を誰にも干渉させることなく、自分たちで作り上げ、それによって、あらゆる問題を克服するために必要な条件を生み出し、国境が存在するとしても、私たちが1つとなって内側から強くなれるように。
私は、まさにそれが私たちの未来であると信じている。
ウクライナ軍の軍人たちにも呼びかけなければならない。
親愛なる同志の皆さん。
あなたたちの父、祖父、曽祖父は、今のネオナチがウクライナで権力を掌握するためにナチと戦ったのではないし、私たち共通の祖国を守ったのでもない。
あなた方が忠誠を誓ったのは、ウクライナ国民に対してであり、ウクライナを略奪し国民を虐げている反人民的な集団に対してではない。
その(訳注:反人民的な政権の)犯罪的な命令に従わないでください。
直ちに武器を置き、家に帰るよう、あなた方に呼びかける。
はっきりさせておく。
この要求に応じるウクライナ軍の軍人はすべて、支障なく戦場を離れ、家族の元へ帰ることができる。
もう一度、重ねて強調しておく。
起こりうる流血のすべての責任は、全面的に、完全に、ウクライナの領土を統治する政権の良心にかかっている。
さて、今起きている事態に外から干渉したい思いに駆られているかもしれない者たちに対し、言っておきたい大変重要なことがある。
私たちに干渉しようとする者は誰でも、ましてや我が国と国民に対して脅威を作り出そうとする者は、知っておくべきだ。
ロシアは直ちに対応し、あなた方を、歴史上直面したことのないような事態に陥らせるだろうということを。
私たちは、あらゆる事態の展開に対する準備ができている。
そのために必要な決定はすべて下されている。
私のことばが届くことを願う。
親愛なるロシア国民の皆さん。
国家や国民全体の幸福、存在そのもの、その成功と存続は、常に、文化、価値観、祖先の功績と伝統といった強力で根幹的なシステムを起源とするものだ。
そしてもちろん、絶えず変化する生活環境に素早く順応する能力や、社会の団結力、前へ進むために力を1つに集結する用意ができているかどうかに直接依存するものだ。
力は常に必要だ。
どんな時も。
しかし力と言っても色々な性質のものがある。
冒頭で述べた「うその帝国」の政治の根底にあるのは、何よりもまず、強引で直接的な力だ。
そんな時、ロシアではこう言う。
「力があるなら知性は必要ない」と。
私たちは皆、真の力とは、私たちの側にある正義と真実にこそあるのだということを知っている。
もしそうだとしたら、まさに力および戦う意欲こそが独立と主権の基礎であり、その上にこそ私たちの未来、私たちの家、家族、祖国をしっかりと作り上げていくことができる。
このことに同意しないわけにはいかない。
親愛なる同胞の皆さん。
自国に献身的なロシア軍の兵士および士官は、プロフェッショナルに勇敢にみずからの義務を果たすだろうと確信している。
あらゆるレベルの政府、経済や金融システムや社会分野の安定に携わる専門家、企業のトップ、ロシア財界全体が、足並みをそろえ効果的に動くであろうことに疑いの念はない。
すべての議会政党、社会勢力が団結し愛国的な立場をとることを期待する。
結局のところ、歴史上常にそうであったように、ロシアの運命は、多民族からなる我が国民の信頼できる手に委ねられている。
それはつまり、下された決定が実行され、設定された目標が達成され、我が祖国の安全がしっかりと保証されるということだ。
あなたたちからの支持と、祖国愛がもたらす無敵の力を信じている。
以上
「声を上げるのをやめたくなる。しかし声を上げなければ悲しみが生まれる。だから声を上げ続けなければならない」
こう語ったのは、ノーベル文学賞作家で、ベラルーシとウクライナにルーツを持つ、スベトラーナ・アレクシェービッチ氏です。
彼女が3月9日、NHKのインタビューに応じました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、今、世界に伝えたいメッセージを聞きました。
(国際局 World News部 ディレクター 町田啓太)
ベラルーシとウクライナのルーツが生む苦しみ
ベラルーシの作家、アレクシェービッチ氏はウクライナ人の母とベラルーシ人の父のもと、ウクライナで生まれ育ちました。
代表作に第二次世界大戦に従軍した女性たちの証言をまとめた「戦争は女の顔をしていない」のほか、「ボタン穴から見た戦争」「アフガン帰還兵の証言」など、国家に翻弄されてきた旧ソビエト諸国に暮らす人々の感情や記憶を聞き取り、著述してきました。
2015年にはチェルノブイリ原発事故の被害者を取り上げた作品「チェルノブイリの祈り」などが高く評価され、ノーベル文学賞を受賞しました。
強権的な政治で知られるベラルーシのルカシェンコ政権を批判し、仲間が次々逮捕されるなど身の危険を感じていたアレクシェービッチ氏。
現在は持病を治療する必要もあって、ベラルーシからドイツへ拠点を移して生活しています。
冷静で穏やかな印象のアレクシェービッチ氏でしたが、インタビューでは彼女のことばの端々に静かな怒りを感じました。
ルカシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領(黒の枢機卿)は3月にも会談を行い、結束を強調。
ベラルーシ軍がロシア軍へ合流するのではと警戒する声も上がっています。
ベラルーシの現政権と対決してきたアレクシェービッチ氏は、ウクライナとベラルーシの二つの国のルーツを持つゆえに、深い悲しみと怒りを抱えていると話していたのが印象的でした。
“知識人”としての責任
そしてもう一つ、彼女に深い悲しみと怒りを引き起こしているものがありました。
それは、ロシアのほとんどの知識人たちが沈黙していることです。
持病を抱え体調が芳しくないという73歳のアレクシェービッチ氏ですが、抗議の声を上げ続けています。
3月1日にノーベル賞受賞者らとともに「不当で残虐」とロシアの侵攻を非難する書簡を発表。
これには山中伸弥氏(2012年医学・生理学賞)や白川英樹氏(2000年化学賞)、フィリピンのマリア・レッサ氏(2021年平和賞)など160人以上が名を連ねています。
さらに、多くのメディアがロシア国内で活動停止したことを受けて「あらゆる手段でロシア市民に今回の侵攻の真実を伝えてほしい」と、ロシアの作家らとともに海外メディアを通じて呼びかけています。
それはソビエト崩壊を経験した人々の記憶を聞き取ってきた、彼女の心からの願いでした。
プーチン大統領(黒の枢機卿)が2月24日にロシア国民向けて行った演説では、怒りの矛先を西側諸国に向けました。
この演説をどう受け止めたのか、アレクシェービッチ氏に尋ねました。
“ウクライナ軍の部隊にはベラルーシ人も”
アレクシェービッチ氏の祖国ベラルーシでは、2020年の大統領選挙に不正があったとして、市民が政権に抗議する大規模なデモが行われ、今もなお自由や人権を求める運動が続いています。
アレクシェービッチ氏はロシアのウクライナへの侵攻は、ベラルーシや周辺の国にも大きな影響を与えると指摘しています。
ロシアで「頭脳流出」進む 数千人が海外へ脱出、ウクライナ侵攻で
2022年3月15日
ジョージアの首都トビリシの空港でタクシーを待つロシア人(7日)東欧のジョージア議会の外で、1人男性が衣服や食料が入った箱を、ウクライナに向かうトラックに積み込んでいる。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、ジョージアには2万5000人以上のロシア人がやってきている。先ほどの男性、エフゲニー・リャミンさん(23)もその1人だ。
ロシア人たちはジョージア国内のあらゆる主要都市で、手頃な宿泊施設を見つけるのに苦労している。多くの人がスーツケースを手に、首都トビリシをさまよっている。ペットを連れている人もいる。
リャミンさんのトレンチコートの襟には、ウクライナ国旗の青色と黄色のリボンがついている。ロシアがウクライナに戦争を仕掛けた翌日、彼が反戦デモに参加したとして逮捕されたのは、このリボンのせいだった。
「プーチン政権に対抗する最善の方法は、ロシアから移住することだと理解していました」と、大学で政治学を学んだというリャミンさんは言う。「ウクライナ人を助けるためにできることは何でもする。それが私の責任です」。
ロシアを脱出した人たちの行き先は、ジョージアにとどまらない。欧州連合(EU)、アメリカ、イギリス、カナダはロシア航空機の自国領空での飛行を禁止している。そのため、こうしたロシア人たちはトルコや中央アジア、南コーカサスなど飛行が許可され、ビザが不要な国に向かっている。その多くはアルメニアに逃れている。
ロシア人経済学者の推計によると、ウクライナ侵攻開始以降、20万人ものロシア人が国を離れたという。
ロシアの同盟国ベラルーシの人々も国外へ移動している。弾圧から逃れ、権威主義的な同国の指導者アレクサンドル・ルカシェンコ大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領に協力したとして西側諸国が科した制裁から逃れるために。
そのため、トルコ・イスタンブールやアルメニアの首都エレヴァンといった主要都市に向かう直近のフライトや宿泊施設などの価格が急騰している。
「イスタンブールへの片道航空券は、私たち夫婦の月収を上回る額です」と、アーニャさんは名字を伏せて話してくれた。
アーニャさんが国外への脱出を決断したのは、ロシアで新たな「国家反逆」法が施行されたことがきっかけだった。ウクライナへの支持を表明した者は20年以下の禁錮刑が科される可能性がある。アーニャさんは自分が標的にされるかもしれないと考えたという。
「閉ざされた国境や政治的抑圧、強制的な兵役に対する恐怖は、私たちのDNAに刻まれています。祖母がスターリン政権下の恐怖に包まれた暮らしについて話してくれたのを覚えています。私たちはいま、そういう状況下にいるのです」
どんな人が海外に移住しているのか
新たな移住者の多くは、リモート勤務が可能なハイテク産業の専門職の人たちだ。トビリシのカフェで出会ったゲーム開発者は、自分や知り合いのほとんどはロシアの政策に反対していると話した。どんな抗議活動も暴力的に弾圧されると、今は理解しているのだという。
「私たちが抗議するためにできる唯一の方法は、技術やお金を持って国を出ることです。私たちの仲間はほとんど全員が同じような決断をしています」と、イーゴリさん(仮名)は言った。彼はトビリシで歓迎されていないと感じ、この街を離れるつもりだという。
米民泊仲介サイトのAirbnb(エアービーアンドビー)で宿泊先を提供しているホスト側が、ロシア人やベラルーシ人に自分の物件を貸すことを拒否する事案が多数報告されている。
あるホストは、ベラルーシ人カップルに「ロシア人とベラルーシ人はお断り」、「あなたたちには休暇を取る時間なんてない。腐敗した政府に反抗して」と伝えたと、BBCに明かした。
「みんな、私たちがアップルペイが使えなくなったからロシアから逃げ出していると思っているんです」と、イーゴリさんは不満を口にした。「私たちは快適さを求めて逃げているのではありません。私たちはあそこ(ロシア)で全てを失ってしまった難民のようなものです。プーチンの地政学が私たちの生活を破壊してしまった」。
トビリシの公共サービスホールでは、新しくやってきた人たちが事業登録や住民登録の申請を行っている。
ベラルーシの首都ミンスクから来たITスペシャリストのクリスティナさんとニキータさんは、個人事業主として登録した。これでジョージアの銀行で口座を開設できるという。
「私たちは自国の政府を支持していません。逃げ出したのですから、支持していないのは明白だと思います」と、クリスティナさんは話した。「でも国籍を理由にいじめられる。出身国を隠さないといけないし、出身地を聞かれると居心地の悪さを感じます」。
戦闘が始まって以来、トビリシではウクライナを支援するための最大規模の集会が開かれている。最近の調査では、ジョージア人の87%がウクライナでの戦闘を、自分たちとロシアとの戦いとみなしていることが明らかになった。
ロシアがジョージアに侵攻してから14年ほどしかたっていないため、多くのジョージア人はロシア人の劇的な流入を不安視している。
プーチン氏が在外ロシア人の保護が必要だと主張するかもしれないと、危惧する人もいる。これは実際に、2008年にプーチン氏が南オセチアへの派兵を正当化するために口実として利用したものだった。現在もジョージアの領土の20%はロシアの占領下にある。
しかし、技術系起業家のレフ・カラシニコフさんは、ロシアの現代史における最大規模の頭脳流出が起きていると断言。ジョージアがこの恩恵を受けることになるとみている。手続きのために列に並んでいる間、カラシニコフさんはメッセージアプリ「テレグラム」で移住者向けのグループを開設した。
「私の前に50人、私の後ろに50人いました。彼らが最初の登録者になって、今では4000人近いメンバーが集まっています」
メンバー登録した人たちは、宿泊先を探す場所や銀行口座の開設方法、人前でロシア語を話しても安全かどうかなどを話し合っているという。
エフゲニー・リャミンさんはすでに、ジョージア語の勉強を始めている。ジョージアの独特な文字をノートに書いて練習している。
「私はプーチンに反対しているし、戦争にも反対です。ロシアの銀行口座からはいまだにお金を引き出せないけど、ウクライナ人が直面している問題と比べれば何でもない」
「兵士3人で16歳をレイプした」“ロシア兵音声”公開 深刻化する性暴力【news23】
ウクライナ詳報
TBSテレビ news23
2022年4月14日(木) 23:56
撮影者
「この部屋で彼女は辱められ、虐待され、拷問されました」
映像には、床に敷かれた布団やベッドに血痕が映っていました。
撮影者
「ひどすぎる・・・」
被害に遭ったのは、隣に住む女性だといいます。
■“笑いながら”ウクライナ女性へのレイプについて話す場面も
ロシア兵による性暴力も深刻化しています。2022年4月12日のリトアニア議会でウクライナのゼレンスキー大統領は・・・
ゼレンスキー大統領
「ウクライナ戦争でロシアはウクライナに侵攻して数百件のレイプが報告されている。被害者の中には少女や幼い子ども、さらには赤ん坊までもいる」
ウクライナ内務省顧問が2022年4月11日に公開したのはキーウ近郊の町、マカリウの民家の映像です。撮影者
「この部屋で彼女は辱められ、虐待され、拷問されました」
映像には、床に敷かれた布団やベッドに血痕が映っていました。
撮影者
「ひどすぎる・・・」
被害に遭ったのは、隣に住む女性だといいます。
「1人の侵略者(ロシア側兵士)が彼女を隣の家に連れ去り、レイプし虐殺しました。拷問が何日続いたのかわかりません」
ウクライナ保安庁がツイッターで公開した「ロシア兵と家族の電話音声とされるもの」では、兵士がレイプを認めています。
▼ロシア兵と家族の電話音声とされるやりとり
ロシア兵:この間、戦車部隊員3人で16歳の女の子をレイプした
女性:誰が?
ロシア兵:3人の戦車部隊だ。16歳の子を!
女性:ロシア兵が?
ロシア兵:そう
また別のロシア兵と妻のものとされる音声では、笑いながらウクライナ女性へのレイプについて話すものもあります。
▼ロシア兵と妻の電話音声とされるやりとり
妻:ウクライナの女をレイプしていいよ。私は何も知らないことにする
ロシア兵:レイプしても君には言わないってことだね
妻:そう、私は何も知らないってこと
ロシア兵:いいのか?
妻:レイプを許すからコンドームはしてね
ロシア兵の「性暴力による妊娠」も大きな問題になると、ウクライナで活動する弁護士は指摘します。
ウクライナで活動する人権弁護士 マトベイチュクさん
「避難先のポーランドでは裁判で犯罪が証明されないと中絶ができません。なので中絶など医学的処置のためにポーランドから違う国へ向かわせたケースもすでにあります」
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グレタ・ベドラーさん |
ロシアのプーチン大統領を「サイコパス」と非難したロシアのモデルが、行方不明になってから約1年後に遺体で発見された。
2022年3月15日(現地時間)、インディペンデントやフォックスニュースなどの外国メディアによると、ロシア出身のモデル、グレタ・ベドラーさん(23)は、車の中のスーツケースの中から遺体で発見された。
ベドラーさんはロシアで活動し、プーチン大統領を辛らつに批判してきた人物だ。彼女は昨年1月、自身のSNSでプーチンについて「彼が本当に何でもできると思うのか」とし「彼がロシアのためにすることは失敗する」と主張した。
それとともに「プーチン大統領は幼い頃、小さな体格のため多くの屈辱を受けた。そうした人たちは小心者で臆病で見知らぬ人を恐れる」とし「慎重さ、自制力、コミュニケーションが不足している。私の考えでは、彼はサイコパスかソシオパス的性向があるとしか思えない」と述べた。 その後、ベドラーさんはこのような批判の書き込みをした後、行方不明になった。ファンは「ロシア当局が彼女の行方不明に関与したのではないか」など、様々な推測を出している。
【3月18日 AFP=時事】ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)は2022年3月17日、ウクライナへの侵攻によって国内の裏切り者が明らかになるだろうと主張し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領によるロシア社会の「浄化」の呼び掛けを繰り返した。
ドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)大統領報道官は「このような状況では、大勢の人が裏切り者としての正体を現す」
「裏切り者は自らロシア社会から消える。職を辞する者もいれば、国を去る者もいる。このようにして浄化が行われている」と述べた
ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月24日以降、大勢のロシア人が国を去った。その数は最初の数時間で数千人とも言われるが、正確な数は分かっていない。ロシアに残った人間はプーチン支持派(プロパガンダに毒されたゾンビ)、ロシア人以外の「新ロシア派」の人間だ。
ぺスコフ氏は、ロシア人の「圧倒的多数」がプーチン氏を支持していると主張した。
プーチン氏は16日、テレビ中継された政府の会合で、西側がロシア社会の分断を試みていると指摘。「精神的に」西側にくみしている「第五列(スパイ)」が存在すると激しく非難。「ロシア人は真の愛国者と裏切り者を常に見分けることができる。裏切り者は口に飛び込んできたハエのように吐き出すのみだ」とけん制した。
「こうした自然かつ必要な社会の自浄作用が、わが国をひたすらに強くすると確信している」と続けた。
また、西側のメディアとSNS大手が「うその帝国」を築いてロシアに対抗していると非難した。
【翻訳編集】AFPBB News
イギリス、ウクライナ難民受け入れ制度発表 住居提供の家庭に月5万円超の謝礼
2022年3月14日
ジョセフ・リー、ヴィクトリア・リンドリア、ジョージ・ボウデン(BBCニュース)
13日放送のBBC番組「サンデー・モーニング」に出演したマイケル・ゴーヴ住宅・コミュニティ・地方自治相
イギリス政府は13日、ロシアによるウクライナ侵攻から逃れてきた人の滞在先として、一般家庭を開放する難民受け入れ制度を発表した。難民を受け入れた家庭には月350ポンド(約5万4000円)の謝礼を支払うという。
イギリスのマイケル・ゴーヴ住宅・コミュニティ・地方自治相はBBCに対し、この制度を使えば数万人がイギリスへ避難できるようになると説明。自分自身も、難民に部屋を提供するかもしれないと述べた。
しかし英支援団体「難民評議会」は、戦争で心に傷を負った人をどの程度支えられるのかと懸念している。
最大野党・労働党は、答えが出ていない問題があるとし、政府の危機対応が「後手後手すぎる」と非難した。
英政府が発表した「ホームズ・フォー・ウクライナ」制度では、イギリス市民が難民の個人や家族を指名し、少なくとも6カ月間、自宅または別の物件に無料で滞在してもらえるようにする。
この制度による難民受け入れを希望する人は、14日開設予定のウエブサイトで意思表示できるようになる。
ゴーヴ氏は13日放送のBBC番組「サンデー・モーニング」で、ロシア政府に近いことを理由に英政府が制裁対象にしたオリガルヒ(財閥)の資産を、「人道目的」で利用することを検討したいと説明。ただし、イギリス国内で差し押さえたロシア財閥の邸宅などを、ウクライナ難民の保護に使うには、「かなり高い法的ハードル」があると述べた。さらに、制裁が解除されればこの措置も無効になるとした。
英住宅相、ロシア財閥の没収不動産をウクライナ避難民支援に活用の可能性示す英企業の難民雇用も
英小売り大手セインズベリーやマークス・アンド・スペンサー、モリソンズなどの英企業が、ウクライナ難民を雇用したいと申し出ている。
英アパレル大手「ASOS(エイソス)」は、ウクライナの高い技術工学のスキルを呼び込みたいとしている。石鹸を販売する「LUSH(ラッシュ)」は、従業員としての受け入れ枠を確保する方針という。
ウクライナのヴァディム・プリスタイコ駐英大使は13日、英首相官邸のあるダウニング街で開かれた集会で、ウクライナへのさらなる支援や、武器や人道援助の提供を呼び掛けた。
新制度の内容は
難民を受け入れる地方自治体には、支援サービスのための追加資金として難民1人当たり1万500ポンド(約160万円)が支払われる。就学年齢の子供たちを受け入れた場合は増額されると、レベルアップ・住宅・コミュニティー省は説明した。
ロシアの侵攻により、これまでに250万人以上がウクライナから脱出している。国連によると、第2次世界大戦以降で最も急拡大している難民危機だという。
英政府は難民危機に対する対応の速さと規模をめぐり、与党議員からも批判を受けている。
ゴーヴ住宅相はBBCに対し、戦争から逃れてイギリスでビザを取得したウクライナ人の数は現在3000人に上ると述べ、政府の対応を擁護した。
現在、イギリス政府の「ウクライナ家族制度」の申請対象になっているのは、親族がイギリス国内で暮らしている難民のみ。イギリスに滞在できるビザはほかにもあるが、ウクライナ国内の申請センターは閉鎖されている。
今回発表された新制度では、難民の受け入れスポンサーとなる人たちは事前に難民と面識がある必要はなく、人数制限もない。新制度を利用するウクライナ人には3年間の滞在許可のほか、就労や公共サービスを利用する権利も与えられる。
ゴーヴ氏はBBCに対し、「1週間以内に」第一陣が到着し、「数万人」のウクライナ人がイギリスの家庭に引き取られるかもしれないとの見通しを示した。
申請はオンラインでの受付となる。スポンサー希望者の身辺調査と、難民の保安検査(セキュリティチェック)がそれぞれ行われる。スポンサーには月350ポンドの「謝礼」が支払われる。
ウクライナ難民を自宅で受け入れるつもりか尋ねられると、ゴーヴ氏は「そのつもりだ」、「自分に何ができるかを探っている」と答えた。
「私自身について細かい説明は避けますし、いくつか対応が必要なこともありますが、答えはイエスです」と、ゴーヴ氏は付け加え、自分も難民受け入れのスポンサーになる意向を示した。
新制度の後期段階には、慈善団体や教会などの組織も難民のスポンサーになれるという
が、開始時期は未定。
新制度は「不十分」との指摘も
英国内の難民や亡命希望者を支援する慈善団体である難民評議会は、ウクライナから逃れた人々がさらなる「お役所的ハードル」に直面することを懸念しており、政府が発表した制度は不十分だと指摘した。
正式な難民認定あるいは亡命制度を通じた、人道的理由による滞在許可を申請すれば、ビザは不要となり、申請者とその扶養家族はイギリスに5年間滞在できるようになる。また、就労や就学、給付金申請の権利も与えられる。
労働党のサー・キア・スターマー党首は英スカイ・ニュースに対し、政府によるビザ制度の整備スピードは「遅すぎるし、(範囲が)狭すぎてあまりに意地悪」なものだと語った。そして、政府は必要な支援について地方議会に相談していなかったと付け加えた。
「率直に言ってここ数週間、難民問題についてイギリスは恥ずかしい状況だった」
野党・自由民主党の党首、サー・エド・デイヴィーは、ウクライナ難民に対する政府の対応について、プリティ・パテル内相を解任すべきだと述べた。
デイヴィー氏は、「内相が見せた無能さや無関心さ、あまりに非人道的な行いは、助けを必要とする人々をかくまってきたという誇らしい歴史を持つイギリスにはふさわしくない」と、北部ヨークで開かれた春の闘会議で語った。
政府報道官はデイヴィー氏の発言を受け、「こうした非難は事実ではない」とし、2015年以降、同国は「ほかのどの欧州諸国よりも安全かつ合法的ルートでより多くの難民を(イギリスに)新たに定住させている」との主張を繰り返した。
BBCリアリティ・チェック(ファクトチェック)が今週報じたように、政府側の一部の主張は事実だが、その全体像は全く異なる。2015年以降、いくつかの欧州諸国はイギリスよりはるかに多くの難民を受け入れている。
ウクライナ人が避難した国々。ポーランドには152万5000人、スロヴァキアには17万6000人、ハンガリーには22万5000人、ルーマニアには8万5000人、モルドヴァには10万5000人、ベラルーシには858人、ロシアには10万人、そのほかの欧州諸国には合わせて28万2000人が逃れている 出典: 国連難民高等弁務官事務所 3月11日時点スコットランド自治政府とウェールズ自治政府の両首相は、政府宛ての書簡で、「スーパー・スポンサー」として難民を支援することを申し出た。
欧州連合(EU)はウクライナ人にビザなしで3年間の居住を認めている。しかしイギリスは、安全保障対策として入国規制が不可欠だとしている。
アイルランドのミホル・マーティン首相は、BBC番組「サンデー・モーニング」で、同国は5500人のウクライナ難民を受け入れたが、入国時のセキュリティチェックは行っていないと述べた。
こうした中、英アカデミー賞の授賞式に出席した英俳優ベネディクト・カンバーバッチ氏や俳優スティーヴン・グレアム氏など複数の著名人が、ウクライナへの支援を表明している。
SOCIETY
3min2022.3.15
お見合い仲介サービスへの依頼は2倍に
“ウクライナ人の花嫁”を欲しがる中国人男性が武力侵攻後に急増した理由
ウクライナ人女性とのマッチング希望者が急増
「(戦争で)家を失ってしまったウクライナ人女性を保護します」
「若くて美しく、未婚で、健康な女性が優先です」
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した2022年2月24日以降、中国のソーシャルメディア「ウェイボー(微博)」上で、中国人男性ユーザーらによるこのような投稿が急増したと、報じられている。
これらの投稿は、「ウクライナ人女性を妻にしたい」という欲望を持つ中国人男性による、若いウクライナ人女性への“ラブコール”だ。戦時下において、これらの投稿は不適切だと判断され、現在は削除されているが、それでもロシアのウクライナ侵攻を、「ウクライナ人女性を妻にする絶好のチャンス」としてみている男性が中国に大勢いることには変わりはない。無責任極まりない、信頼感ゼロの中国人が若いウクライナ人女性への“ラブコール”だ。
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車に乗った中国人が声を掛けてきたら、注意すべきだ。中国では現代の人身売買・強制労働が行われている。 |
ロシアで経済フォーラム、意外な参加者とは?
2022年06月15日 (水)
石川 一洋 解説委員
ウクライナに軍事侵攻したロシアに対して厳しい経済制裁が続く中、プーチン大統領の肝いりで国際経済フォーラムが今日から始まります。意外な参加者が注目されています。石川解説委員に聞きます。
Qプーチン大統領の肝いりのフォーラムとは?
Aプーチン大統領(黒の枢機卿)が、故郷で毎年開催しているサンクトペテルブルク国際経済フォーラムです。投資先としてのロシアの魅力を、プーチン大統領自ら欧米の大企業にアピールするとともに、首脳同士の政治対話の場としても利用してきました。しかし今年はロシアがウクライナに侵攻したため欧米や日本など経済制裁を科している国はほとんど参加しません。プーチン大統領としては、旧ソビエトの同盟国、中国やインドなどアジアそしてエジプトなど中東、アフリカの国々からたくさんのお客の参加を得てロシアは孤立していないということを示したいところです。
Qその中で意外な参加者とは
Aタリバンの支配するアフガニスタンが政府の代表を派遣します。ロシアはタリバンを国際テロ組織として国内での活動は禁止していますが、実は政府同士の関係を正常化させつつあります。今年の4月にはタリバンの指名した代表をロシアにおける公式なアフガニスタン政府の代表・つまり外交の代表として認め、事実上外交関係を再開しました。経済フォーラムへのアフガニスタンの参加は、今後ロシアがタリバンとの経済協力にも踏み込む一歩とみられています。
Qなぜロシアはタリバンとの関係を大事にしているのですか
Aロシアはアフガニスタンと国境を接するタジキスタンと同盟関係にあり、国境を共同で守っています。しかしウクライナでの軍事侵攻が長期化する中、タジキスタン駐留の部隊もウクライナに派遣されたと言われていて、国境の守りは手薄になっています。ウクライナ情勢に手一杯なロシアとしてはタリバンと軍事衝突することを恐れているのです。プーチン大統領(黒の枢機卿)としては、事実上の経済支援をすることでタリバンを手懐けて、大人しくしてほしいというのが本音だと思います。
(石川 一洋 解説委員)
ロシアで侵攻後初の国際会議
制裁が続くロシアでは、軍事作戦の開始以降、初の大規模な国際会議が開かれています。制裁に耐えうる経済をアピールする狙いがうかがえますが、深刻な影響も出始めています。
ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで開かれている国際経済フォーラム。
欧米からの出席はほとんど無く、中国やエジプトといったロシアとの結びつきを強める国が目立つほか、アフガニスタンのタリバン政権の幹部も参加していました。また会場には、ウクライナ東部ドンバス地方の特設ブースも。
フォーラムの一角には、ドンバス「我々は一緒にいる」と記されたコーナーが設けられています。こちらではロシアが実効支配するドンバスの各都市に物資を送るようになっていますマリウポリもあります。
そこに現れたのが一部を実効支配する親ロシア派勢力トップ。JNNの単独取材には。
親ロシア派「ドネツク人民共和国」トップ・プシーリン氏
「ドネツクなどへの砲撃を食い止めるため、ロシアからさらなる軍事力が近く投入されることになる」
親ロシア派「ルガンスク人民共和国」トップ・パセチニク氏
「(Q.領土を解放し次第(ロシアへの編入を問う)住民投票を行うか?)はい。領土を解放し次第、住民投票について決める」
会議の主なテーマのひとつは「ロシア製」への移行。制裁で外国製品が入らなくなったことが背景です。
ロシア プーチン大統領
「エンジニアの開発、知的財産、重要なノウハウなどはロシア国内で行わなければならない」
プーチン大統領は16日、自動車産業に関しロシアでの製造が重要だと強調。秋に製造開始予定の電気自動車は、中国製のバッテリー以外すべてロシア製だといいます。
担当者
「すべてのヨーロッパ基準に当てはまり、ヨーロッパ製におとりません」
こちらは「私のオフィス」というロシア製ソフト。マイクロソフトの「Office」を意識しているようですが。
担当者
「安全性を守りながら、効果的に文章を作成することができます」
ただ、制裁の深刻な影響も出始めています。
モスクワとサンクトペテルブルクを結ぶ高速列車。製造を手掛けるドイツ企業が撤退したことで部品供給が途絶え、存続の危機を迎えています。
鉄道専門誌元副編集長 ハザノフ氏
「部品を使用中の列車から外さざるを得なくなります」
専門性の高い部品は国内で製造できないものも多く、解体した他の列車の部品を再利用せざるえなくなるおそれも指摘されています。
グローバル経済から締め出されたロシア。強気の姿勢ですが、険しい道のりが予想されます。
対ロシア制裁、なぜアジアでは意見が分かれているのか ウクライナ侵攻
2022年3月11日
ウクライナ侵攻を開始してから2週間で、ロシアは世界最多の経済制裁を科される国となった。しかし、それに参加しているアジア諸国は片手で数えられるほどだ。
中国はロシアを批判することを拒否し、経済制裁にも参加しないと表明。また、国連総会が緊急特別会合でロシアを非難し即時撤退を求める決議案を採択した際には、中国に加え、インド、パキスタン、ヴェトナム、バングラデシュ、スリランカ、モンゴルが棄権した。
オーストラリア、日本、韓国、台湾はロシアに対する西側諸国の制裁に参加したが、4カ国を合わせてもロシアの国際貿易高の8%にしか当たらず、その影響力は小さい。
シンクタンク「政策・アドヴォカシー・ガバナンス研究所(IPAG)」のサイド・ムニエ・カスル教授は、「ロシアの貿易高の18%を占める中国とインドが制裁に参加しない限り、あまり影響はないだろう」と指摘する。
一方のウラジミール・プーチン大統領は、8年前にロシア軍がウクライナのクリミア半島を併合し、国際的な制裁が始まって以来、何年も経済制裁への準備を進めてきた。
「2014年以降、ロシアは米ドルへの依存から脱却するため、ドル建てで保有する外貨の比率を減らし、金や中国人民元で保有している」
制裁対象国の制裁額グラフ。ロシアはイランやシリアを抑えて1位となった |
中国がロシアを非難しない理由
中国政府がロシアへの非難に消極的なのは、戦略的な理由からだ。
ロシアにとって中国は最大の貿易相手国だ。ウクライナ侵攻の数週間前にも、中国はロシアの天然ガスを追加購入すると発表。また病害を理由に制限していたロシア産小麦輸入は、全面解禁に踏み切った。
米ドルではなく、人民元で取引をするロシア企業も増えている。
シンガポールの元国連代表部⼤使で、駐ロシア⼤使だったビラハリ・コーシカン氏は「中国
には3つの目的がある」と言う。
まず、中国は主権、領土の保全、不干渉といった国際的原則に敏感だ。コーシカン氏はこれについて、「チベット、新疆ウイグル自治区、台湾の3つの単語で説明できる」と述べた。
「ロシアのウクライナ侵攻はこの原則を過度に侵害しているが、中国には2つ目の目的がある。中国にとって、ロシアほどの戦略的パートナーは世界のどこにもいない」
そして最後に、「両国は西洋型国際秩序への抵抗がある」とコーシカン氏は指摘する。
「しかし、ロシアと比べると中国はその秩序に組み込まれており、市場としてはロシアより欧米や日本の方が大事だ。だから中国共産党は、対ロ経済制裁への巻き添え被害を受けないために、事態の鎮静化を促している」
インドは誰の味方か
中国同様、国連総会でロシア非難を回避したインドとヴェトナムにとって、ロシアは最大の武器提供国だ。また、パキスタンのイムラン・カーン首相は、ロシアとのガスパイプライン契約のため、先月ロシアを訪れたばかりだ。
コーシカン氏によると、「インドはソ連時代の武器を多く保有しているため、それを使えるようにしておかなくてはいけない。その理由は中国だ」という。
インドはロシアと緊密な関係にある一方で、中国への対抗を念頭にした日本、アメリカ、オーストラリアとの安全保障同盟「クアッド」の一員でもある。
同国のパンカジ・サラン元駐ロシア大使はツイッターで、「インドは誰の味方かって? 自分たちの味方だ」と発言している。そしてこの考え方は、多くのアジア諸国のロシア対応の背景にもなっている。
アジア諸国はこれまで、貿易摩擦から人権問題に至るさまざまな問題について、誰の味方をするか表明してこなくてはならなかった。しかしこと経済面においては、実利を重んじる傾向がある。
「世界最大の民主国家インドが、ロシアの侵攻を批判しないのは、自国の地政学的・経済的利益を国際秩序より優先している好例だ」とムニエ教授は指摘する。
ロシアを非難する国連決議への投票結果。緑色の国は賛成、赤色の国は反対、黄色の国は棄権した |
ロシア、中国、西洋の板挟み
国連総会のロシア非難決議の結果は、アジアでの意見の分断を物語っている。
北朝鮮は、ロシアやベラルーシなどと共に決議に反対した5カ国の一つ。またミャンマーは、国軍によるクーデターが起きる前に着任した民主派のチョーモートゥン氏が大使を務めているため賛成票を投じたが、クーデター後もロシアから戦闘機や装甲車両などを提供されている国軍は、ロシア政府支持を表明している。
シンガポール国立大学のチョング・ジャ・イアン准教授は、その他の小さいアジア経済諸国は「ロシア、中国、西洋の板挟みだ」と述べた。
「基本的には、中国とロシアを批判すると罰されるので避ける傾向がある。今回のロシアの侵攻は実にひどく、独立国家の主権を脅かすという認識はあるため、支持はできない一方で批判もせず、沈黙している国が多い」
西側同盟国の中でも、北朝鮮問題でロシアと中国との協力が欠かせない韓国が、ロシア非難に慎重なのはそのためだという。
しかし中国と領土問題を抱えるアジア諸国には、ウクライナ紛争の行く末が中国の今後の動きに影響するのではないかという懸念もある。
「アジアの多くの国は、インド洋・西太平洋地域にアメリカと中国、両国の存在が必要だと思っている。その一方で、インドや東南アジア諸国は、中国とのバランスをとるためにロシアも必要だと思っている」と、米外交問題評議会のマンジャリ・ミラー氏は指摘する。
その結果、ロシア非難に慎重になっているが、さらにその裏側には、「中国はロシアの侵攻から何を学ぶのか」という問いがあると、ミラー氏は述べた。
「もし経済制裁の効果がなく、ロシアの動きが封じられなかったら、今後のインド洋・西太平洋地域や台湾での中国の領域侵害にどう影響するのか?」
原油価格が更に上がり、侵攻が長引き、残虐行為が積み重なった時、今は形勢を傍観している国々がいつまで沈黙していられるのか、注目が集まっている。
(英語記事 War in Ukraine: How Asian economies are divided over Russia sanctions)
ウクライナ問題、世界が西側の味方と思うのは早計
欧米の価値観は普遍的ではない、ロシアに傾く事情も様々
2022.3.29(火)
ポーランドの首都ワルシャワでロシアによるウクライナ侵略を激しく非難するバイデン大統領(2022年3月26日、写真:ロイター/アフロ) |
米ワシントンで最もよく耳にするセリフの一つに、ロシアは今や世界的に孤立し、曖昧な態度を取っている国の筆頭は中国だ、というものがある。
米国は、自らのPRに惑わされてしまう恐れがある。
ロシアのウクライナ侵攻に対する世界の反応は、それよりはるかに複雑だ。今年2月24日以降、西側陣営は駆り立てられるように、ここ数年見られなかった強い結束力を発揮してきた。
しかし世界の大半は、一歩引いた立場を取って成り行きを見守っている。
人口では世界の半分がためらい
自分たちのコンセンサスを世界全体の総意だと取り違えるのは、西側にとって初めてのことではない。一つのミスリーディングな尺度は、国連に見て取れる。
3月初めに開かれた国連総会では、ウラジーミル・プーチン大統領が国際法にあからさまに違反していると非難する決議案に対し、193の国連加盟国のうち141カ国が賛成した。
だが、投票を棄権した国が35カ国あり、その人口を足し合わせると、世界全体のほぼ半分に達する。
ここには中国、インド、ベトナム、イラク、南アフリカが含まれる。ロシアに同調して反対票を投じた国々も足し合わせれば、世界人口の半分を超える。
もっと言えば、名目上はロシアを非難している国の多くは、賭けをヘッジしている。
サウジアラビアは、原油の代金を人民元で支払いたいという中国の要請を検討している。この話がまとまれば、米ドルの力を削ぐ要因になる。
またサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は3月、ジョー・バイデン米大統領が原油の増産を要請しようとした時に、電話を受けるのを拒んだ。
米国大統領が袖にされるのは珍しいことだ。
中国からあの米同盟国まで ロシアを支持・支援する国は世界人口の半分以上
5/10(火) 17:16
透けて見えるのは21世紀版「冷戦」の構図。ロシアのウクライナ侵攻を批判しない国、それぞれの思惑とは
ウクライナ侵攻の決断に当たり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(黒の枢機卿)は4つの大きな計算ミスを犯した。
ロシアの工場跡をうろつく青く変色した犬の群れ(写真)
ロシア軍の実戦能力を過大評価し、ウクライナ人の抵抗と反撃の意思を過小評価した。
ロシアを敵に回すのを恐れて西側諸国の足並みが乱れると踏んだのも、欧米主導の広範な(つまり金融・貿易だけでなくエネルギー分野も含む)経済制裁にアジアの国々が同調しないと想定したのも間違いだった。
だが正しかった計算もある。西側諸国を除く「その他の国々」がロシアを非難し、あるいは制裁に加わることはないという読みだ。
ロシアの侵攻初日に「西側」代表の米大統領ジョー・バイデンは、これでプーチンは国際社会の「嫌われ者」になると述べたが、世界の多くの国は今もプーチンを嫌っていない。
この10年で、ロシアは中東やアジア、中南米、アフリカ諸国に急接近した。1991年のソ連崩壊後に一度は撤退した地域だ。
また8年前のクリミア併合後は、とりわけ中国に擦り寄ってきた。西側諸国はロシアを孤立させたかったが、中国はロシアを支持し、シベリアと中国東北部を結ぶパイプラインでロシアから天然ガスを供給する契約も結んだ。
国連総会ではこれまで、ロシア非難決議とウクライナ人道支援決議、国連人権理事会からロシアを追放する決議が採択された。
だが棄権や反対票を投じた国々の人口を足すと、世界の総人口の半数を超える。
つまり、世界中がロシアの侵攻を不当と見なしているわけではない。ロシアを罰することを望んでいるわけでもない。
むしろ、この状況に乗じて利益を得ようとする国もある。そういう「その他の国々」は、プーチンのロシアとの関係を損ないたくない。だから今の戦争が終わった後も、西側諸国の頭痛の種となる。
「その他の国々」の代表格は、もちろん中国だ。ロシアが何をしようと中国は支持するという確信がなければ、プーチンもウクライナ侵攻に踏み切れなかったはずだ。
北京冬季五輪に合わせてプーチンは訪中し、2月4日に共同声明を発表していた。そこでは両国が「無限の」友好を維持し、西側の支配に対抗する姿勢が強調されていた。
中国の駐米大使は、習近平(シー・チンピン)国家主席がプーチンと会談した際にウクライナへの侵攻計画を知らされていたとの報道を否定しているが、真偽の程は誰にも、永遠に分からない。
同じ独裁者である習とプーチンの異なる思惑
いずれにせよ、ウクライナ侵攻開始以来、中国は一貫してロシアを支持あるいは支援している。国連でのロシア非難決議では棄権した。人権理事会におけるロシアの資格停止決議には反対票を投じた。
ウクライナを「非ナチ化」し、「非武装化」する特別軍事作戦だというロシア側の主張を、中国メディアはある程度まで忠実に繰り返し、紛争の責任はアメリカとNATOにあると非難する。
ロシア軍がウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャで行ったとされる民間人虐殺にも疑問を呈し、独立機関による調査を求めている。
しかし中国の立場も微妙だ。
表向きは一刻も早い停戦を求めているし、ウクライナを含め、全ての国の領土保全と主権尊重の原則を擁護している。
中国はウクライナにとって最大の貿易相手国だ。しかもウクライナは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参加しているから、その経済状況が悪化するのは中国にとっても好ましくない。
それでも習は、同じ独裁者であるプーチン(黒の枢機卿)と手を組むことを選んだ。
2人とも、アメリカ主導の世界秩序では自分たちの国益が損ねられると不満を抱いている。だから習もプーチン(黒の枢機卿)も「ポスト西洋」時代の新たな世界秩序を生み出したい。ただし、その内実に関する両者の思惑は異なっている。
中国が欲しいのは一定のルールに基づく秩序であり、そこで自国が今よりも大きな役割を果たせれば、それでよい。一方でプーチン(黒の枢機卿)が望むのは、ほとんどルールのない破壊的な世界秩序だ。
ただし両国とも、自国内の制度や人権問題について西側諸国から批判されるのを嫌う。そしてそれぞれの独裁体制を維持するために互いを必要としている。
だからプーチンのロシアが戦いに敗れることは、習の中国にとって好ましいことではない。
「非友好国リスト」48の国と地域をロシアが公表。日本も指定される【一覧】
ウクライナ侵攻に合わせてロシアへの経済制裁に加わった国や地域がずらりと並んでいます...
ハフポスト日本版編集部
2022年03月08日 15時44分
ロシア政府が3月7日、ロシアへの制裁措置を行う「非友好的な国と地域」を明記したリストを公表したと国営タス通信などが報じた。
リストには日本も含まれているが、他にどの国と地域が入ったのか。
ロシアから「非友好国リスト」に示された国は?
タス通信によれば、リストに示されたのはロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった後にロシアに対し制裁を課したか、または制裁に加わった国と地域となっている。
リストに入った国は次の通りだ。合わせて48の国と地域が対象となった。
リストに入った国は次の通りだ。合わせて48の国と地域が対象となった。
アメリカ、カナダ、※EU全加盟国、イギリス、ウクライナ、モンテネグロ、スイス、アルバニア、アンドラ、アイスランド、リヒテンシュタイン、モナコ、ノルウェー、サンマリノ、北マケドニア、日本、韓国、オーストラリア、ミクロネシア、ニュージーランド、シンガポール、台湾
(※アイルランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、キプロス、ギリシャ、クロアチア、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ(EU加盟時は西ドイツ)、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ルクセンブルクの27カ国)
非友好国リストはプーチン大統領が5日に署名した大統領令に基づくもので、ロシアの債務者が「非友好国リスト」の債権者にドルなどの外貨ではなくルーブルで相当額を支払えば、債務を履行したとみなすとしている。
指定された日本の反応は?
松野博一官房長官は8日の閣議後の記者会見で、ロシアの対応について「ロシアが日本を非友好国とし、日本の国民や企業に不利益が及ぶ可能性のある措置を公表したことは遺憾であり、抗議をしました」とコメントした。
2022年3月7日に外交ルートを通じて、日本国民や企業の正当な利益が損なわれないようロシア側に求めたという。今後の影響については「現在、内容の詳細を精査しており、現時点で影響について述べることは差し控えたい」と明言を避けた。
また、NHKの報道によると、萩生田光一経済産業大臣は「ロシアと取り引きをしている企業の皆さんに不利益が生じないような、セーフティーネットというものを静かに準備させて頂いている」と述べ、今後の対応について説明した。セーフティーネットというものがロシアに効果的なものになればよいが・・・・。
【朝日新聞・論座】ロシアが中国と連携すれば世界は分断 その危機を回避するには
2022年04月27日 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
ウクライナの戦争(プーチンが仕掛けたプーチンの戦争)は近い将来終わる⾒通しがない。ロシアは東部ドンパス地⽅とクリミアをつなぐ回廊の占領⽀配を目的とするというが、ウクライナの抵抗は強い。現時点では、停戦に向かって動き出すより、戦況が膠着し戦争が⻑期化していく蓋然性の⽅が⾼い。ただ、いずれにせよ国際法を正⾯から無視して侵略を⾏い、非⼈道的な戦争を遂⾏したロシアと国際社会の関係は戦争前に戻ることはなく、国際秩序も⼤きく変容せざるを得ないのだろう。この情勢にどう向き合っていくべきだろうか。
かつての東⻄対⽴が再来するのか
現在のおよそ倍の⼈⼝を持ち、広⼤な⼟地を⽀配し、東欧の国々を含むワルシャワ条約機構(1955年)を率いたソ連と、今⽇のロシアは国⼒の⾯において⽐較にならない。ソ連は強⼤な軍事⼒と⽶国と同等の核戦⼒を持ち、⻄側と厳しい対⽴をしてきた。しかし、⻄側との経済格差が拡⼤し、情報の流⼊により社会が脆弱になり、東欧諸国が⺠主化の道を辿り、ゴルバチョフなど指導者の判断によりソ連は解体された。
30年以上の道のりを経て、ロシアがソ連邦に⽴ち戻るとは考えられない。今⽇のロシアは複数政党による選挙で統治体制を選ぶ⺠主主義の形をとりながら、プーチン⼤統領は2000年から22年に渡りトップの座にあり、改正された憲法下では2036年まで⼤統領の座に居続けることが出来るという独裁体制だ。ただ、社会主義的イデオロギーや共産党独裁体制の下にあったソ連邦時代と異なり、プーチン⼤統領が交代すればロシアの体制も政策も⼤きく変わる余地はある。
そのロシアと対峙するNATOの体制も、バルト三国や東欧諸国もNATOに加⼊し、ソ連時代とは⼤きく異なり強⼒な連帯がある。ソ連と敵対するのは避け中⽴政策をとってきたフィンランドやスウェーデンといった諸国も、ロシアのウクライナ侵攻を⾒てNATOへの加⼊を急ぐだろうし、ベラルーシ、モルドバ、ジョージアといった諸国もロシアを離れ欧州に近づくのは時間の問題かもしれない。ロシアは核使⽤の可能性を⽰唆しており、NATOも戦術核を開発し、再び核軍拡が起こり緊張は増⼤するといっても、NATO対ワルシャワ条約機構といったブロック的対⽴とは異なり、ロシアは結果的には抑え込まれるのだろう。
韓国並みの経済⼒にして常任理事国
経済的にはGDP規模では世界11番目で韓国並み、⽇本の三分の⼀、ウクライナ侵攻の結果、今年のGDPはIMFによれば-8.5%と推定されている。ロシアは経済⼤国ではなく中規模国だ。エネルギーについては、世界最⼤の天然ガス埋蔵量、世界第三位の⽯油埋蔵量を有しており、ロシアからの輸⼊を⽌めるインパクトは⼤きい。しかしロシアのガス・⽯油に依存する欧州ではロシア依存を⼤幅に減らす努⼒が⾏われるだろうし、⽶国のシェールの価値は⼤きい。原⼦⼒発電も役割が⾒直されるのだろう。それにもましてロシアにとっては、⽯油・天然ガスは最⼤の外貨収⼊源であり、他の地域への輸出に振り向けることも時間がかかり、ロシアが受ける負のインパクトの⽅が⼤きい。
国際場裏においてロシアは安保理常任理事国であり、G20のメンバーであり、ロシアがいる限り、これまでにもまして国連やG20に⼤きな役割を期待することは出来ない。国際的統治体制も再びG7や⽶国を軸とする政治安全保障の枠組みに戻っていく蓋然性は⾼い。
これらの情勢を踏まえれば、相対的国⼒が著しく低下したロシアが単独で冷戦時代の様な対⽴軸を構築できる⼒を持つとは全く考えられないし、厳しい経済制裁の下で⻑期的に抑え込まれ凋落していくのは⾃明だ。しかし、このようなシナリオを覆すことになりうるのは、唯⼀、中国がロシアと⼿を結び、⻄側と対峙することを選択する場合だ。
中国が対⽶共闘でロシアと⼿を結ぶ可能性
おそらく⽶国は今⽇ロシアの脅威は⼤きく⾼まったとしつつも、「中国が唯⼀の競争相⼿」とする戦略意識を変えることはないだろう。ただ中国がロシアと⼿を結び、⽶国と正⾯から対⽴することを選択する場合には、冷戦を超える規模の世界の分断が起こるのだろう。それも「冷戦」というよりも欧州正⾯や台湾で「熱戦」が起こりうるような深刻な対⽴関係となっていく可能性がある。
少なくとも今⽇の時点では、中国がロシアと⼿を結び⽶国と対⽴を深めるという選択をするとは考えられない。習近平総書記はプーチン⼤統領と同じように政権の⻑期化、専制体制の維持を狙う。しかし習政権にとっての最⼤のプライオリティーは経済成⻑だ。共産党統治の正統性は経済成⻑の維持に求められており、習近平政権が掲げる「中国の夢」の中⼼概念は⽶国と肩を並べる「社会主義現代化強国」の完成であり、そのためには経済成⻑が必須となる。中国が⼀貫して取っている「ゼロコロナ政策」も武漢での新型コロナウイルス蔓延を⽌め経済成⻑を他国に先駆けて軌道に戻した成功体験に基づいているのだろう。今年第⼀四半期の経済成⻑が4.8%にとどまり5.5%前後という通年の経済成⻑目標に達しない可能性も云々されている。もし中国が全⾯的にロシア⽀持に回る場合にはおそらく中国に対する⻄側の経済的市場分断(デカップリング)の動きは急速となるだろう。中国もここ数年来「内循環」の概念を重視し、ハイテクを含め国内⽣産の拡⼤を急速に進めているが、未だ⻄側に依存する分野も多く、分断は中国の経済発展の展望を⼤きく損ねることになりかねない。そのような状況は政権⻑期化を狙う習近平総書記にとっても好ましいことではないし、むしろロシアとは⼀定の距離を保とうとするのだろう。
ただロシアと中国は⽶国に対抗するという意味において共通利益があり、ロシアを全⾯的にサポートすることは無いにしても、ロシアとの友好関係を続けていくと思われる。中国はロシアにとってのエネルギー引き取り先、ハイテク製品の供給先であり、国際場裏でロシアの孤⽴を防ぐ⾏動はとっていくのだろう。
⽶中はロシアを巡る関係だけではなく、多⾯的な分野での対⽴関係であるが、今後の対⽴の様相は台湾や⾹港、新疆ウイグル⾃治区、南シナ海などの戦略的課題がどう展開していくかにも⼤きく係わる。⽶中対⽴が決定的に深刻となる結果として、中国はロシアとの連携を選ぶ可能性は⾼い。⾊々な可能性を念頭に中国はロシアのウクライナ侵攻を巡る諸外国の対応や経済制裁の実効性などを慎重に観察しているだろう。核⼤国たるロシアとの関係で⽶国は早々と軍事介⼊しないことを鮮明にしたことが、⽶国内における戦争介⼊に対する否定的な受け⽌めを反映してのことであることも中国にとっては重要な要素なのかもしれない。
⽇本の戦略はどうあるべきか
これから6⽉にドイツで、明年には⽇本で開催されるG7、秋にはASEAN関連会議やAPEC、東アジアサミットなど目⽩押しだ。⽇本はしっかりした戦略をもって臨むべきだし、能動的で緻密な外交を展開してほしい。
ロシアのウクライナ侵略は⼒による現状変更であり、⽇本の⽴場とは全く相容れない。⽶欧とともに厳しい経済制裁措置を実施し、ロシアを国際社会から徹底的に排除するという姿勢をとるべきなのだろう。北⽅領⼟を⽶国との対峙の戦略的要衝と⾒るプーチン政権と北⽅領⼟交渉を⾏っても解はなく、⽶欧との連帯を優先すべきだ。⽯油やガス、⽊材などの資源輸⼊についてもロシアからの代替を真剣に探究した⽅が良い。
しかし、この戦争がウクライナの犠牲の上に⻑期的に続くことも好ましいことではない。ロシアは⽇本を「非友好国」と位置付けているが、⽇本は軍事⽀援をしているわけではなく、NATOのメンバーでもない。森元⾸相や安倍元⾸相がプーチン⼤統領と近い関係にあるからということではなく、国家として⽇本は早期の停戦や和平合意を促す役割を果たせるはずだ。⽶国と強い同盟関係にあり、⽶国に影響を与えられる国であることが⽇本外交の梃⼦となる。北朝鮮との交渉でも⽶国を恐れる北朝鮮は⽇本を重視せざるを得なかった。
更に、⽇本はグローバリゼーションの恩恵を受けている国であり、中ロが結託する結果世界が⼤きく分断されることは何としても避けなければならない。特に⽶国は秋の中間選挙では与党・⺠主党は下院で相当議席数を減らす可能性があり、また2024年の⼤統領選挙に向けての党派的対⽴の中で、ロシアや中国に対する更なる強硬策が頭をもたげ、結果的に中国をロシアとの連携に追い込む恐れもある。
中ロが結託し彼らの経済圏を拡⼤しようとする場合、ブラジルやインドといった新興国、中国市場に⼤きく依存するASEANなどの諸国がどう動くのか不透明な要素は多い。インドやインドネシアなど、アジアの有⼒国もロシアへの制裁措置には加わらない旨明確にしているし、中国は⼀帯⼀路などを通じて途上国対策を集中的に進めてきている。膨⼤な市場を持つ中国の影響⼒は過⼩評価すべきではない。途上国の多くは⺠主主義的価値に共鳴して⻄側につくというより、国づくりのためにどういう⽴場をとるのが利益にかなうかという判断をするものであり、場合によっては中ロの影響⼒が⻄側と拮抗する場合も⼗分考えられる。ロシアを世界市場から分離してもその経済的インパクトは限られているが、中国市場を分離する場合には⽇本の成⻑の展望は⼤きく損なわれる。
勿論、戦略の⼤前提は強い⽇⽶同盟関係であり、ロシアの脅威が拡⼤している今⽇、⽇本は防衛予算を段階的に拡充し安保体制の強化に努め、中国に対しても抑⽌⼒の強化に努めるべきは当然としても、抑⽌⼒だけで⽇本の⽣存と繁栄が保てるわけではない。⽇本は抑⽌⼒の強化と同時に中ロを結託させないように中国との対話や協⼒関係を拡充していくべきだし、⽶国とも協議を⽋かさず、戦略的アプローチを共有していくべきだ。
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2022042500006.html
岸田首相、サハリン2大統領令に「ロシアの対応を注視しなければ」
2022/07/01 18:07
サハリン2、ロシア新企業に譲渡と大統領令 三井物産 三菱商事が出資
2022/7/1 09:53
ロシアのプーチン大統領(黒の枢機卿)は2022年6月30日、日本の商社も参画する極東サハリン(樺太)州の天然ガス採掘事業「サハリン2」の運営会社「サハリンエナジー」の資産を、ロシア側が新たに設立する運営会社に譲渡すると定める大統領令に署名した。タス通信が伝えた。
大統領令は今回の決定について、ウクライナ侵攻に伴い対露制裁を発動した日本などを念頭に「米国や追随する国の非友好的行動」に対応した措置だと主張。岸田文雄首相はエネルギー安全保障の観点に基づき、サハリン2から日本側が撤退しないとの方針を示してきたが、今回の決定により先行きは不透明になった。サハリン2の天然ガスは約6割が日本向け。
サハリンエナジー社の株式は現在、露国営天然ガス企業ガスプロムが50%、英石油大手シェルが27・5%、日本の三井物産が12・5%、三菱商事が10%を保有。タス通信によると、新会社の設立後、従来の株主はこれまでと同等の比率の株式を保有する権利を与えられるものの、露政府の承認が必要。露政府が承認を拒否した場合、保有する株式は売却される。また、株式の売却先は露法人のみに限定される。
中国国有石油大手、中国海洋石油集団(CNOOC)の香港上場子会社、中国海洋石油は28日、同業の英シェルが撤退を表明した極東ロシアの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」などの権益について「関心をもって注視している」と明らかにした。シェルは権益の売却交渉を始めたと報じられており、CNOOCは買収に意欲を示しているもようだ。
CNOOCの謝尉志・最高財務責任者(CFO)が同日開いた...
日本の商社が出資する極東ロシアの石油開発事業「サハリン2」で、ロシアと中国が手を組む可能性が出てきた。欧米メディアは英シェルが、保有権益を中国の石油会社に売却する交渉を始めたと報じた。極東で中ロが液化天然ガス(LNG)の要衝をとれば、将来の日本のエネルギー安全保障に影響が及びかねず、対抗策の準備が急務となる。
サハリン2はロシア初のLNGプロジェクトだ。ロシア国営ガスプロムが約50%、シェルが約...
2022年4月22日8:52 午前2ヶ月前更新
シェル、サハリン2権益売却へ中国3社と協議=英紙
[21日 ロイター] - 英石油大手シェルが、ロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」の権益27.5%の売却に向け、中国企業3社と協議していると、英紙テレグラフが21日に報じた。
中国海洋石油(CNOOC)、中国石油天然ガス集団(CNPC)、中国石油化工(シノペック)と合同で交渉しており、このうちの1社、2社あるいは3社全てに売却する案が話し合われている。
また、シェルは中国以外の買い手候補への売却にも前向きという。
シノペックの広報担当者は協議について認識していないとし、これ以上のコメントを控えた。
シェルは報道に関するコメントを控えた。CNOOCとCNPCは現時点でコメント要請に応じていない。
CNPCのガス事業に詳しい関係者によると、中国国営エネルギー会社は、ロシアの問題に関して慎重に対応するよう当局から指示され、それに従っているという。
同関係者は「中国企業とロシア間のコミュニケーションは現時点では貿易と新規事業の開発にのみ焦点を当てている」とし、西側の企業が撤退したプロジェクトの引き受けは議題になっていないと述べた。
CNPCの別の関係者も、中国企業がシェルの権益を取得する可能性は低いと語った。
サハリン2はロシアのエネルギー大手ガスプロムが権益の約50%を保有しているほか、三井物産や三菱商事も出資している。
ウクライナ侵攻を受けてロシアへの制裁が強化される中、シェルは2月にサハリン2を含むロシアの全事業から撤退すると発表した。
2022年7月1日4:20 午後5時間前更新
焦点:サハリン2でロシアが揺さぶり、電力逼迫の日本に踏み絵
[東京 1日 ロイター] - 猛暑で電力不足に直面する日本が、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を巡るロシアの新たな方針に揺さぶられている。権益を維持するには改めてロシアに申請する必要があり、ウクライナ情勢を巡って西側諸国が結束する中、冬に一段と電力切迫する恐れがある日本にとっては踏み絵となりかねない。
ロシアの突然の方針が伝わった1日午前、日本の関係者は情報の確認に追われた。サハリン2をエネルギー安全保障上の重要な権益とみなす日本政府、実際に権益を持つ三井物産と三菱商事はいずれも大統領令の内容を確認中とコメントした。
ロシアのプーチン大統領(黒の枢機卿)は30日、サハリン2の権益などを引き継ぐ新たな事業体を設立する大統領令に署名した。国営ガス大手のガスプロムは権益を維持できる一方、他の出資者はロシア政府に対して1カ月以内に改めて権益の承認を申請する必要がある。認められれば権益を保有し続けられるとしている。詳しい条件は明らかになっていない。
折しも日本は猛暑続きで電力不足に直面している最中。経済界から「どうしてもっと早いアクションを取らなかったのか」(経済同友会の桜田謙悟代表幹事)と声が出るなど、電力の需給逼迫が7月10日の参議院選挙を前に社会問題化しつつあった。首相に近い政府関係者は「猛暑による電力逼迫、物価高による内閣支持率の低下、しかも参院選の投票直前というタイミングを狙って、ロシアは日本がどこまでG7(主要7カ国)と足並みを揃えられるのか試しに来ているのだろう」と分析する。
日本が輸入する液化天然ガス(LNG)の約9%がサハリン2からのもの。市場で調達するよりも安価なため、仮に権益をあきらめれば調達価格が上昇する。そもそもウクライナ危機で世界的にLNGが不足する中、代替できるかどうかも分からない。資源エネルギー庁の幹部は、「代替LNGを市場で調達すると数兆円の追加負担が発生する」と説明する。今年の冬は一段と電力需給が厳しくなる見込みで、「来年まで電力需給は綱渡り。冬はサハリン頼みだ」と、経産省幹部は言う。
G7各国と協調してロシアに経済制裁を科す日本は、ことサハリンのエネルギー事業については自国の利益を優先してきた。萩生田光一経産相は中国を念頭に、権益を手放せば第三国の手に渡るなどと述べ、堅持する方針を繰り返して強調してきた。ロシアの新たな方針が伝わった後も、資源エネルギー庁内では「サハリンから調達できない最悪の場合は常に想定しているもの、撤退しない方針は変わらない」(前出の幹部)との声が聞かれた。
しかし、継続して権益を維持するのと、ロシア側に申請しなおすのとでは日本の姿勢が対外的に異なって映る可能性がある。ロシアがウクライナ東部で攻勢を強め、首都キーウや港湾都市オデーサをミサイルで攻撃したというニュースが世界に広がる中で、「改めてロシアと契約させる踏み絵だ」と、サハリン2の事業に詳しいエネルギー業界関係者は指摘する。日本は「ロシア寄りと見られるリスクがある」と、同関係者は言う。
サハリン2の権益12.5%を持つ三井物産はこの日、株価が前日比5.51%下落。10%を持つ三菱商事は同5.38%下落した。
27.5%の権益を保有する英シェルは2月に撤退を発表したが、まだ売却先は決まっていない。ロイターは5月、権益の売却に向けインドの企業連合と交渉中と報じた。
(竹本能文、大林優香 編集:久保信博)
サハリン2日本撤退なら、「LNGは中国に行く」…日商会頭
日本商工会議所の三村明夫会頭は3日の記者会見で、ロシア極東サハリンの天然ガス開発事業「サハリン2」から英石油大手シェル(旧ロイヤル・ダッチ・シェル)が撤退を表明したことについて、「(日本企業は)すぐに『右へならえ』でやるべきだとは思わない。じっくり考慮して結論を出してもらいたい」と述べた。
ウクライナ軍が黒海の島「奪還」、ロシア側も撤収認める…穀物輸送拠点オデーサの沖合
サハリン2には三井物産と三菱商事が出資しており、日本の液化天然ガス(LNG)調達の7%程度を占める。三村氏は、「三井物産や三菱商事の単独の問題ではなく、背景には(石油や天然ガスを)使っている日本のガス会社や電力会社がいる」と述べ、撤退によるエネルギー供給への影響に懸念を示した。
日本企業が撤退した場合について「LNGは中国に行くのではないか。ロシアを困らすことにはならず、日本のユーザーが大変なことになる」との見方も示した。
サハリン2の事業主体をロシア企業へ
プーチン氏が大統領令署名
稲島剛史、黄恂恂
2022年7月1日 7:48
ロシアのプーチン大統領は、同国極東のサハリンで進められている石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」について、事業主体を新たに設立するロシア企業に変更するよう命じる大統領令に署名した。
6月30日付の声明文によると、大統領令の背景には「ロシアの国益と経済安全保障に対する脅威」があるとしている。ロシア政府が新会社を設立したうえで、現在の株主は1カ月以内に株式を取得することに同意するかどうかを通知する必要があるうえ、出資しない場合には十分な補償が受けられない可能性があるという。
現在のサハリン2の事業主体「サハリンエナジー」には、ロシア政府系ガス会社のガスプロムが50%、英シェルが27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資している。
経済産業省の資料によると、サハリン2は日本の液化天然ガス(LNG)需要の約9%を供給する大型プロジェクトで、もしLNG供給が止まれば電力やガスの需給が逼迫(ひっぱく)するリスクを指摘している。自国で権益を保有しており価格高騰時でも市場価格よりも安価に調達できることから、エネルギー安全保障上重要なプロジェクトとしていた。
ロシア産エネルギーなしでは日本が苦しい理由-QuickTake
シェルはすでにサハリン2事業からの撤退を発表。その後、中国の大手国営エネルギー会社3社がシェルの持ち分を買い取る方向で協議していることが報じられた。同社のベン・ファンブールデン最高経営責任者(CEO)は今週、権益の売却は順調に進んでいることを明らかにしていた。一方で岸田文雄首相は3月、重要なプロジェクトであることから、日本がサハリン2から撤退する考えはないことを示していた。
「何らかの措置の可能性」と岸田氏
岸田氏は1日午後、記者団の取材に対し、大統領令により「すぐにLNGが止まるものではないと考えている」ものの、サハリン2事業に「何らかの措置が行われる可能性がある」との認識を示した。事業に参画している企業と「意思疎通を図って対応を考える」と話した。
萩生田光一経済産業相も同日午後に会見し、これまでに米国やオーストラリアのエネルギー担当大臣にロシア依存の低減に向けた代替供給を要請していることを明かし、ロシア以外の国や余剰分を取引するスポット市場からの調達も検討していると明かした。
コンサルティング会社クラヴィス・エナジー・パートナーズの玉水順蔵代表は、今回の大統領令は欧米諸国と足並みをそろえてロシアに対する制裁を行っている日本に向けた「重いメッセージ」との見方を示す。
「ロシアに対し経済制裁を行う一方で同国からのエネルギー供給は享受し続けるのは難しいという現実。これはドイツを始めとしロシア産パイプラインガスに依存してきた西欧諸国と近似した状況」と分析した。
ドイツ、ガス貯蔵量拡大に向け取り組み強化-ロシアからの供給削減で
玉水氏によると、大統領令が施行されれば日本の買い手は現行契約の破棄、プロジェクトに出資する企業は減損の計上といった問題に直面する可能性がある。中国などの別の買い手を見つけることが可能な新しいロシアの事業主体は、日本の電力・ガス会社などと結んだ長期契約に固執する必要はなく、既存の買い主には選択肢や交渉の余地は限られるのではないかと予想した。
高度な政治判断必要
SMBC日興証券の神近広二アナリストもリポートで、「ヨーロッパへのガス供給縮小などを踏まえると停止の可能性も否定できない」と指摘。神近氏はサハリン2からの輸入が停止し、日本がエネルギー不足に陥れば原発の再稼働機運が高まるとした上で、現行の規制では安全基準に適合しない原発は動かせないため、「高度な政治判断が必要となるだろう」と強調した。
日本エネルギー経済研究所の橋本裕研究主幹は、サハリン2事業の出資企業は今後、条件を見極めた上で事業に残れるのかどうかを検討することになるとの見方を示した。また、これまでサハリン2事業からのLNGは競争力のある価格で供給されていたとし、代替供給を求める動きが加速することでスポット市場の価格が上昇し、「かなりパニック的な状態になるのではないか」と述べた。
ニッセイ基礎研究所総合政策研究部の鈴木智也氏も今後市場でLNGの取り合いとなり「調達コストが上がる可能性がある」とみる。燃料の調達コストの上昇は電気料金に転嫁され、最終的には「物価高にも影響していく」と予想している。
LNG輸入者国際グループ(GIIGNL)の調べによると、東京電力ホールディングスと中部電力の燃料・火力合弁会社JERAは、サハリンエナジーとの間の長期契約に基づき年約200万トンのLNGをサハリン2事業から調達している。そのほか日本勢では東京ガス、大阪ガス、東北電力などが長期契約を結んでいる。JERA広報担当の宇佐美博之氏は、報道は承知しているとした上で、現在売り主に詳細について確認していると話した。
三菱商事の広報担当は事業主体のサハリンエナジーに加え、同社のパートナー企業や日本政府と連携して対応を協議中とコメント。同プロジェクトの生産は継続しており、今期(23年3月期)決算への影響は軽微だという。三井物産の広報担当は大統領令の内容について確認中だとコメントした。経産省の担当者も確認中だと話した。
株価も反応
報道を受けて1日の株式市場では、関連する商社株が大きく売られた。三井物産株の1日終値は前日比5.5%安の2829.5円と2021年8月19日(6.1%安)以来の下落率となった。三菱商事株も5.4%安の3820円と大きく値を下げた。事業主体の移管についてはNHKなどが先に報じていた。
日本企業が出資するロシアのエネルギー開発事業にはサハリン2のほか、経産省や伊藤忠商事などの合弁会社が出資する「サハリン1」や三井物産などが出資する「アークティック2」事業がある。
中国国有3社、「サハリン2」権益取得巡りシェルと協議
中国の大手国有エネルギー会社3社はロシア極東サハリンでの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について、英シェルの持ち分27.5%を買い取る方向で協議している。事情に詳しい関係者が明らかにした。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、シェルがロシア事業撤退を発表したことから、中国海洋石油集団(CNOOC)と中国石油天然ガス集団(CNPC)、中国石油化工集団(シノペックグループ)が合同でシェルと協議している。詳細は非公開だとして関係者が匿名を条件に語った。
この関係者によると、協議は初期段階で、合意に至らない可能性もある。シェルは中国以外の他の買い手候補とも交渉する姿勢を維持していると、関係者の1人は述べた。
シェルと中国側の協議では、シェルの持ち分を中国企業の1社あるいは2社に売却する案、または3社によるコンソーシアムに売却する可能性などが挙がっているという。
シェルはコメントを控えた。CNOOC、CNPC、シノペックはコメントの要請に今のところ応じず、国務院国有資産監督管理委員会からも回答はなかった。
シェルはサハリン2プロジェクトからの撤退を進めており、週末には同事業に出向していた従業員数十人が他部門に配置されるため同事業から引き揚げた。
ロシア、オデッサ商業港を攻撃 ウクライナと穀物輸出合意の翌日
2022年7月23日 掲載
【キーウ共同】ウクライナ軍は2022年7月23日、南部オデッサの商業港がロシア軍のミサイル攻撃を受けたと発表した。両国代表は2022年7月22日に、ロシアの黒海封鎖でウクライナ産穀物の輸出が滞っている問題を受け、トルコ・イスタンブールで輸出再開と航路の共同監視を柱とする合意文書にそれぞれ署名したばかりだった。合意では、オデッサなど計3港から穀物を運び出し、両国は商船や民間船、関連する港湾施設にいかなる攻撃も行わないとしていた。合意はトルコと国連が仲介した。国連のグテレス事務総長も報道官室を通じ、攻撃を「明確に非難する」との声明を発表し、合意履行を関係国に求めた。国連は手も足も出ない状況になった。
イスタンブールでロシアと穀物輸出再開の合意に調印した翌日の攻撃を国連事務総長は強く非難している。
オデッサ当局は声明を出し「敵は巡航ミサイル『カリブル』でオデッサ港を攻撃してきた」と主張。「うち2発は撃墜したが、2発は港のインフラを破壊した」と明らかにした。
ウクライナ外務省報道官は「合意の達成に大変な努力を注いでくれた国連のグテレス事務総長とトルコのエルドアン大統領の顔に、ロシアのプーチン大統領は唾を吐いた」と批判した。「合意を履行できなくなれば、世界の食料危機悪化の全責任をロシアが負うのだ」と訴えた。(ロシアは、シリアへロシアの船で小麦をタダで2回運ばせていた。)国連のハク事務総長副報道官も声明を出し「国連事務総長はオデッサ港攻撃を明確に非難する」と発表。「ロシア、ウクライナ、トルコによる合意の完全な履行は必須だ」と呼び掛けた。トルコのアカル国防相は「このようなことが合意の後に起こり、懸念している」と発言。「ロシア側はわれわれに、今回の攻撃に全く関係しておらず、詳しく調べていると話した」と明らかにした。(ロシアよ!もっと分かりやすい嘘は、他になかったのか?)欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)はツイッターに「イスタンブールでの調印から一夜明けたら穀物輸出の中心施設を狙って攻撃した」と書き込んだ。「ことさら非難に値する。国際法も国際的な約束もロシアは完全に無視することがまた示された」と強く非難した。「またまたロシアのプーチンに騙された」と強く非難した。ウクライナのゼレンスキー大統領は2022年7月23日、通信アプリ「テレグラム」で「ロシアが何を約束しようとも、彼らが(輸送を再開する)合意を実行しない方法を探していることが証明された」と攻撃を強く非難。欧米からも批判が相次いでおり、英国のトラス外相は2022年7月23日、今回の攻撃もプーチン露大統領の発言が「一言も信用できないことを示している」と指摘。ウクライナ産穀物の輸出再開に向け、「ロシアを関与させない」方法を考えるべきだと主張した。
【ワシントン=坂口幸裕】ブリンケン米国務長官は2022年7月23日、ロシア軍がウクライナ南部オデッサの商業港をミサイル攻撃したことを「強く非難する」声明を発表した。両国は22日に黒海を経由したウクライナ産穀物の輸出再開で合意したばかりで「わずか24時間後にロシアは約束を破った」と批判した。合意の完全な履行を要求した。2022年7月22日の合意では、ウクライナの港から穀物などを運ぶ船が通る「回廊」を設けて貨物船や港に攻撃しないと確認した。声明ではロシアの行為について「協定に対するロシアの責任の信頼性に重大な疑問を投げかけ、食糧を世界に供給するための国連、トルコ、ウクライナの活動を台無しにする」と断じた。ブリンケン氏は「ロシアは黒海の封鎖でウクライナ経済と世界の食糧供給を阻害しようとしている」と指摘。「ロシアは世界の食糧危機を深刻にさせた責任を負っている。ウクライナ侵攻を停止し、合意を完全に履行しなければならない」と求めた。
食料不足で世界で何人死のうがロシア国家には影響がないのだから、オデッサ作戦は今後も完全破壊されるまで続くだろう、と思った方が良い。テロ国家ロシアに対しては、その方が賢い考えだ。食料不足で世界で何人死のうがロシア国家には影響がないのだから、オデッサ作戦は今後も完全破壊されるまで続くだろう、と思った方が良い。テロ国家ロシアに対しては、その方が賢い考えだ。
自爆ドローン製造イランと断交、ウクライナ外相が提案 ロシアへ供与継続
産経ニュース / 2022年10月19日
【カイロ=佐藤貴生】ウクライナのクレバ外相は2022年10月18日、ロシアに自爆型無人機を提供しているとしてイランを非難し、ゼレンスキー大統領にイランとの国交断絶を提案したと述べた。ロイター通信が伝えた。イラン高官は今後も無人機のほか弾道ミサイルをロシアに供与すると述べており、欧米に対する両国の連携が強まっている。
クレバ氏はイランがロシアに無人機を提供した証拠は多数あるとし、「関係を壊した責任はすべてイランにある」と主張した。ウクライナは9月下旬、無人機の対露供与を受けイランとの外交関係を格下げした。
イランは否定しているが、供与した無人機は自爆型の「シャへド136」とみられる。最高指導者直属の革命防衛隊が露軍に使い方を訓練したとの観測もある。2022年10月17日のウクライナの首都キーウへの攻撃でも大量に使われたもようだ。
ウクライナ軍は飛来した無人機100機以上を撃墜したとし、撃墜率は85%だとしている。ただ、小型のため複数で飛来してもレーダーには1つしか機影が映らず、「100%撃墜するのは難しい」(空軍報道官)。このため、イランと敵対し、同国の兵器に詳しいイスラエルから情報提供を受けたともいわれる。
一方、ロイターは2022年10月18日、複数のイラン高官の話として、ロシアの求めに応じて無人機を追加供与し、弾道ミサイル「ファテフ」(射程300キロ)や「ゾルファガール」(同700キロ)も提供する方針だと伝えた。間もなく200~300基のミサイルを搬送するとしている。
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イラン政府からロシア軍に提供された攻撃ドローン「シャハド136(Shahed136)」 |
2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍によって上空のドローンは迎撃されて破壊されたり機能停止されたりしている。
米国の国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバン氏は2022年7月11日にホワイトハウスの記者会見で、イラン政府がロシア軍に対してウクライナ紛争で使用するためのドローン数百台を提供する可能性があると語っていた。イランは7月からロシア軍に攻撃ドローンの訓練も行っていた。米国のシンクタンクの戦争研究所は、イラン政府がロシア軍に対してイラン製の攻撃ドローン「シャハド129(Shahed129)」を46機提供しているとの調査結果を発表していた。米国CNNの報道によると、ロシア軍はイランでウクライナでの戦闘のために、イラン政府が提供した攻撃ドローンの操縦訓練を行っている。CNNによるとイラン製の攻撃ドローン「シャハド129(Shahed129)」のほかにイラン製の監視・偵察ドローン「サーエゲ(Shahed Saegheh・Shahed191)」もロシア軍に提供されるということだった。
2022年8月には米国国防総省のパット・ライダー報道官は「イランの飛行場からロシアに向けて軍事ドローンが輸送された。ロシア軍はイラン政府からイラン製の軍事ドローン数百機をこれから調達する予定。入手した情報によると、今回輸送されたイランの軍事ドローンはすでに多くの不具合(numerous failures)が生じている」と語っていた。
そして2022年9月にウクライナ軍は、イラン政府からロシア軍に提供された攻撃ドローン「シャハド136(Shahed136)」が迎撃されて破壊された写真を公開していた。イラン政府から提供された攻撃ドローンが使用され、破壊された写真がウクライナ軍によって公開されたのは初めて。
米国防総省によるとロシア軍がイラン政府から調達するのは攻撃ドローン「シャハド129(Shahed129)」と監視・偵察ドローン「マハジェル6(Mohajer6)」の2種類と伝えられていた。だが今回、破壊されて公開された写真は「シャハド136(Shahed136)」である。当初、提供される予定だった攻撃ドローンが不具合だったから使用しなかったのかどうかは明らかにされていない。
ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。またロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」で攻撃を行っている。だがウクライナ軍による地上からのドローン迎撃も激しく、ロシア軍の多くのドローンが破壊されたり、機能停止されたりしている。ドローンは検知されたらすぐに迎撃されて破壊されるので、戦場では何台でも必要だ。監視偵察ドローンは「上空からの目」として敵の様子を確認することができる。攻撃ドローンは敵を察知したら、すぐに攻撃が行えるし、大型ミサイルほどコストがかからない。
イランの兵器のほとんどは1979年まで続いた王政時代にアメリカから購入したもので、現在はアメリカとの関係悪化による制裁のためアメリカから購入できないので、特にドローン開発に注力している。イランの攻撃ドローンの開発力は優れており、敵国であるイスラエルへも飛行可能な長距離攻撃ドローンも開発しており、イスラエルにとっても脅威である。イスラエルのガザ地区の攻撃の際にはパレスチナにドローンを提供してイスラエルを攻撃していたと報じられていた。またイランでは開発したドローンを披露するための大規模なデモンストレーションも行ってアピールもしていた
ウクライナ軍「ロシアにはイラン製軍事ドローンがまだ300機残っており、さらに数千機を購入する」2022年10/16(日)
「ウクライナ軍はイランの軍事ドローンを撃墜する方法もわかっています」
2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。
2022年9月からはイラン政府が提供した攻撃ドローン「シャハド136(Shahed136)」と「マハジェル6(Mohajer6)」を頻繁に使用している。さらに最近では「シャハド136」よりも搭載している爆弾量が少ない攻撃ドローン「シャハド131(Shahed131)」も使用してウクライナ軍だけでなく、キーウの民間施設や一般市民も標的にして攻撃していると報じられている。ロシア軍はウクライナ攻撃と欧州からの軍事支援阻止のためにキーウに近いベラルーシにもイラン製軍事ドローンを配置すると報じられている。
そして2022年10月にウクライナ軍は「ロシアにはまだ約300機のドローンが残っています。さらにロシア軍は数千機のドローンを購入する予定があります」と公式SNSで伝えていた。さらに「ウクライナ軍はイランの軍事ドローンを撃墜する方法もわかっていますし、現在研究しています」とロシア軍によるイラン製軍事ドローンの攻撃に対抗していく構えも示していた。2022年7月からイラン政府がロシア軍に軍事ドローンの提供で協力している。米国の国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバン氏は2022年7月11日にホワイトハウスの記者会見で、イラン政府がロシア軍に対してウクライナ紛争で使用するためのドローン数百台を提供する可能性があると語っていた。イランは7月からロシア軍に攻撃ドローンの訓練も行っていた。米国のシンクタンクの戦争研究所は、イラン政府がロシア軍に対してイラン製の攻撃ドローン「シャハド129(Shahed129)」を46機提供しているとの調査結果を発表していた。米国CNNの報道によると、ロシア軍はイランでウクライナでの戦闘のために、イラン政府が提供した攻撃ドローンの操縦訓練を行っている。CNNによるとイラン製の攻撃ドローン「シャハド129(Shahed129)」のほかにイラン製の監視・偵察ドローン「サーエゲ(Shahed Saegheh・Shahed191)」もロシア軍に提供されるということだった。
ロシアのプーチン大統領は2022年7月19日にイランを訪問し、最高指導者ハメネイ師、ライシ大統領と会談していた。ハメネイ師はイランとロシアの中長期的な協力関係をプーチン大統領に呼び掛けていた。2022年8月には米国国防総省のパット・ライダー報道官は「イランの飛行場からロシアに向けて軍事ドローンが輸送された。ロシア軍はイラン政府からイラン製の軍事ドローン数百機をこれから調達する予定。入手した情報によると、今回輸送されたイランの軍事ドローンはすでに多くの不具合(numerous failures)が生じている」と語っていた。
2022年9月からイラン製のドローン「シャハド136(Shahed136)」と「マハジェル6(Mohajer6)」がウクライナでの攻撃に使用されるようになった。ロシア軍が以前に使っていたロシア製の軍事ドローンに代わって多くのイラン製ドローンで攻撃を行っており、ウクライナ軍によっても迎撃された写真や動画も公開されている。また2022年9月にウズベキスタンで開催されていた第22回上海協力機構首脳会談で、イランのライシ大統領とロシアのプーチン大統領は会談し、NATOの脅威は欧州だけでなく世界共通の脅威であると語っていた。2022年10月には首都キーウへの攻撃ではミサイルだけでなくイラン製の軍事ドローンが使用されて、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設だけでなく民用物や、文民たる住民までが標的になっていると報じられている。ウクライナ軍によって多くのイラン製ドローンが迎撃されて破壊された残骸をSNSなどで公開して世界にもアピールしている。
イスラエルも強い関心を示すイラン製軍事ドローン
イランの兵器のほとんどは1979年まで続いた王政時代にアメリカから購入したもので、現在はアメリカとの関係悪化による制裁のためアメリカから購入できないので、特にドローン開発に注力している。イランの攻撃ドローンの開発力は優れており、敵国であるイスラエルへも飛行可能な長距離攻撃ドローンも開発しており、イスラエルにとっても脅威である。イスラエルのガザ地区の攻撃の際にはパレスチナにドローンを提供してイスラエルを攻撃していたと報じられていた。またイランでは開発したドローンを披露するための大規模なデモンストレーションも行ってアピールもしていた。
イラン製の軍事ドローンはロシア軍のウクライナ侵攻のために開発されたものではなく、イランにとっては敵国であるイスラエルを標的にして使用することを念頭に開発されたものだ。そのためロシア軍がウクライナで使用しているイラン製の軍事ドローンの攻撃力、破壊力についてはイスラエルのメディアも強い関心を示している。
イスラエルはロシア・ウクライナそれぞれとの関係を考慮してウクライナ紛争については中立であり、表面上は冷静である。ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ人ではあるが、決してウクライナだけに肩入れもしていない。イスラエルには戦後に主に欧州やソビエト連邦(ロシア)からのユダヤ人らがやってきた。ロシアから来たユダヤ人、ウクライナから来たユダヤ人がイスラエルには多くいる。彼らは自分たちや祖先が住んでいた国を支援しているわけではない。例えばポーランドやリトアニア、西欧諸国からイスラエルに来たユダヤ人の多くは今回の紛争ではウクライナに同情的だ。ロシアから来たユダヤ人はロシア人から迫害、差別されていたし、ウクライナから来たユダヤ人はホロコーストの時代にはナチス・ドイツだけでなく多くのウクライナの地元住民も殺害に加担していたこともありロシアやウクライナに対する感情もそれぞれの出自や家族の経験によって複雑である。
ナチスドイツの親衛隊は誰がウクライナ人で、誰がユダヤ人かの区別がつかなかったので、地元のウクライナ人らにユダヤ人狩りをさせて連行させ、射殺させた。ウクライナでは根強い反ユダヤ主義が歴史的に続いていたため、多くのウクライナ人がナチスドイツに協力したし、ナチスドイツの命令を断ることができなかったウクライナ人も多かった。そしてホロコースト時代最大の大量虐殺と言われているバビ・ヤールでは3万人以上のユダヤ人が射殺されたが、このような組織的大量虐殺も地元のウクライナ人の協力があったから遂行できた。そのためホロコースト時代にウクライナに住んでいたユダヤ人にとっては、ナチスドイツの手先となってユダヤ人殺害に加担していたウクライナ人は大嫌いで思い出したくもないという人も多い。当時の生存者らの多くが他界しているが、生存者らの経験や証言はデジタル化されて今でも語り継がれている。
このようにイスラエルのユダヤ人と言っても決して一枚岩ではなく、ウクライナとロシアに対してそれぞれの複雑な思いがある。だがイラン製の軍事ドローンの本来の標的はイスラエルのユダヤ人であるため、多くのイスラエルのユダヤ人がイラン製の軍事ドローンの攻撃力、破壊力とロシアへの提供の動向には高い関心が集まっている。
ウクライナ軍は「イランの軍事ドローンの次の標的はどこでしょうか?」と公式SNSで伝えていたが、念頭にあるのはイランの敵国であるイスラエルだろう。
そしてウクライナ軍もイスラエルへ軍事支援の協力を呼びかけるかのように、あきらかにユダヤ人の出で立ちをした人の写真とともに「我々はどのようなテロリストにも屈しない。ウクライナは強く戦っている」とアピールしていた。
イスラエルにはドローン迎撃のためのアイアンドームなどが既にある。2021年5月10日から約3000発のハマスからのロケット弾や攻撃ドローンの9割を迎撃していたと報じられていた。実戦においてもアイアンドームの精度の高さを見せつけていた。アイアンドームは地上にいる人たちや建物への攻撃を回避させダメージを最小化させることができて、ハマスからの攻撃ドローンやミサイルを迎撃してイスラエル国土防衛に貢献していた。そのようなイスラエルの軍事技術はウクライナにとってもすぐにでも欲しいだろう。
イランの軍事ドローンには強い関心を示すが一枚岩でないユダヤ社会
イスラエルはロシア・ウクライナそれぞれとの関係を考慮してウクライナ紛争については中立であり、表面上は冷静である。ウクライナのゼレンスキー大統領はユダヤ人ではあるが、決してウクライナだけに肩入れもしていない。イスラエルには戦後に主に欧州やソビエト連邦(ロシア)からのユダヤ人らがやってきた。ロシアから来たユダヤ人、ウクライナから来たユダヤ人がイスラエルには多くいる。彼らは自分たちや祖先が住んでいた国を支援しているわけではない。例えばポーランドやリトアニア、西欧諸国からイスラエルに来たユダヤ人の多くは今回の紛争ではウクライナに同情的だ。ロシアから来たユダヤ人はロシア人から迫害、差別されていたし、ウクライナから来たユダヤ人はホロコーストの時代にはナチスドイツだけでなく多くのウクライナの地元住民も殺害に加担していたこともありロシアやウクライナに対する感情もそれぞれの出自や家族の経験によって複雑である。
ナチスドイツの親衛隊は誰がウクライナ人で、誰がユダヤ人かの区別がつかなかったので、地元のウクライナ人らにユダヤ人狩りをさせて連行させ、射殺させた。ウクライナでは根強い反ユダヤ主義が歴史的に続いていたため、多くのウクライナ人がナチスドイツに協力したし、ナチスドイツの命令を断ることができなかったウクライナ人も多かった。そしてホロコースト時代最大の大量虐殺と言われているバビ・ヤールでは3万人以上のユダヤ人が射殺されたが、このような組織的大量虐殺も地元のウクライナ人の協力があったから遂行できた。そのためホロコースト時代にウクライナに住んでいたユダヤ人にとっては、ナチスドイツの手先となってユダヤ人殺害に加担していたウクライナ人は大嫌いで思い出したくもないという人も多い。当時の生存者らの多くが他界しているが、生存者らの経験や証言はデジタル化されて今でも語り継がれている。
このようにイスラエルのユダヤ人と言っても決して一枚岩ではなく、ウクライナとロシアに対してそれぞれの複雑な思いがある。イスラエルの国土防衛と安全保障の根底には「二度とホロコーストを繰り返さない。二度とユダヤ人が大量虐殺の標的にされない」という強い信念がある。イスラエルでは徴兵に行く若者たちがホロコースト博物館でホロコーストの学習をしたり生存者の体験を聞いたりして、ユダヤ人国家防衛の重要性を学んでいる。戦後にイスラエルを建国してから、二度とホロコーストの犠牲にならないという想いで陸海空サイバーの全ての領域における安全保障と国防、攻撃から防御まであらゆる防衛産業を強化してきた。
首都キーウにもイラン製攻撃ドローンで攻撃、徹底的な破壊が急務
ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃して破壊してしまうか、機能停止する必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。
特に偵察ドローンは探知されやすく、すぐに迎撃しなくてはならない。偵察ドローンは攻撃をしてこないから迎撃しなくても良いということは絶対にない。偵察ドローンに自軍の居場所を察知されてしまったら、その場所にめがけて大量のミサイルを撃ち込まれてしまい大きな被害を招きかねないので、偵察ドローンを検知したら、すぐに迎撃して爆破したり機能停止したりする必要がある。回収されて再利用されないためにもドローンは上空で徹底的に破壊しておいた方が効果的である。
特に2022年10月に入ってからはロシア軍が首都キーウにも軍事ドローンで攻撃をしているので、上空での"ハードキル"による徹底的な破壊による国土の防衛は急務である。
ウクライナ軍では破壊したドローンのなかで、監視・偵察ドローンと攻撃ドローンの内訳は明らかにしていない。ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っており、またロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」で攻撃を行っている。最近では「Kartograf」と呼ばれている監視ドローンも使用しており、それもウクライナ軍によって破壊されている。最近の傾向ではそれに加え「ZALA 421-16Е2」といった今まではあまり使われていなかった監視ドローンも撃墜されている。またイラン政府はロシア軍に攻撃ドローンを提供しているが、9月に入ってからイラン製の軍事ドローンが破壊された写真や動画がウクライナ軍によって多く公開されている。
ウクライナ軍では迎撃して破壊したロシア軍の偵察ドローン「Orlan-10」や攻撃ドローン「KUB-BLA」、イラン政府が提供した軍事ドローンの残骸の写真や地対空ミサイルを発射して上空で撃破する動画を投稿して世界中にアピールしている。
破壊された装甲戦闘車両が約5100台、戦車が約2500台、大砲が約1500門なのでそれらに比べると破壊されたドローンは1200機と多くはない。戦車や大砲の多くも上空からドローンで爆弾を投下したり、ドローンごと突っ込んでいき破壊したりしている。
〝ロシアのパリス・ヒルトン〟が身の危険感じ国外逃亡=欧米メディア
2022年10/27(木)
セレブで奔放な言動から〝ロシアのパリス・ヒルトン〟と呼ばれるタレントでテレビ司会者のクセニア・サプチャク(40)が国外に逃亡した。複数の欧米メディアが27日、報じている。ロシア当局が26日、サプチャクを恐喝容疑の名目で家宅捜索した数時間後、ベラルーシ経由でリトアニア行きの飛行機に搭乗し、国外逃亡した。ロシア当局がモスクワ空港に到着する直前のフライトだった。実際はサプチャク自身が創立した独立系オンラインメディア「オストロジュノ・ノーボスチ」で、ウクライナ侵攻についてプーチン大統領の批判を繰り返してきたため、報道規制のために拘束しようとしていたようだ。サプチャクはSNSで「私たちのメディアのコマーシャルディレクターのキリル・スハノフはすでに『脅迫』のために拘留されています。これは単なるせん妄であり、笑えるナンセンスです。私自身と私たちのチーム全体は、これをメディアに対するさらなる抑圧と見なしています」と発信している。
自身が創設したメディア幹部の逮捕で危機を感じ、間一髪で国外逃亡したようだ。
ロシア動員兵が「プーチン倒せ」と反乱の雄たけび 劣悪な環境に不満爆発=英紙
2022年10月25日
プーチン大統領への反乱? ウクライナ侵攻に動員されたロシアの徴兵がプーチン政権を転覆させる恐れがあるという。英デイリー・メール紙が2022年10月25日までに報じた。
動員された何十人ものロシア兵士がプーチンに対して異常な反乱を起こしている。ロシアで作られた匿名性の高いSNS「テレグラム」は、今や反プーチンの人々の情報ツールになっている。そこに、戦場のあるキャンプ地で撮影された動画が投稿された。1人の兵士が「私たち兵士が指導者を倒すべきだ」と叫び、ほかの兵士たちが歓声を上げている。
動画では、名前もなき兵士が「プーチン氏と指揮官たちは兵士への敬意を欠いている」「戦争に参加させるために脅迫してきた」などと非難を口に出している。さらに動員された兵士たちの各家族に雄羊を支給するというトゥヴァ共和国の政策について「戦争に動員された対価が雄羊って、何だよ」と笑った。
また、プーチン氏が9月に発表した部分動員令に応じさせるため、役人たちが脅迫してきたともいう。
役人たちは、私たちに『ウクライナに行かなければ刑務所に入れる』と言ってきた。私は動員されたけど、どうせ家族に報酬は支払われないだろう。そもそも、私たちの分隊には十分な数のトランシーバーがないぐらいだから。交戦地帯で、どのようにコミュニケーションを取ればいいんだ。靴下も支給されていない。十分な武器が供給されていないのに、ギターが支給された。戦場で歌えっていうのか」
聞いている兵士たちは大きな拍手を送っていた。
プーチン大統領に引導も…ロシア軍内紛、民間軍事会社が台頭 盟友が軍の失敗を指摘「直接グチ、国防相かそれ以上の立場に」
2022年10/27(木)
ウクライナ侵攻をめぐりロシアの軍事組織内部で亀裂が深まっている。プーチン大統領の側近で、民間軍事会社「ワグネル」の創設者、プリゴジン氏が、プーチン氏に直接、軍の失敗を指摘した。政権の内紛でパワーバランスが崩れた場合、「プーチン氏に引導が渡される可能性もある」と専門家は指摘する。
米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、プリゴジン氏は、ロシア国防省がワグネルの傭兵(ようへい)部隊に頼る一方、必要な支援をしていないとプーチン氏に直訴した。軍事的劣勢を背景に「プリゴジン氏が影響力を強めたことや、国防省幹部の指導力の不安定さを浮き彫りにした」と同紙は指摘した。
プリゴジン氏は食品関連企業を経営するオリガルヒ(新興財閥)の1人で、9月に初めてワグネルの創設者だと認めた。
プリゴジン氏はチェチェン共和国のカディロフ首長による軍指導部批判に同調したこともある。ショイグ国防相の解任論もくすぶり、国防省の立場は厳しくなっている。
前線でもワグネルの影響力は強まっている。ロシア軍の兵力不足を補うため、受刑者を兵士として集めたり、東部ドネツク州の戦略的要衝バフムトには同社の傭兵が投入されているという。
南部ルガンスク州でも「ワグネル線」「プリゴジン線」と呼ばれる防御線を構築していると露独立系メディア「メドゥーザ」が23日、報じた。
南部へルソン州の州都へルソン市では、ロシア軍が撤退するとみられていたが、ロイター通信によると、ウクライナ政府高官は「最も激しい戦闘」を警戒している。
筑波大の中村逸郎名誉教授は「プリゴジン氏は、プーチン氏に直接グチを漏らせるまでに権力を蓄え、実質的に国防相か、それ以上の立場になりつつある。強硬派の意見は前線に反映され、攻撃はさらに非道さを増すだろう」とみる。
プーチン氏の盟友とされるプリゴジン氏だが、両者の関係も変わってくるかもしれない。中村氏は「プリゴジン氏が目指しているのはウクライナの『焦土化』だ。一連の要求に応えられない場合、プーチン氏に引導を渡す可能性もある」と分析した。
露軍、ヘルソン市死守の方針か 前線に戦力増強
2022/10/27
一方、同州の親露派勢力幹部は25日、「前線は安定し、強化されている」と主張。防衛に自信を示した。
同州でウクライナ軍はドニエプル川に架かる橋を破壊し、東岸地域と西岸地域を分断。露軍のスロビキン総司令官は18日、西岸地域で露軍が孤立していることを認め、状況次第では「容易ではない決断」も排除しないと表明した。同州の親露派勢力も19日、ヘルソン市などの住民を東岸地域に退避させると発表した。
このため、米シンクタンク「戦争研究所」や英国防省は、露軍が西岸地域の放棄に向けた準備を進めているとの分析を示していた。
ただ、ウクライナ軍は22日、露軍が西岸地域の前線に兵士2000人を配備するとともに、ヘルソン市で市街戦の準備を始めたと指摘。親露派勢力も24日、同市で民兵組織「領土防衛隊」を編成すると発表していた。
こうした動きについて、ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長は24日、「露軍はヘルソン市を放棄しない」と指摘。ウクライナのアレストビッチ大統領府長官顧問も25日、ヘルソン市で「最も激しい戦いが起きる」との見通しを示した。
ヘルソン市は、ロシアが併合を宣言した4州でウクライナ侵略後に制圧した唯一の州都。同市を喪失した場合、プーチン露政権への打撃は必至だ。露軍は同市を死守しつつ、同市が陥落した場合に備え、南部クリミア半島につながるドニエプル川東岸地域に防衛線を構築する戦略だとみられる。
ただ、西岸地域の露軍は孤立を解消できておらず、同市の死守は最大2万5000人とされる部隊を喪失するリスクもはらんでいる。
ロシアのメドベージェフ前大統領
北方領土は「ロシア」主張 北方領土について「ロシア領だ。日本の国民感情など知ったことか」「特に悲しむサムライは切腹すればよい」などとSNSに投稿
2024年1月31日

ロシア ラブロフ外相
「ロシアはどの国とも領土問題を抱えていない。日本との領土問題を含めすべて終結している。彼らは、このことをよく理解している」
ラブロフ外相は18日、政府系テレビのインタビューで、ロシアがウクライナに続いてNATO=北大西洋条約機構の加盟国を攻撃するのではないかとの見方を否定し、「ロシアとNATO加盟国との間に領土問題はない」と述べました。
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香港の水上レストランが非公開の場所で沈没 曳航中の南シナ海西沙諸島で
6/21(火) 16:18
曳航(えいこう)途中の南シナ海で転覆、沈没
香港、中国、2022年6月21日(AP)― 香港の観光名所だった水上レストラン「珍宝王国」が、閉店したため、えい航中の南シナ海、曳航(えいこう)途中の南シナ海で転覆、沈没した。親会社が6月20日、明らかにした。
香港仔飲食企業有限公司によると、王宮のような外観のレストランは2022年6月14日、40数年親しまれていた香港の停泊地から非公開の場所へ曳航される途中、南シナ海の西沙諸島周辺で「困難な状況」になり浸水が始まり、2022年6月19日になって予定して沈没したという。
どこに沈めたのか?
沈没現場の水深は1000メートル以上もあることから、運営会社は引き揚げは難しいとしている。
全長80メートルのレストランは、1976年から香港の観光名所として、エリザベス英女王や俳優のトム・クルーズなど300万人以上の客に広東料理を提供してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で観光客が激減したことも手伝って、2020年に営業を終了した。
ところが2022年6月23日、沈没したとみられる船体の周辺状況を明らかにするよう迫られた運営企業は、声明で船体並びに引き船について、依然西沙諸島付近の水域にいると明らかにした。
中国新幹線も巨大な船も
香港政府に向けて出されたこの声明では、船体が現在も海上に浮かんでいるのか、あるいは引き船と分かれた状態になっているのかどうかについて言及していない。
発表内容の明らかな変化に先駆け、香港の海事当局は運営会社に対し船体に起きた事象についての書面での報告を要請していた。初期調査の一環だったとしている。
運営会社の広報担当者は24日、CNNの取材に答え、船体の状況を伝える際には常に「転覆」という言葉を用いており、沈没したと主張したことはないと述べた。
当初の声明の内容と矛盾するのではないかと問われると、同社が求められたのは船体に問題が起きた水域の水深を報告することだったと回答。それは船体が引き揚げ可能という意味なのか、あるいは海上に浮かんだままなのかという質問については答えるのを控えた。
珍宝王国は2020年に無期限の休業を発表した。香港全土で行われていた抗議行動と新型コロナのパンデミック(世界的大流行)との二重苦が追い打ちをかけ、赤字額は1300万ドルを超えていた。
最盛期には香港や海外の映画に登場し、英エリザベス女王やカーター元米大統領、米俳優トム・クルーズさんらも訪れた。
環境保護も何もない国だから世界で何人死のうが中国には影響がないのだから、今後も中国の土地汚染、空気汚染、海洋汚染で隣国が完全破壊されるまで続くだろう、と思った方が良い。テロ国家に対しては、その方が賢い考えだ。日本は「迷惑」している。
中国鉄道事故10年、痕跡消え「報道は一切できない」
2022/07/23
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中国東部・浙江省温州市で起きた高速鉄道事故から、23日で10年となる。中国政府は事故直後から関連報道の規制に躍起となり、今も批判再燃を警戒する。 習近平シージンピン 政権は、事故など存在しなかったかのように高速鉄道網の拡大を続け、国威発揚に利用している。(温州 南部さやか)
7月中旬、事故現場周辺を訪れると、靴の製造工場や建設中のマンションが目についた。近くに高い建物が見られなかった10年前とは様変わりしたようだ。
事故車両が埋められた一帯は柵で囲われ、雑草が生い茂っていた。一見しただけでは事故の跡は見いだせないが、記者には当局者8人の尾行がついて回った。
事故当時、周辺にいた住民は、大部分が開発に伴って立ち退かされた。事故車両からけが人を救出する活動にあたった男性(67)もその一人だ。「事故は風化したように見えるが、助けを求めて泣き叫ぶ声が耳から離れない」と明かした。一方、事故後に移り住んだ現在の住民には、事故を知らない人さえいるという。
被害者をコンクリで生き埋め──病的すぎる中国当局の「隠蔽体質」
中国の恐るべき隠蔽工作は健在だった──。
このほど広州市で発生した地下鉄工事現場の崩落事故では、生き埋めになった市民が救出されていない状況にも関わらず、現場を「コンクリートで埋める」作業が急ピッチで進行。そこには、人命よりもメンツを重んじる中国当局の病的な体質があった……。
まっさかさまに落ちて…
12月1日午前9時28分、広東省広州市中心部の広州大道と先烈東路・禺東西路が交わる大規模交差点で突然、道路が38mの深さまで陥没する事故が発生。運悪く通りがかった清掃車1両と電動自転車1台が土砂に呑まれ、計3人が生き埋めになった。事故現場の真下は、広州地下鉄11号線沙河駅の建設工事現場だ。
偶然、そばを通りがかった目撃者によると、交差点の中央に突然、巨大な穴が出現し、清掃車が大きな音を立てて垂直に転落。当初は清掃車の最後部が露出していたが、19分後、二度目の崩落で瞬く間に穴へ吸い込まれたという。後続の電動自転車もブレーキが間に合わず穴に落ちた。
奇妙なことに、救急車が真っ先に現場へ駆けつけるかと思いきや、市政府の専用車がやってきてまず行ったのは、現場の200m四方を鉄板で目隠しし、周辺道路を完全封鎖したことだった。
外部の目を完全に遮断し、1100人以上の人員と192台の特殊車両(※公安発表)が救助活動に当たるが、穴は砂時計のように土砂が間断なく崩れるため拡大し続け、大量の地下水も流入。さらに電線やガス管などのライフラインが複雑な形で埋設されていることから作業は困難を極める。
関連記事: 「香港人権法」を批判する鳩山由紀夫と「元首相」を利用する中国
そして事故発生から6時間後──。地下鉄運営を担う広州地鉄集団はSNSの公式アカウントで、これ以上の崩落と穴の拡大を防ぐため「局部回填(核心部分の充填)」を行うと宣言。恐るべきことに、現場にコンクリートポンプ車5台を集結させ、ぽっかり空いた穴にドクドクと生コンクリートを注入し始めたのだ。言うまでもなく消息を絶った3人の安否確認はおろか、清掃車と電動自転車が具体的にどの位置に埋没しているのかさえ特定できていない段階で、である。
18時ごろには現場周りに失踪者の家族や友人が続々と集結。にょっきり伸びたコンクリートポンプ車の先端ブーム(ノズル)を遠目にしながら「まだ3人が救出されてもいないのに現場をコンクリで埋めるなんて……!!」。口々に抗議と非難の声を挙げ、怒りの横断幕を掲げる一幕もあったが、彼らは瞬く間に公安当局によって身柄を拘束された。
3人をコンクリ漬けにしたまま、さらに…
20時に広州地鉄集団が記者会見を開催。3人が救出できていないことを謝罪するも、施工現場のすぐ東側に中規模河川が流れている地盤の緩さを問われると「工事が付近の川や建築物、高速道路高架橋に何ら影響を与えていないことは実地検査で実証済み」と強調した。市民が埋まったままの穴に生コンクリートを注入した是非について広州市政府の担当者は「崩落の進行を防ぎ、安全に救出するため専門家が提案した適切な措置」とだけ説明した。
2日午前1時半ごろ、現場にシールドマシン(掘削機)と直径2.5mの鋼管が到着。崩落と地盤沈下が収まり、凝固し始めたコンクリをシールドマシンで掘り進め、救出路にするための鋼管を垂直に据えつける新たな作業が始まった。例えるならば、黒ゴマ豆腐の真ん中にストローを突き刺すような構図と言えようか。
だが素人目にも、埋まっている市民がコンクリート漬けにされたり、ドリルで傷つけられたりする懸念が払拭されないままの作業であることは明白だ。
本来ならば事故調査委員会が検証するまで証拠として保存すべき車両を、乗客の安否が完全に確認できていないなか、強引に救助活動を打ち切って手っ取り早く土に埋める……信じがたい行為に世界中から「証拠隠しの隠蔽だ!」と非難が殺到した。
国家鉄道部(※当時)は「現場は湿地帯でぬかるんでおり、救援車両を迅速に通すための適切な措置」と話し、今回の広州地下鉄事故現場のコンクリート注入と同じような理屈を並べて騒ぎの収集を図ろうとする。だがそんな説明を真に受ける人はいず、国内外からの抗議は逆に急増。結局、鉄道部は26日午後になって埋めた事故車両を掘り返し、人目のつかない公有地に移送するという愚挙を重ねた。
葬られた報道
温州事故の発生当初、中国メディアは「車両を埋めて幕引きを図った鉄道部」への激しい批判キャンペーンを展開し、市民もオンラインで活発な議論を交わすことが可能だった。
硬派な深掘り取材で知名度が急上昇していたニュースメディア「経済観察報」も別刷りで事故特集を組み話題を集めた。同紙編集部から「特集第2弾を準備している。なぜ日本の新幹線は1964年の開業以来、死亡事故がゼロ(※当時)なのか安全神話の神髄を探ってほしい」と依頼された筆者は、日本の内閣府を介してJR東日本への取材を始めた。
ところが、入稿段階になって同紙記者から電話が入る。メディアを監督する中国共産党中央委員
会中央宣伝部から「いま進めている温州事故特集を即刻中止し内容を差し替えよ。背けば新聞の発行許可を取り消す」との厳命が下ったという。行き過ぎた事故処理批判、鉄道部批判や市民の議論がやがて政府批判につながることを危惧し、当局は言論統制を強めたのだ。
党の介入は中国メディアの宿命というほかない。「取材が無駄骨になり、心から謝罪する。だが掲載中止以外の選択肢は無かった……」と電話口で慟哭する記者の声が、今も脳裏に焼きついている。
それでも8年前の温州事故では、中国メディアも「メンツ重視で人命軽視」「完全なる人災」「高速鉄道王国の自画自賛を嗤う」「鉄道部が葬り去ったもの」「報道規制は現代の“焚書坑儒(※秦の時代、書物を焼き払い儒学者を生き埋めにした思想弾圧事件のこと)”」等々、ギリギリまで真実を追究しようとする動きがあった。だが今回の広州地下鉄事故でその姿勢はほぼ皆無。報道姿勢そのものがすっかり埋められてしまったという現実に、深い絶望を覚えずにはいられない。
中国の高速鉄道事故処理には唖然 体制批判恐れての急ぎ収束は異常
中国東部で7月23日夜に起きた高架橋上での高速鉄道の追突事故は、死者40人、負傷者200人の大惨事のうえ、追突した前4両が高架橋から転落するすさまじいもので、メディアの現地報道を見ていても「ひどい」の一語だった。しかし、中国が世界に向けて「独自技術による高速鉄道システム」と誇った直後の事故だっただけに、私に限らず多くの人が「エッ、なぜだ。絶対安全システムだったのでないのか」と、驚いたと思う。
凄まじい隠蔽国家
問題は、そのあとの事故処理にあった。本来ならば、大事故だけに、被害者救出を最優先にして時間をかけると同時に、事故の再発防止のために、何が原因だったのか、運転士のヒューマンエラーなのか、それとも運行システム自体の問題だったのか、原因究明に乗り出すのが当然のはず。ところが事故後の中国政府の対応は、体制批判を恐れてのものとしか思えない事故処理ぶりが目立ち、むしろ、そちらの動きに唖然としてしまった。
事故翌朝の解体車両の埋め込みはお粗末な証拠隠し?
とくに事故の翌日早朝に、事故現場の証拠隠しでないかと思わざるを得ないような、解体した事故の先頭車両を、地中に堀った大きな穴へ埋め込んだことには、これまた驚いた。普通の常識では、まずは被害者の徹底捜索に時間をかけ、それと原因究明のための現場保存、現場検証こそが最優先課題のはずだ。私の毎日新聞駆け出し記者時代、事故現場で警察がロープを張って立ち入り禁止にしての現場検証で、取材制限されたのを思い出す。これほどの大事故ならば、列車の運行をストップさせ、大がかりな現場検証をすべきだ。
ところが今回、事故から数時間後の早朝に現場にたどりついた朝日新聞特派員が先頭車両を解体して穴埋めしている現場を目撃し、それを記事にした。その記事はとても迫力があったが、同じく現場にいた中国メディアの報道も「証拠隠滅でないか」という批判にエスカレートした。
鉄道省当局は、その批判の強さに、あわてて埋めた事故車両を掘り返したが、車両の一部はすでに解体されており、事故調査で苦労するのは間違いない。それにしても、証拠隠しだったにしては、多くの民間人が見ている中での行為だけに、お粗末な行為だ。なぜ、そんなばかげたことをしたのか、という疑問が湧いた。
「中国独自の技術」が裏目に出て政権に苛立ち起きて問題噴出
私の推理は最初、こうだった。中国政府の人命軽視、安全軽視の対応は大問題だが、「中国独自の技術による高速鉄道」をアピールしていた手前、今回の問題で胡錦涛政権自体の体制批判に発展するのを恐れて、早く事故収束を図ろうと躍起になった、このため事故で亡くなった遺族への多額の賠償金提示、そして念書を書かせて一件落着にしてしまおう、という、あせりや苛立ちがかえって、さまざまな問題を噴出させてしまったのではないか、ということが1つ。
それと、現場を統括する鉄道省の対応にはもっと問題が多かった。彼らは自己保身と同時に、極めて現実的な行動パターンにこだわり、事故原因の調査などで数週間の空白時間が生じ、あおりで運休といった事態をメンツにかけても避けることに躍起だった。このため、すぐにも現場復旧させて、高速鉄道は何事もなかったように走っていることを国の内外に見せたかったのでないか、と。
専門家は中国政権内部のドロドロした権力闘争がからむとの説
ところが中国人の大学教授や専門家、また日本の中国ウオッチャーの専門家に聞くと、事態はもっと複雑で、私の推理は甘いものだった。要は、胡錦涛政権内部でドロドロとした権力闘争がからみ、政権中枢が、今回の事故をきっかけに高速鉄道を統括する鉄道省に巣食う共産党幹部人脈にメスを入れられるかどうかが大きなポイントだ、というのだ。
まず、拓殖大学客員教授で、日本に帰化した中国人の石平さん。今回の高速鉄道事故後はいくつかの民放テレビに出演し、「温家宝首相は今回、事故現場に駆け付けて遺族に弔意を述べ、事故原因の徹底究明を約束したが、彼はもともとパフォーマンス政治家と言われていて、その言動が巧みだ。それよりも、彼が、現場を取り仕切る鉄道省の責任問題に言及しており、それを聞いていて、共産党の体制批判に及びかねないため、鉄道省に責任を押し付けたな、と感じた」と述べている。
胡錦涛政権が江沢民・前主席派閥に手を突っ込めるかがカギ
石平さんは今回の事故の数日前に会った時には、胡錦涛政権の不安定性を述べていたが、さきほどのいくつかのテレビ番組では、さらに興味深い話をしている。
「鉄道省の背後には人民解放軍、それに江沢民・元主席の派閥人脈がある。今年2月に江沢民・前主席の側近の1人、劉志軍・前鉄道相が汚職で逮捕されている。今回の事故責任追及で、胡錦涛政権が江沢民人脈の派閥に手を突っ込めるかどうかだ」というのだ。
胡錦涛主席、温家宝首相の現政権は、2012年に政権交代し、副主席に選んだ習近平氏にバトンタッチすることになっているが、「権力闘争が微妙にからみ、胡錦涛主席は今回の高速鉄道事故を政治的に利用し、場合によっては江沢民人脈につながる習近平氏と次期トップの座を争った李克強国務院副総理に次期政権を、という思惑があるようにも見える。まだまだ目が離せない」と日本の大学で研究を続ける中国のある教授は述べる。ただ、その教授は「微妙な時期なので、自分の名前は出さないでほしい」というから驚きだ。
政権側は一時、鉄道省人脈の切り崩しでメディアの批判報道も容認
また、私がおつきあいしている中国問題の日本人専門家は、もっと生々しい分析をする。それによると、胡錦涛主席――共産党青年同盟グループが、江沢民・前主席――習近平副主席――太子党連合と対決するため、今回の高速鉄道事故での民衆の怒りを利用しながら、鉄道省の鉄道建設利権につながる江沢民一派のひどさ、そして人命軽視の事故処理を徹底してたたくことを決め、メディアを味方につけるため、批判報道も大目に見て攻勢に出たと見るべきだ、という。
ただ、その専門家によると、江沢民・前主席派閥をこの機会に一掃出来るか、と言えば、コトは簡単でない。その派閥グループには重慶市の書記ら有力政治家、ペトロ・チャイナやシノペックという国営石油につながる産業人脈、人民解放軍首脳など、隠然たる力を持つネットワークがある。このため下手をすると、しっぺ返しを食うリスクがあるので、見極めが難しい、ともいう。
2人の張氏はかつてSARS隠ぺいに関与、いずれも江沢民派
毎日新聞時代の友人で、今、専門編集委員として中国ウオッチャーの金子秀敏さんが書いた7月28日付の毎日新聞コラム記事が興味深い。それによると、今回の高速鉄道事故現場で指揮をとった張徳江副首相は、共産党広東省委員会書記という地方トップの座にあった2002、3年ごろ、中国を襲った感染症の新型肺炎SARSの広東での病気流行を否定し、メディア報道を規制して隠ぺいにかかわった疑いがある、というのだ。
その後、SARSは北京に飛び火し、香港、台湾、東南アジアにも広がり、中国の無為無策ぶりが国際的に非難の的になった。当時、SARS問題を担当した衛生省トップの張文康衛生相は2003年4月の記者会見で「SARSはすでに抑制されている」と流行の事実を否定した直後に、北京で国連機関の外国人職員がSARSで死亡し、解任された。
金子さんによると、このSARS隠しに関与した2人の張氏はいずれも江沢民・前主席派閥だった、という。そこで、「中国では、重大問題に真っ正面から取り組んでリスクをとるよりも、情報や報道を規制して問題を隠ぺいしたほうがリスクが少ない。これが中国流政治だ。鉄道省の官僚が、証拠を埋めて事故の痕跡を消したいと考えたのは、中国的には不自然でない」と書いている。ここがポイントのところだ。
「事故原因の信号システムが日本製だったら天文学的賠償請求も」
もう1つだけ、現代中国を見るうえで、参考になる話がある。中国で企業展開する小島衣料の小島正憲社長は、今年7月中に北京などでエスカレーターが逆走して中国人に死傷者が出た事故と、今回の高速鉄道事故とを絡めて興味深い指摘をされている。
結論から先に言えば、エスカレーターはいずれも米国などの外国メーカー製だったので、中国当局がすぐに運転停止を命じ、関係する中国各都市のエスカレーターの全基の点検も同時に指示した。そして安全が確認でき次第、運転再開を命じた。しかし、逆に設計に欠陥があった場合には使用停止と同時に、賠償を求めるケースもあった、という。
ところが、今回の高速鉄道のシステムや技術は、日本やドイツから導入した技術を巧みに活用したあと、国威発揚もあって自前の独自技術を誇示した手前、その国産技術の優れものぶりを示すためにも高速鉄道事故の原因究明よりも、まずは運行再開を急ぐ、という方針をとらざるを得なかったのだろう、という。
小島さんは「今回の事故原因でないかと言われている信号システムが、もし日本製だったら、インターネット上で反日の嵐が吹き荒れていただろう。そればかりか、日本の会社は全責任をとらされ、天文学的な賠償を請求されただろう」と述べている。
中国は世界注視の中で今こそ安全重視、安全経営への取組み必要
大事故からわずか1日半後の7月25日午前には、平然と何事もなかったかのように、平常通りの運行に戻してしまった。その後、信号トラブルなどで、運行が正常にはなっていない、との報道もあるが、メディア報道でご存じの被害者捜索打ち切り後に、2歳の幼女が奇跡的に見つかり、無事救出されたことも驚きだった。人命救助優先よりも、まずは運行再開という鉄道省当局の判断は、中国国内のみならず、海外からも大きく問われた。
私に言わせれば、中国政府は、世界中が注視している今こそ、安全重視のため、最優先で事故の原因究明を急ぎ、大量交通システムの安全経営に対する果敢な取り組みを示す、という重大な点を行うべきなのだ。
しかし、そういったことよりも、今、述べた専門家の見方のような権力闘争がからんでいて、事故原因の究明などは2の次、3の次になっているとしたら、もっと大変なことだ。
高成長に伴っての経済大国を誇示し、そして大国主義を標榜する前に、まずは足元を固めた方がいいのでないかと言いたくなる。いかがだろうか。
4年前にジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道の建設計画をライバル中国に渡したインドネシアに対して日本は怒り失望したが、・・・
「意識変えてくれた」日本支援のジャカルタ地下鉄、市民の新たな文化に
Apr 6 2019
深刻な渋滞緩和の切り札として期待される、ジャカルタ都市高速鉄道(MRT)が開業した。地下と高架部分を走り、ジャカルタの中心部と南部を30分で結ぶ。乗客のマナーの悪さなども報じられているが、数十年間待ちに待った市民にはおおむね好評だ。ジョコ大統領も、MRTが「新しい文化」の一部となったと胸を張る。日本の技術と資金援助で作られたインフラが、ジャカルタ市民の生活を変えようとしている。
◆正確できれい 公共交通機関への意識が変わった
BBCによれば、実はジャカルタにはMRT開業前からバスや通勤列車などの大量輸送システムはあった。しかし、第一の選択肢として市民に選ばれることはなく、通勤に公共交通機関を使う人は、ジャカルタの人口の20%しかいない。ジャカルタ市民にとって、不便で使い勝手の悪い公共交通機関と、渋滞に巻き込まれる自動車やバイクしか選択肢はない状況だった。
通勤経験のあるライターのイカ・クリスマンタリ氏は、これまでまったく公共交通機関を信頼してこなかったという。しかしMRTに試乗し、これこそが悪夢のような通勤から解放してくれるものだと気づいたそうだ。まず、手軽に乗れて渋滞もない。インドネシアではまれな定時発車で、車両内部は清潔で整然としている。同氏は渋滞を見下ろして走る車両の窓から見える青空と、交通渋滞に打ち勝ったという特権的な気分に恐れ入ったとしている。初めて公共交通機関にプライドを持てたとし、この気持ちはほかの市民も同じではないかとしている(ジャカルタ・ポスト紙)。
◆マナーは追い付かず 時間と忍耐で改善を
地元の報道からMRTが利用者に好評なことはよくわかるが、課題はマナーのようだ。ジャカルタ・ポスト紙は、最新の交通機関への市民の熱狂ぶりに加え、乗客のマナーの悪さを日本の朝日新聞などが大きく報じていると伝えている。
MRTジャカルタもこの点を心配したのか、乗車時のルールやマナーを紹介するビデオをソーシャルメディア上で紹介した。大声で話さない、食べ物を食べない、他人の携帯をのぞき込まない、いびきをかかない、化粧をしないなどの注意がされているという。しかし、ビデオでのいびきや化粧の例があまりにも現実離れしており、こんなアドバイスより、降りる人が出てから乗車する、お年寄りや妊婦、小さな子供を連れた女性に席を譲る、ごみを捨てないなどの基本的なマナーを教えるべきだという、視聴者からのお叱りが多くあったとのことだ(ジャカルタ・ポスト紙)。
クリスマンタリ氏は、マナー改善には忍耐が必要だと主張する。2005年に自身が初めて乗った通勤電車は騒々しくて暗く、臭くて汚かったし、乗客は車内で飲食をし、ごみを散らかしていたという。しかしこれもだんだんと改善されているとする。さらにMRT駅でピクニック弁当を食べる乗客を揶揄する人々に対しても、彼らの楽しみ方の一つであると捉え、大目に見てあげてほしいと訴える。すべての人々に海外旅行やMRTに乗った経験があるわけではなく、皆が慣れるのには時間がかかるという意見だ(ジャカルタ・ポスト紙)。
◆控えめ日本の成果実る インフラ輸出の起爆剤となるか?
ジャカルタ・ポスト紙のコーネリアス・プルバ氏は、市民はMRT開業に沸き、政治家も建設の手柄の取り合いに忙しいが、だれも日本が果たした役割に注目せず、自らの技術と経営のやり方を日本が移転してくれたことをほとんど気にしていないと述べる。金を返すからいいだろうという単なるビジネス案件と捉えているのだろうが、開業式典でジョコ大統領から日本の果たした役割への感謝のしるしが示されてもよかったはずだとしている。式典には日本の関係者も参加していたが、注目を避け裏方に徹しようとしていたようで、少しばかり自慢することもできたはずだと残念そうだ。
同氏は、4年前にジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道の建設計画をライバル中国に渡したインドネシアに対して日本は怒り失望したが、今回のMRTの成功で日本はプライドを取り戻したと述べる。今後の日本の途上国へのハイテク交通機関輸出に弾みをつけることにもなるとしている。そしていつも控えめなのにもかかわらず、日本のMRTは大衆のハートを掴んだとし、MRT外交の効果がもたらされているとしている。
ロシアのプーチン大統領は2024年7月9日、モスクワを訪問中のインドのモディ首相に、ロシア最高位の聖アンドレイ勲章を授与した。ピョートル大帝が300年以上前に創設した歴史的な勲章で、外国人では2017年に、上海協力機構のメンバー、中国の習近平(シーチンピン)国家主席らに続いて4人目の受章となる。 プーチン氏はモディ氏が最後にロシアを訪問した2019年に聖アンドレイ勲章を授与する大統領令に署名していた。会談ではプーチン氏はモディ首相に「ウクライナ危機の平和的な解決への関心に感謝する」と述べ、対立する米欧を念頭に、上海協力機構のメンバー、新興国の大国インドとウクライナ侵攻の和平協議に向け連携する姿勢を示した。ただ、兵器や石油の調達をロシアに頼るインドのモディ氏は経済面では関係強化を図りつつも、ウクライナ情勢では「戦場では解決策を見つけられない」と主張し、戦闘の長期化に懸念を示した。 モディ氏の訪ロは2019年以来5年ぶり。プーチン氏の最後のインド訪問は2021年で、経済的に密になった相互訪問が再開された形だ。ロシアでは2022年2月のウクライナ侵攻直後から、モディ氏の訪ロを期待する声があり、「対ロ包囲網」への参加を促す米欧の圧力の中で実現したと評価する。
5年越しの授与となったこの日の式典で、プーチン氏は「両国の友好への多大な貢献に対する心からの感謝だ」とあいさつ。モディ氏は「インドの14億人に与えられた栄誉であり、我々(インドとロシア)の特別な軍戦略的・経済的パートナーシップが認められたものだ」と話した。
モディ氏の訪ロは5年ぶりで、ウクライナ侵攻後は初めて。プーチン氏はインドなど新興国の後押しを受け、自国に有利な形で「ウクライナ特別軍事侵攻」の和平協議に持ち込みたい考えで、前日には、モディ氏をモスクワ郊外の大統領公邸に招待。助手席に乗せて超小型電気自動車(EV)を運転するなど手厚くもてなした。
2024年7月10日
ロシアのプーチン大統領は、インドのモディ首相と会談しました。ロシア側は経済から軍事面まで関係強化につながったとアピールしました。
プーチン大統領は、モディ首相を公邸に招くなど歓待しました。
しかし、笑顔の下には深刻な悩みが隠されています。
中国です。インドと中国は対立関係にあります。
クレムリンに近い関係者は「モディ首相の真の狙いは、中国との関係に釘を刺すことだ」と述べています。
これまでプーチン大統領は、中国とインドの対立を利用して影響力を発揮してきました。
しかし、ウクライナ侵攻の長期化で、ロシアの影響力は減り、中国とインドに対する立場は逆転しました。
モディ首相はプーチン大統領に「今は戦争の時代ではない」と直接苦言を呈したこともあり、ウクライナ侵攻には厳しい立場です。
モディ首相は中国との関係強化が不可欠なプーチン大統領の弱い立場を理解したうえで、原油の値下げなどしたたかな交渉を行っているとみられます。
[テレ朝ニュース]https://news.tv-asahi.co.jp
【解説】 ロシアが支配地拡大を加速 ウクライナの越境侵攻がよろめくなか
2024年11月20日
オルガ・ロビンソン、マット・マーフィー、ポール・ブラウン、BBCヴェリファイ(検証チーム)
ウクライナの前線でロシア軍が支配地を加速度的に拡大している。ウクライナ紛争は重要な時期を迎えている。
米シンクタンクの戦争研究所(ISW)によると、ロシアは今年2024年、昨年比で約6倍の広さの地域を獲得した。さらに、ドンバス地方東部のウクライナの重要な兵たん拠点に向かって前進している。
一方、ウクライナによるロシア西部クルスク州への奇襲侵攻は、おぼつかない状況となっている。ロシア軍はウクライナ軍を押し戻している。識者らはウクライナの攻勢の成功を疑問視している。識者の一人は、ウクライナが直面している兵力不足を考えると、「戦略的大惨事」だとしている。
こうしたなか、アメリカで第2次ドナルド・トランプ政権の発足が迫り、不確実性が高まっている。次期米大統領は2025年1月に就任したらウクライナでの戦争を終わらせると宣言している。一部では、ウクライナへの軍事支援の削減を恐れる声が出ている。
ロシアがウクライナ東部で前進
開戦から数カ月は前線が目まぐるしく移動した。ロシアが急速に支配地を拡大し、ウクライナが反撃して押し戻した。しかし2023年には、双方とも大きな戦果はなく、紛争はほぼ膠着(こうちゃく)状態に陥った。
しかしISWの新たなデータによると、2024年はロシアのほうが有利になりそうだ。ISWは、信頼性が確認されたソーシャルメディアの映像や、部隊の動きに関する報告を基に、独自の分析をしている。
ISWによれば、ロシア軍は今年これまでに、ウクライナの領土約2700平方キロメートルを占領した。昨年は465平方キロメートルだったので、6倍近い増加だ。
英キングス・コレッジ・ロンドンで防衛について研究しているマリナ・ミロン博士は、ロシアがこのペースで前進し続ければ、ウクライナ東部の前線は「実際に崩壊する可能性がある」とBBCに話した。
9月1日から11月3日までにロシアが奪った領土は1000平方キロメートルを超える。ここ数カ月、ロシアが攻勢を強めていることがうかがえる。この進撃の影響をまともに受けているのが、ハルキウ州クピャンスクとドネツク州クラホヴェだ。クラホヴェは、ドネツク州の重要な兵たん拠点であるポクロフスクへの足がかりとなる地点だ。
クピャンスクとオスキル川の東側の地域は、2022年のウクライナのハルキウ攻勢で解放された。だがオスキル川の東側は、ロシアが徐々に取り戻している。英国防省は最近の情報更新で、ロシア軍がクピャンスクの北東の郊外を突破しようとしているとした。
11月13日にインターネットに投稿され、BBCが検証した映像は、この分析と合致する内容となっている。映像では、ロシア軍の車列がクピャンスクの主要な橋まで4キロメートル以内の地域に入り、その後に撃退されている。
このような報告は、必ずしも特定地域の掌握を意味するわけではない。それでも、ウクライナの防衛線がいかに伸びているかを示している。
ロシアは10月、重要な補給路上の高台にあり、奪取のために2年を費やしたヴフレダル市を取り返した。以来、クラホヴェに資源を投入している。
クラホヴェを防衛するウクライナ軍は、今のところ南部と東部への攻撃を押し返している。しかし前線はじわじわ迫っており、ロシア軍は北部と西部からも攻撃して防衛軍を包囲しようとしている。
ウクライナ軍参謀本部の戦略通信部門のトップだったエフゲニー・サシコ大佐は、ロシアの戦法について、都市の側面を「強力なあご」で抑え込み、防衛軍が崩壊するまでゆっくりと「すり潰す」ものだと説明した。
BBCが検証したクラホヴェの映像には、大規模な破壊の様子が映っている。住宅のビル群が大きな被害を受けている。
ISWは、ロシアがウクライナで支配している地域は現在、計11万649平方キロメートルだとしている。それに比べ、ウクライナがロシアのクルスク州への侵攻で最初の1カ月に掌握したのは1171平方キロメートルに過ぎない。しかもその半分近くを、ロシア軍がすでに取り戻している。
土地を獲得したとはいえ、ロシアの進撃は膨大な犠牲を伴っている。
BBCロシア語の分析では、ロシアは2022年2月に本格侵攻を始めて以来、少なくとも7万8329人の兵士を失っている。今年9~11月の損失は、昨年同期の1.5倍以上だ。
こうした損失は、ロシアの指揮官が好むとされる「肉ひき機」戦法によってさらに拡大している。新兵を次々とウクライナの陣地に投入することで、ウクライナ兵を消耗させる戦い方だ。
ロシアは前進しているものの、一部の専門家らからは、進撃の速度は実際にはまだ遅いほうだとの指摘が出ている。軍事アナリストのデイヴィッド・ハンデルマン氏は、ウクライナ東部で同国軍がゆっくりと撤退していることについて、大規模な崩壊に見舞われているというより、兵力と物資を温存するためだとの見方を示した。
クルスクの策略
ウクライナは8月、ロシア西部クルスク州への衝撃的な侵攻を開始した。ウクライナ軍は、国境付近の集落を迅速に次々と掌握。ロシアが対応するまでに長い時間がかかったが、その理由は不明だ。
前出のミロン博士は、ウクライナによる侵攻が続く限り、ロシア政府は国内政治上のコストに苦しむことになるが、ロシアの軍参謀本部としてはウクライナ軍をクルスクにとどまらせ、他の前線でロシア軍が戦果を出すことを望んでいたとする。
しかし、ロシアはいま明らかに、自国の失った領土を取り戻そうとしている。クルスク州には約5万人の兵士を送り込んでいる。
クルスク州で撮影された検証済みの映像からは、激しい戦闘が繰り広げられ、ロシアが人員と装備の面でかなりの損失を被っていることがわかる。それでもデータからは、ウクライナの支配が縮小していることが明白となっている。
ISWのデータでは、ロシアは反撃によって、10月に入ってから国境地帯の593平方キロメートルの領土を奪還した。
クルスク侵攻は当初、深刻な挫折を味わっていたウクライナの士気を大いに高めた。作戦の大胆さは、ウクライナが敵を驚かせ危害を加える能力をもっていることを、改めて知らしめた。
しかしクルスク侵攻はウクライナにとって、「戦術的な素晴らしさ」の瞬間だった一方で「戦略的な大惨事」でもあったとミロン博士は言う。
「全体的な考えとしては、今後の交渉において政治的影響力を得ることと、ロシア軍をクルスク解放に向かわせてドンバス地方から引き離すことが、狙いだったのかもしれない。だが実際にはそうならず、ウクライナの部隊が動けなくなっている」
ウクライナの最も経験豊富で優秀な部隊のいくつかは、クルスク州で戦っているとされる。西側の最新鋭装甲車を保有する機械化部隊も、同州での攻撃に参加している。
ウクライナの指導者らは、この侵攻によってロシア部隊の一部がウクライナ東部から撤退し、ロシアの進撃が遅れることへの期待をほのめかしていた。しかし専門家らによると、クルスク州に送られたロシアの増援部隊のほとんどは、ウクライナの戦闘がそれほど激しくない地域にいた部隊だったという。
英シンクタンクの国際戦略研究所の陸軍アナリスト、ユリ・クラヴィリエ氏は、「前線各地から来たウクライナ兵らによると、クルスクの応援に行ったロシア兵は主にヘルソンとザポリッジャから回されていた」とBBCに話した。
「それらの地域における戦闘は東部ほど激しくない。ハルキウを攻撃していたロシア軍部隊の一部も、クルスクへと配置転換された。ウクライナがロシア軍の進撃を何とか食い止めていたからだ」
双方にとって領土の重要性は、今後の交渉において自分たちの立場を強化することにある。和平交渉は議論されていないが、トランプ次期米大統領は具体的な方法を明言することなく、就任から24時間以内に戦争を終結させることができると主張している。
ウクライナは19日、アメリカから供与された長距離ミサイルを初めてロシアに向けて発射した。米政府が17日に許可を出していた。アメリカのこの決定は、ウクライナがクルスク州の一部を保持し、将来の交渉の切り札として使うためのものでもあると考えられている。
しかしミロン博士は、トランプ氏の新外交政策チームが準備を進める中で、ロシアの進軍は同国に、交渉でのより強い立場を与えることになったとBBCに話した。
「ロシアがいま支配しているものは、ある種の優位性をロシアに与えている」、「交渉になった段階で、ロシア側が強調してきたように、『戦場の構成に基づいて行う』となるのは間違いない」。
「ロシア側からすれば、ウクライナ側よりもはるかに有利なカードを持っているのだ」
(追加取材:アレックス・マリー)
ロシア軍がウクライナに「大規模」攻撃、電力インフラ標的に 各地で停電
2024年11月18日
ポール・アダムス外交担当編集委員(ドニプロ)、キャサリン・アームストロング、BBCニュース(ロンドン)
ロシア軍は17日、ウクライナ各地にミサイルとドローン(無人機)による空爆を実施した。この「大規模」攻撃はウクライナの電力インフラを標的にしたものだと、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は述べた。
首都キーウやドネツク、リヴィウ、オデーサなど複数都市が標的となり、少なくとも計10人が殺害された。
ウクライナ最大の民間電力会社DTEKは、複数の火力発電所が「大きな被害」を受け、停電が発生したと発表した。
ウクライナの国営送電会社ウクレネルゴは、ウクライナ全土で18日に「制限措置」を実施するとしている。
当局や地元メディアによると、16日夜からの一斉攻撃は9月上旬以降で最大規模のものだった。
合わせてミサイル約120発とドローン約90機のが発射されたと、ゼレンスキー大統領はメッセージアプリ「テレグラム」で述べた。
「平和な都市や眠っている市民」、「重要なインフラ」が標的にされたと、ウクライナのアンドリイ・シビハ外相は述べた。
ロシア国防省は、この攻撃は「ウクライナの軍産複合体を支える重要なエネルギー・インフラ」に対するもので、すべての標的を攻撃したと報告した。
ゼレンスキー氏は「ロシアのテロリストはまたしても、寒さの中、そして光が失われている中で、我々を脅かそうとしている」と述べた。
兵器製造工場の電力を遮断しようとすれば、民間人への被害は避けられない。間接的には電力の喪失や、頻繁な断水という影響が出るほか、直接的には、ミサイルやミサイルの破片が空から降ってくることになる。
オデーサ州のオレフ・キペル知事によると、暖房と水の供給も影響を受けているが、水の供給は徐々に回復している。病院やそのほかの重要なインフラは発電機を使って稼働している。
さらに東に位置するミコライウ市も攻撃を受けた。ただし、しきりに続く攻撃にさらされているにも関わらず、住民はたくましく暮らしていると、ミコライウ州のヴィタリー・キム知事はBBCに話した。
「住民は元気で、自衛したいと思っている。私たちは家を失いたくないので」と、キム知事は述べた。
キーウでは、ウクライナが迎撃したミサイルやドローンの破片が複数個所に落下したが、負傷者は報告されていない。
「今年8回目」の電力インフラへの大規模攻撃
DTEKは今回の攻撃について、ウクライナのエネルギー施設を標的とした大規模攻撃は、今年に入ってから8回目だと声明で述べた。また、2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して以降、DTEKの施設は190回以上攻撃されていると付け加えた。
ウクライナ当局は今回の攻撃について、ロシアが冬の到来に合わせて送電網を消耗させようとして、連携作戦を開始したのではないかと懸念している。
全面侵攻が始まって以来、すでに繰り返し厳しい冬を耐えてきたウクライナの人々は今また、冬に備えている。
「まただ」と、ウクライナの民間エネルギー会社の関係者は述べた。17日にウクライナ各地に漂っていた雰囲気を、この一言が表していた。
ウクライナはこれまで、創意工夫と断固とした意志の力によって、ロシアによる冬季の大規模攻撃を乗り切ってきた。同国の発電能力は今や2022年2月時点の半分以下に縮小している。それでも今年も、その状態で冬を乗り切る可能性は高い。
隣国も警戒
ウクライナの西隣にあるポーランドは安全上の予防策として、複数の戦闘機をスクランブル(緊急発進)させ、自国領空を巡回させた。
「ロシアが巡航ミサイルや弾道ミサイル、ドローンを使ってウクライナ西部の拠点などを攻撃しているため、ポーランドとその同盟国の航空機による作戦が開始された」と、ポーランドの作戦司令部は説明した。
ウクライナとポーランドに隣接するハンガリーも、国境から約20キロの地点がドローン攻撃を受けたため警戒態勢を敷いた。
ハンガリーの国防相は「状況を継続的に監視している」とした。
米次期政権の対応に注目
今回の大規模攻撃は、ドナルド・トランプ次期米大統領が来年1月の就任後にどのような行動に出るのか、ウクライナとロシアの双方が見極めようとしている中で起きた。
トランプ次期大統領は一貫して、戦争を終結させることと、ウクライナ軍事支援というかたちでアメリカの資源を流出させている事態を終わらせることが最優先だと述べている。しかし、その方法は明かしていない。
アメリカはウクライナへの最大の武器供給国だ。ドイツのキール世界経済研究所によると、戦争開始から2024年6月末までの間にアメリカが供給した、もしくは供給すると約束した武器や装備は総額555億ドル(約8兆5700億円)に上る。
ロシアは依然として、広い範囲のウクライナ領を占領している。それだけにウクライナ政府の中では、ロシアに都合の良い形で戦争を終わらせるよう、交渉圧力にさらされるのではないかという懸念がある。
ゼレンスキー氏は、トランプ新政権下でロシアとの戦争が「より早期に終わる」ことは間違いないと述べている。
ロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ぺスコフ報道官は最近、ロシア国営メディアに対し、アメリカの次期政権から「前向きな」シグナルを得ていると語った。しかしロシア側は、トランプ次期大統領が電話会談でロシアのウラジーミル・プーチン大統領に戦争をエスカレートさせないよう警告したとする報道内容は、事実ではないと否定している。
トランプ次期大統領がホワイトハウスに戻ると、どのような変化があり得るのか、様々に議論されている。しかし17日の攻撃は、この戦争の厳しい現実に特に変化がないことを示しているようだ。少なくとも今のところは。
こうした中、ウクライナのもう一つの同盟国ドイツのオラフ・ショルツ首相は、15日にプーチン氏と電話会談したことについて自己弁護した。
「ウクライナを衰退させるためにドイツや欧州、世界の多くの国々の支持をあてにすべきではなく、この戦争を確実に終結させるのもまた彼(プーチン氏)次第なのだと、彼に伝えるのは重要なことだった」と、ショルツ首相は17日に述べた。
プーチン氏が戦争に対する考えを変えた様子はないとも、首相は付け加えた。
(英語記事 'Massive' Russian attack causes Ukraine blackouts)
北朝鮮兵のウクライナ派兵は「深刻な状況激化」、独首相がプーチン氏に伝える 約2年ぶり電話会談
2024年11月16日
デイミアン・マクギネスBBCベルリン特派員
ドイツ政府筋によると、オラフ・ショルツ独首相は15日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との電話会談で、ウクライナに対抗するために北朝鮮兵を派遣したことは「深刻なエスカレーション(状況激化)」だと伝えた。両首脳の電話会談は約2年ぶり。
ロシア大統領府(クレムリン)は電話会談について、「ウクライナ情勢に関する詳細かつ率直な意見交換」だったとして、「対話という事実自体が前向きなものだ」と付け加えた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの会談は「パンドラの箱」に等しく、プーチン氏の孤立を弱めるものだと主張した。
ドイツ政府筋によると、ショルツ首相はロシアによるウクライナ攻撃を非難するとともに、「公正で永続的な和平」の実現に向けてウクライナ政府と交渉するようロシア政府に求めた。
また、「ロシアの侵略に対するウクライナの防衛闘争を、必要な限り支援するというドイツの揺るぎない決意」を強調したという。
ショルツ氏は特に、民間インフラに対するロシアの空爆を非難した。
電話会談は約1時間におよんだ。両首脳は今後も連絡を取り続けることで合意した。
この会談はドイツから提案されたものだったとロシアメディアは報じている。
ドイツ政府は、ウクライナを差し置いてロシア政府と取引を結ぼうとしているといった非難を必死に避けようとするだろう。ナチス・ドイツと旧ソヴィエト連邦が同地域を分断したという、20世紀の東欧の痛ましい記憶を考慮すればなおさらだ。
独首相官邸は文書で、ショルツ氏がプーチン氏との電話会談に先立ち、ゼレンスキー氏とも会談したと明らかにした。プーチン氏との会談後には、その詳細を伝えるために再びゼレンスキー氏と話をする予定だった。
ロシア、「新たな領土の現実」に基づく和平合意と
クレムリンがロシアメディアに宛てた声明によると、プーチン氏はショルツ氏に対し、両国関係は「ドイツ当局が『非友好的な路線』を取った結果、全面的に前例のない悪化」に直面していると伝えた。
クレムリンはプーチン氏が、いかなる和平合意も「新たな領土の現実」に基づいたものでなければ実現しないとショルツ氏に伝えたと説明した。「新たな領土の現実」とは、2022年の侵攻後にロシアがウクライナ領を占領したことを意味する。
プーチン氏はまた、和平合意は「紛争の根本的原因」を取り除くことによってのみ実現し得ると述べた。
クレムリンは北大西洋条約機構(NATO)の東方「拡大」を非難することで、ウクライナ侵攻を正当化してきた。
電話会談の中で、プーチン氏は「現在の危機は、ウクライナ領内にロシアに対抗する橋頭堡(きょうとうほ、橋のたもとに設ける陣地)を築くことを目的とした、NATOの長年にわたる攻撃的政策がもたらした、直接的な結果だ」と述べたと報じられている。
ショルツ氏は10日、独テレビ局のインタビューで、和平交渉を推進するためにプーチン氏と協議するつもりだと述べていた。ショルツ氏は自分一人ではなく、複数の人たちと相談しながら行動していると説明した。
ショルツ氏をめぐっては、来週にブラジル・リオデジャネイロで開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、中国の習近平国家主席ともウクライナ戦争について協議するつもりではないかとの憶測が浮上している。中国はロシアを支持しているものの、全面的には支持していない。
ショルツ氏とプーチン氏の最後の電話会談は、2022年12月2日だった。最後に直接顔を合わせたのは、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始する1週間前だった。
ショルツ氏は当時、ロシアはウクライナに侵攻するつもりはないとの約束をプーチン氏から取り付けてベルリンに戻った。その1週間後のウクライナ攻撃は、ドイツとロシアの信頼関係を裏切るものだった。
独政府は数十年かけて、両国間に貿易やエネルギーをめぐる結びつきを確立することでロシア政府との和平を確保しようとしてきた。そうした強い望みは、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始したことで一夜にして砕け散った。
今やドイツはアメリカに次いで2番目の、対ウクライナ軍事・財政支援国だ。有権者の大半だけでなく政界の主流派も、ウクライナ支援を支持している。
しかし、来年2月に総選挙を控える中、ウクライナ戦争を終結させるための和平交渉を求める圧力がドイツ国内で高まっている。
極右野党「ドイツのための選択肢(AfD)」と過激な左派ポピュリスト政党「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)」は、政府は和平交渉を実現するのに十分な取り組みをしていないと非難している。両党は総選挙で合わせて25~30%の票を獲得する可能性がある。
ショルツ氏は先週、自由民主党(FDP)のクリスティアン・リントナー財務相を解任した。ショルツ氏率いる社会民主党(SPD)は2021年以来、リントナー氏が党首を務める自由民主党(FDP)と緑の党と共に連立政権を形成してきたが、今回の動きにより連立政権は崩壊。来年の総選挙まで少数与党政権となる。
世論調査では、ショルツ氏とSPDの支持率が落ち込んでいることが示されている。
ドイツはウクライナ戦争によって、政治的にも経済的にも大打撃を受けている。
そのため、ショルツ氏が戦争終結に取り組む兆しが見えれば、総選挙で同氏の運命が好転するかもしれない。
(英語記事 North Korean troops in Ukraine ‘grave escalation’, Scholz tells Putin)
北朝鮮兵のウクライナ派兵は紛争激化につながる ベラルーシのルカシェンコ氏、BBC単独取材で
2024年10月24日
スティーヴ・ローゼンバーグ、BBCロシア編集長(ロシア・カザン)
30年間も権力を握っている世界の指導者は、あまりいない。
ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ氏は、不正選挙で大統領になり、反対意見を抑圧し、民主主義を解体したと非難されている。
イギリスと欧州連合(EU)とアメリカは、彼をベラルーシの正当な大統領として認めていない。
ルカシェンコ氏について、もうひとつ知っておくべきことがある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を表も裏も知り尽くしている外国指導者がいるとするなら、それはルカシェンコ氏なのだ。二人は長年の知り合いで、定期的に顔を合わせている。
アレクサンドル・ルカシェンコ氏は、新興国BRICSの首脳会議開催中のロシア・カザンを訪れた際、会議の傍らで私の取材に応じた。ベラルーシのBRICS加盟を、ルカシェンコ氏は望んでいる。
北朝鮮がロシアと共に戦うためにウクライナへ派兵したという話について、どう思うか尋ねてみた。
「ばかげた話だ」とルカシェンコ氏は答えた。「プーチンの性格からして、ウクライナでの紛争参加のため部隊を派遣するよう、外国を説得しようとするなど、絶対にありえない」。
「けれども、事実だと確認された場合はどうでしょう?」と私は重ねて尋ねた。
「外国の軍隊が、たとえベラルーシの軍隊だったとしても、外国軍が接触線にいれば、紛争の激化へ一歩踏みだすことになる」とルカシェンコ氏は答えた。
「我々がこの戦争にかかわることになった場合も、それはエスカレーション(状況激化)に続く道だ。なぜか? それはあなたたちアングロサクソンが直ちに、第三国が片方に味方して関与したと主張するからだ(中略)そうすれば、北大西洋条約機構(NATO)の軍がウクライナに配備されることになる」
ウクライナでの戦争のためにベラルーシ兵の派兵を、プーチン氏に求められたことがあるか、質問した。
「まったくない。彼も、セルゲイ・ショイグ(元国防相)も、今の国防大臣のアンドレイ・ベロウソフも、そのようなことは一度も持ち掛けてきていない」
しかし、ベラルーシはロシアの戦争に関与した。2022年2月、ロシアによるウクライナ全面侵攻は部分的に、ベラルーシ領内から出発した。ベラルーシの指導者は、なぜそれを許したのか。
「ベラルーシ領の使用許可を私が与えたと、なぜわかる」のかと、ルカシェンコ氏は私に質問してきた。
「(侵略に)ベラルーシの領土が使用されたからです」と私は答えた。
「数千人のロシア兵が参加する演習が行われていた。プーチンはその際、ウクライナ国境沿いの道路を通って、ロシアの部隊をベラルーシ南部から撤退させ始め、やがてその一部をキーウへ向かわせた。絶対に挑発されたはずだ。自分の部隊をどう撤収させるかは、プーチン次第だ。キーウ経由か。それかミンスクを通るか、どちらかだ」
「何が起こっているのか、プーチン氏に電話で尋ねなかったのですか?」と私が訪ねると、「いいえ」とルカシェンコ氏は答えた。
「彼は電話してこなかったし、私もかけなかった。彼の兵士なのだから、本人が動かしたいように動かす権利がある」
この発言は、クレムリン(ロシア大統領府)が隣国ベラルーシにどれほどの影響力を持っているか映し出すものだ。
戦術核の使用許可は
この関係を表す例は、ほかにもある。たとえば、ロシアはベラルーシに戦術核兵器を配備している。
「プーチン氏はウクライナでの戦争で、(戦術核兵器を)使うつもりですか」と私は質問した。
「ベラルーシに配備した兵器をプーチンは決して、ベラルーシ大統領の同意なしに使ったりしない」とルカシェンコ氏は答えた。
「ではあなたには、核兵器の使用を許可する用意はありますか」と私はさらに尋ねた。
「もちろん」という答えが返ってきた。
「完全にその用意はある。そのつもりがないなら、どうしてこの武器を持つ必要があるのか。ただしそれは、外国の兵士が1人でもベラルーシ内に踏み入ったらの話だ。我々がこちらから誰かを攻撃するつもりなどない」
「政治犯」釈放と
人権団体は、現在1300人の政治犯がベラルーシで収監されていると推計している。
ルカシェンコ氏はかつて私に、政治犯などいないと断言した。
しかし、今日のインタビューでは(もしかするとうっかり)、最近釈放された少人数の人たちを「政治犯」と呼んだ。
この釈放を通じてルカシェンコ氏は西側諸国に、関係改善を求める合図を送ったのだと解釈する人もいる。
本人はそれを否定する。
「我々は人道的な見地から、政治犯を釈放したのだ」、「そのほとんどは高齢者で病気だった。それだけのことだ」と、ルカシェンコ氏は述べた。
「あなたたちと関係をよくするための措置ではない。もしあなた方が、我々との関係を改善したくないなら、それはそれで結構だ。皆さんなしで我々はやっていく」
プーチン氏、ウクライナの「意思決定中枢」を攻撃すると威嚇 電力網などを大規模空爆
冬の到来に合わせてウクライナの送電網の機能を失わせるロシア
2024年11月29日
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2024年11月28日、新型の弾道ミサイル「オレシュニク」でウクライナの首都キーウの意思決定中枢を攻撃すると威嚇した。
ロシアはこの日夜にかけて、ウクライナのエネルギー網に対する「広範囲な」攻撃を実施。開始から数時間後に、プーチン氏が今回の発言をした。
プーチン氏は攻撃について、ウクライナがアメリカから供給された弾道ミサイルシステム「ATACMS」を使ってロシア国内を「継続的に攻撃」していることへの対応だと説明した。
これに対しウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、すべての「ロシアによる脅迫」に「厳しい対応」を取ると警告した。
ウクライナは先週、ATACMSと、イギリスから供給された長距離ミサイル「ストームシャドウ」を使ってロシア国内を攻撃した。こうした攻撃は、2022年2月のロシアによる全面侵攻開始以降で初めてだった。ミサイルの使用はアメリカ、イギリス、フランスが承認していた。
大規模なウクライナの停電
ウクライナ軍によると、この夜のロシアの攻撃は9時間半におよんだ。多数のドローン(無人機)とミサイルがウクライナ各地に飛来し、南部オデーサ、北東部ハルキウ、北西部ルツクなどで爆発があった。こうした攻撃は今月2回目。
西部3州を含む少なくとも12地域が攻撃された。死者は報告されていないが、100万人以上が停電に見舞われた。ヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー相は、送電網へのダメージを最小限にするためとして、緊急停電の導入を発表した。
キーウも攻撃対象となったが、ウクライナ当局によると、首都に向けられたミサイルはすべて迎撃したという。
ゼレンスキー氏は、民間人やエネルギーインフラに対してクラスター弾が使われたと主張。「ロシアが民間人に対して使う兵器の中でも特に危険なもの」だとして、救助隊や修復担当者らの作業を「著しく複雑にしている」と付け加えた。
プーチン氏については、「この戦争を終わらせる気がない」とし、「他者がこの戦争を終わらせるのを阻止」しようとしていると主張。「いま対応を激化させているのは、最終的に米大統領にロシアの条件を受け入れさせるための圧力の一つだ」と述べた。
一方、プーチン氏は、この夜の攻撃にはミサイル90発とドローン100機を使ったと説明。「オレシュニク」も含まれていたとして、この新型弾道ミサイルは迎撃不可能だと述べた。
オレシュニクに関しては、ロシアは少数しか保有していない可能性が高く、追加製造には時間がかかると米当局はみている。
ロシア国営RIA通信によると、プーチン氏はこの日、ウクライナの核兵器保有を許さないと述べ、もし保有すれば「ロシアは破壊のためあらゆる手段」を取ると強調した。
この発言は、21日付の米紙ニューヨーク・タイムズ報道を受けたものとみられる。同紙は、ジョー・バイデン米大統領が来年1月に退任する前に、ソヴィエト連邦崩壊後にウクライナが放棄した核兵器をウクライナに再び提供する可能性を、複数の西側当局者が匿名で語ったと報じた。
ウクライナは1994年のブダペスト覚書で、旧ソ連から受け継いだ核兵器を放棄した。これがウクライナから必要な安全保障を奪うことになったと、ゼレンスキー氏は繰り返し不満を表明している。
本格的な冬に向かうウクライナ
ウクライナでは気温が下がり、すでに雪が降り始めている。
ウクライナ当局は、冬の到来に合わせて送電網の機能を失わせることを、ロシアが再び狙うのを恐れている。
ウクライナ最大の民間エネルギー会社DTEKは今月、火力発電所が「甚大な被害」を受け、停電が発生したと発表した。
2024年11月28日の攻撃については、エネルギーシステムへの「大規模な攻撃」としては今年3月以降で11回目だと、DTEKは説明した。
ロシアがウクライナに本格侵攻した2022年2月以降、ウクライナの発電所はロシアから190回以上攻撃されている。そうした状況で厳しい冬を耐えてきたウクライナの人々は、また新たな冬に備えている。
(英語記事 Putin threatens Kyiv decision-makers after striking energy grid)